ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
ドイツの社会学者テンニースが19世紀に提唱した概念
ゲマインシャフト(共同体組織)
ゲゼルシャフト(機能体組織)
「ゲマインシャフト」「ゲゼルシャフト」はドイツの社会学者テンニースが提唱した概念である。これはベンチャー企業が創業期に会社をどう成長させるかを考える際に知っておくべき捉え方なので紹介する。堺屋太一は、ゲマインシャフトを共同体組織、ゲゼルシャフトを機能体組織と訳しているが、とてもフィット感があるので、本稿でもこの表現を使いたい。
ゲマインシャフト=共同体組織は、構成員一人ひとりのために存在する組織である。最小単位でとらえれば血縁組織があり、それ以外でも身近なところでは、町内会や自治会、PTA、教会・寺院等宗教団体、学校のクラブ活動、出身校のOB組織、ゴルフ会員組織や茶道教室などスポーツや文化のサークル等がある。こうした組織では構成員の満足感を高めることが重要なテーマとなる。ゲマインシャフトでは運営上の方針を決する際に誰かひとりがそれに対して強く不満感を募らせ反対をした場合、その方針を決することはできない。満場一致の決定が条件となる。決定に持ち込むためには反対者を説得するか、それでなければ脱退をしてもらうかの選択肢しかない。
一方ゲゼルシャフト=機能体組織は、組織自体に目的があり、その目的を実現させるために人材やその他の資源を集め、役割分担や指揮命令系統の整備を行っていく。従って組織利益のためには構成員の犠牲が生じる場合もある。そして目的が消滅すれば必然的に組織としては解散することとなる。代表的なゲゼルシャフトは営利法人つまり通常の企業である。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト① | 早稲田労務経営
ref.
『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト―純粋社会学の基本概念〈上〉 (岩波文庫)』
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト② | 早稲田労務経営
ゲゼルシャフトとゲマインシャフト | 在りたい未来を支援するITとは? シリーズ#1 | IBM ソリューション ブログ
1237夜 『コミュニティ』 ジグムント・バウマン − 松岡正剛の千夜千冊
20世紀初期、コミュニティはゲマインシャフト(共同社会)のことだと思われていた。それがしばらくするとゲゼルシャフト(利益社会)のもとに組みこまれた。フェルディナンド・テンニースが説明してみせたことだ。利益社会にとっては、コミュニティがその内部だけで「一つの理解」を共有してもらっては困る。利益社会というのは競争社会のことであるから、そこでは別々の理解が競いあい、市場のなかではそれらが交差していてもらいたい。そんなところへ一つの理解をもった特定集団が活動してもらっては困る。
1369夜 『貨幣の哲学』 ゲオルク・ジンメル − 松岡正剛の千夜千冊
一方、社会的集団といっても、その集団ごとにさまざまな価値観のちがいがある。生まれ故郷の村と会社という組織と参議院選挙に候補者を送りこむ政党では、何かが違う。そこでフェルディナンド・テンニース(テニエス)はそうした共同体の特色にも、最低でも、「自然な結びつきによるゲマインシャフト」(≒共同社会)と「選択によって組み立てられたゲゼルシャフト」(≒利益社会)があるというふうに見た。