情報をプールする方法の巧拙
読んだり考えたりして蓄積された知識は、将来の使用のために整理しておかなければならない。井戸端会議の達者な人は、情報量には乏しくないけれども、その整理・管理が自我流に頭の中に入っているだけなので、せっかくの情報が噂のレベルより先に進むことができない。学者と町のおばさんとのちがいは、この点にも大きくあらわれるものである。つまり、井戸端会議の議員さんたちは情報を乱雑にとり入れて、その取捨ができないで、情報をプールする方法がきわめてまずいわけである。
「僕はおもうに」と彼は説明した。「人間の頭脳というものは、もともと小さな空っぽの屋根裏部屋のようなもので、そこに自分の勝手にえらんだ家具を入れとくべきなんだ。ところが愚かなものは、手あたりしだいにこれへいろんながらくたまでしまいこむものだから、役にたつ肝心な知識はみんなはみだしてしまうか、はみださないまでもほかのものとごた混ぜになって、いざというときにちょっととりだしにくくなってしまう。
そこへゆくと熟練した職人は、自分の頭脳部屋へしまいこむ品物については、非常に注意をはらう、仕事をするには役だつもののほかは、決して手を出さず、といってその種類は非常に多いのだが、これらを彼はきわめて順序よく、きちんと整理しておく。