『コミケへの聖歌』
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ISBN:4152103930
第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作
二十一世紀半ばに文明は滅んだ。東京は赤い霧に包まれ、そこから戻って来た者はいない。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は、原始的な農耕と苛酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは廃屋を改造した〈部室〉に集まり、タンポポの〈お茶〉を優雅に楽しみながら、友情に、部活に、マンガにと、青春を謳歌する。彼女ら《イリス漫画同好会》の次なる目標は〈コミケ〉、それは旧時代に東京の海辺に存在したマンガの楽園だ。文明の放課後を描く、ポストアポカリプス部活SF。
「昨今じゃ、"安全な旅"なんてものは、どこにもありませんよ。出発する前からあれやこれや気に病んでいたら、どんな旅だってできません。
"王様"ってのは、人間の歴史の中でもなかなかの発明だったと思いますよ。人間ひとりひとりが自分の王様になれないうちは、誰かが王様の役をやるしかないんでしょうね。
人間は誰しも心に依り処を持っている。あの項垂れていた男が蒐めた映画のフィルムのように。私が山奥に隠し持っている書物のように。その依り処は各人にとっての文化に相当する物で、その文化無くしては、彼の生活は全く無意味になってしまうのだ。
文明とは人類の発明した物質的な所産の集積であり、人類の発展の礎石である。文化とは人類の創造した精神的な成果の総体にして、人類の存続の目的である。それらは相互に不可分にして不可欠の両輪であって、文明無き所に文化は生じ得ぬし、文化無くしては文明はその意図を見失わざるを得ない。