『思考のエンジン』
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初版:1991年6月
フランス現代思想に馴染みが薄いと若干読みづらいかもしれないが、たいへん面白い本である。 書くマシンから考えるヴィークルへ。迷宮のような知識体系から解放され、自由大胆な思考を可能とするハイパーテキスト。人文科学におけるコンピュータ使用の実際を、同時ドキュメントのごとく具体的に著わし、人間とコンピュータ環境の可能性を鋭利に分析する。
目次
思考の道具としてのタイプライター
ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー
エクリチュールとライティング・エンジン
パレルゴンとエルゴン
論理的ディスコースのダイナミズム
コンピュータ上のソクラテス―「ソウトライン」を使う
情報を俯瞰する装置―アウトライン・プロセッサーを使う
プロセスとしてのテクスト
迷宮としてのデータベース
補遺の連鎖とハイパーテキスト―ハイパーメディア・ライブラリーとライティング
思考のエンジンとしてのハイパーテキスト
マニエリスムとアカデミズム
“さて、こうした意味でのよい文章は、丹念に読むとアウトラインが作れる。論理と伝達において優れているのだから当然である。だが、アウトラインを作ってもよい文章が書けるとは限らない。切れ切れの情報の集積になる場合が多い“
"つまり、どこかに形式論理が当てはまる瞬間があるという信念で思考を続ける態度が、論理的なディスコースを作り出すのだ"
加工されていないのである。どれだけ面白く美しい形で項目の構造が工夫できるかが、アイデア加工の妙味である
アウトラインをもとに文章を作成しているときに間違えてしまうのは、こうしたアウトラインをもとに文章が書けると錯覚することである。余程簡単なディスコースを使っていないかぎり、アウトラインは文章の論理の要約ではない。
このことを逆にみると、アウトラインを元に文章を書けるようにするためには、用いるディスコースを常に簡単なものに"節約"しておく必要がある、ということになる。
アウトラインの話は、タスクリストの話に転じられるし、引いては生き方の話につながる。
つまりポストモダニズムのディスコースとして脱構築を使い、形而上学的二項対立の偽りの構造を指摘すれば、自分はその構造から自由になると考えることが間違いないのだ。劣性にある項目に新たに価値付与しても二項対立の構造そのものは変化しないのである。
こうした学問では、知識と知識体系が同時に伝達される。体系は固定化しており、知識量によって学問の到達度が測れるという奇妙な現象も起こる。だが、本来は知識体系を問いかけることが大切であり、自分で体系を構築する能力こそが必要なのだ。そして、逆説的ではあるが、自分で体系を作るためには充実した知識が必要となる。