外部足場
scaffolding
『啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために』で、ジョセフ・ヒースが強調した概念。
by Gemini
ジョゼフ・ヒースが "scaffolding" という言葉を「外部足場」の意味で用いたのは、彼独自の表現というわけではありません。
この言葉は、心理学や認知科学の分野で、人の学習や問題解決を助ける外部的な構造や支援を指す言葉として、以前から用いられていました。
例えば、教育心理学者のデイビッド・ウッド、ジェローム・ブルーナー、ゲイル・ロスは、1976年の論文で、子供の学習を支援する大人の役割を「scaffolding」と表現しました。
また、認知科学者のエドウィン・ハッチンスは、著書 "Cognition in the Wild"(1995年)の中で、人間の認知が環境や道具に依存していることを論じる際に、「scaffolding」という概念を用いました。
ヒースは、これらの研究を参照しつつ、「scaffolding」という言葉を、人間の思考を助ける外部的な要素を指す言葉として用いたと考えられます。
ただし、ヒースの議論の特徴は、単に「scaffolding」という概念を認知科学の文脈で捉えるのではなく、それを社会や政治の領域にまで拡張した点にあります。
彼は、『啓蒙思想2.0』の中で、社会的な制度や文化的な規範も、人間の思考を支える「外部足場」として機能していることを論じました。
このように、ヒースは、「scaffolding」という言葉を、認知科学の分野で用いられていた意味合いに加え、彼自身の考察に基づいて、より広い意味で用いたと言えるでしょう。