『アイデアのつくり方』の序文
(序文より)
この小さな本のなかで、ヤング氏は、
もっとも学術的で詳細な広告原論よりも
さらに貴重なことを私たちに教えてくれている。
個々のコミュニケーションの
骨や肉にあたるものだけではなく、
その魂ともいうべきアイデアを語っているからだ。
生化学者は、大した費用もかけずに
人間の肉体を組み合わせることができる。
しかし、人体に生命の火を
スパークさせることはできない。
ヤング氏がここに書いているのは、
創造のスパーク、アイデアなのだ。
アイデアこそが広告に精神と生命を吹きこむ。
広告制作者がその手腕を発揮する上で、
これより大切なものはない。
創造の過程における
心の営みを記述するときのヤング氏は、
私たちのもっとも偉大な思索家たちの
幾人かの人々の伝統に連列なる人物である。
バートランド・ラッセルや
アルバート・アインシュタインのような
科学の巨人が、
このテーマで
彼とほぼ同じ趣旨のことを
説いているということが、
ヤングの偉大さの何よりの証しだ。
知識はすぐれた創造的思考の基礎ではあるが、
十分でない。
知識は、よく消化されて、最終的に、
新鮮な組み合わせと関連性をもった姿となって
心に浮かび出てこなければ意味がない、
という点で彼らの意見は一致する。
アインシュタインはこれを直観と呼び、
直観だけが新しい洞察に到達する
唯一の道だと言っている。
手に入れたアイデアが
価値あるものかどうかは保証の限りではない。
このことを言ったのは
ヤング氏がはじめてだったのではないか。
アイデアの良し悪しは、
遺伝子までも含めてあなたのもつ
すべての資質と能力できまるものだ。
しかし、ヤングがこの本で
単純明快にまとめた手法に従って
アイデアづくりに取り組めば、
あなたは自分の能力と素質のすべてを
最大限に生かせることになるだろう。
この問題の核心に触れることができるのは
ヤング氏のおかげである。
長年にわたって広告活動に携った結果、
適確でドラマチックなアイデアの作成が
コミュニケーションを成功させる鍵だ
ということを、彼は体得したのである。
彼はそのことを鮮明に
私たちに理解させてくれるばかりでなく、
その目標に向かってゆく
道筋へも教示してくれている。