『ふつうの相談』
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ケアする人たちすべてに贈る。友人論と心理療法論を串刺しにする、「つながり」をめぐる根源的思索!
人が人を支えるとはどういうことか。心の回復はいかにして可能になるか。
この問いに答えるために、臨床心理学と医療人類学を駆使して、「ふつうの相談」を解き明かす。
精神分析からソーシャルワークまで、病院から学校まで、介護施設から子育て支援窓口まで、そして職場での立ち話から友人への打ち明け話まで。つまり、専門家から素人まで、あらゆるところに生い茂る「ふつうの相談」とは一体何か。
心のメカニズムを専門的に物語る学派知と、絶えずこれを相対化する世間知と現場知。これらの対話は、やがて球体の臨床学へとたどり着き、対人支援の一般理論を描き出す。
補遺として「中断十カ条――若き心理士への手紙」を収録。
目次
まえがき――心理療法論、友人論
*
ふつうの相談――形態・構造・位置
序論
1 三つの風景
2 学派的心理療法論と現場的心理療法論
3 冶金スキーム
4 ふつうの相談の位置
第1部 〈ふつうの相談〉の形態
1 私の文脈
2 〈ふつうの相談〉のアセスメント
3 〈ふつうの相談〉の技法
4 〈ふつうの相談〉の機能
5 小括り――構造に向かって
第2部 ふつうの相談の構造
1 ふつうの相談0
2 ふつうの相談B
3 ふつうの相談C
結論 ふつうの相談の位置
1 ふつうの相談A――メンタルヘルスケアの地球儀
2 臨床知
3 球体の臨床学――終わりに代えて
*
補論:中断十カ条――若き心理士への手紙
あとがき――小さなフォントで
『ふつうの相談』の序論まで。僕自身も最近“小文字の方法”という観点について考えているのですが、それと呼応するような問題提起がなされています。専門的で狭く、理論に傾きがちなものではなき、素人的でそこらじゅうで行われている「ふつうの相談」に目を向けること。
『ふつうの相談』第一部「〈ふつうの相談〉の形態」まで。ここでは著者自身が臨床の場で実践している〈ふつうの相談〉がどのようなものであるのかが検討される。ポイントは、専門的な療法と〈ふつうの相談〉が対比されながらも、そこに地続き感が見出されているところだろう。これは専門知をどう位置付けるのかという昨今の問題にも関わってくる視点のように思われる。
また、ふつうの相談が持つ多様性は、先日紹介した『作家の仕事部屋』とも呼応する。それぞれの言質において、それぞれの方法がある。あるいはそうであることが望ましいと言える。
『ふつうの相談』第2部「ふつうの相談の構造」まで。著者が実践する〈ふつうの相談〉から、より一般的なふつうの相談へと焦点が移される。まず根源とも言えるふつうの相談0が確認され、そこから相談Bおよび相談Cの位置づけが見出される。
それぞれの意味合いは本書を参照してもらうとして、その論理的な枠組みが興味深い。仮に知的生産の技術などのノウハウが、書き手が抱える問題を解決するためのセルフケアメソッドだと捉えるならば、本書で示される構図はノウハウ論としても解釈できるのではないかと感じた。この辺は改めて検討したい。
『ふつうの相談』結論「ふつうの相談の位置」まで。あらためてここまでの話が大きな見取り図のもとで統合される。平面から球体へのシフト。それは、そこら中に見出されるふつうの相談Aを位置づけつつも、臨床学という新たな(かつ学際的な)視座を提示してくれる。
重要なのはこの球体を意識してバランスをとることなのだろう。だからこそ、この視座は既存のものを何も排除しない。すでにそこにあるものをより実際的な形で捉えるサポートをしてくれている。
というわけで『ふつうの相談』(東畑開人)を読み終えました。ケアの現場にいる人に向けた専門書ではありますが、タイトルが示すように「ふつうの」人たちが得るとことも多いでしょう。個人的に今取り組んでいるテーマにかなり大きな風を入れてくれた一冊でした。