ブックカタリストBC127用メモ
取り上げる本
『哲学史入門IV: 正義論、功利主義からケアの倫理まで (NHK出版新書 750)』
編者:斎藤哲也さん
『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』など
シリーズの紹介
『哲学史入門I: 古代ギリシアからルネサンスまで (1) (NHK出版新書 718)』
『哲学史入門II: デカルトからカント、ヘーゲルまで (2) (NHK出版新書 719)』
『哲学史入門III: 現象学・分析哲学から現代思想まで (3) (NHK出版新書 721)』
構成
解説とインタビューのセット
『哲学史入門IV』の目次
序章 倫理学に入門するとは何をすることなのか(古田徹也)
第1章 現代に生きる功利主義―誰もが幸福な社会を目指して(児玉聡)
第2章 義務論から正義論へ―カントからロールズ、ヌスバウムまで(神島裕子)
第3章 徳倫理学の復興―善い生き方をいかに実現するか(立花幸司)
第4章 なぜケアの倫理が必要なのか―「土台」を問い直すダイナミックな思想(岡野八代)
特別章 「地べた」から倫理を考える(ブレイディみかこ)
序章 倫理学に入門するとは何をすることなのか(古田徹也)
古田徹也
『はじめてのウィトゲンシュタイン (NHKブックス 1266) 』
『このゲームにはゴールがない ひとの心の哲学』
『言葉なんていらない?: 私と世界のあいだ (シリーズ「あいだで考える」)』
『謝罪論 謝るとは何をすることなのか』
倫理学という分野について
哲学と倫理学の関係
政治哲学、法哲学、美学、宗教哲学、科学哲学、……
哲学の大部分と関係がある。しかしイコールではない。
道徳や倫理は、生活の中にすでにあるものだとして、倫理学に入門するとは何か?
倫理学についての議論の流れを学びはじめること?
倫理学に入門するとは、「人間とはどういう存在か」とか「人はなぜ生きるのか」といった問い、あるいは「自分とは何か」「他者とは何か」といった問いに向き合い始めることではないでしょうか。
人間(にんげん、じんかん)。個人と社会の両方を見る。
「個人」は反社会的だし、社会もまた個人を押しつぶそうとする(ことがある)
実際、倫理学をやるということは、抽象的すぎるかもしれませんけど、そういう矛盾した人間のあり方をつかまえることに精魂を傾ける営みだと思うんです。
社会→個人:政治哲学、方角、社会学、人類学……
個人→社会:小説や映画やドキュメンタリー
倫理学はこの両方にまたがる(あるいははざまに立って考える)
哲学は根本を問う。そのために、一つの視点に安住せず、人間を多面的に捉えていく
筋金入りのアマチュアであること
だから、入り口はいろいろありえる
身近な話題、たまたま見知った言葉、哲学史……
そこから少しずつ広がっていく
いずれにせよ大事なのは、自分の見方が少しずつ変容していくような経験をすることなんじゃないかと。
自分の見方が揺さぶられる体験をすること。
一方で、生命倫理、動物倫理、AIと倫理などの応用倫理的なテーマは入門としてどうか?
制度設計やルールメイキングを最終目的とした議論になりがち。根本的な前提(善や悪、あるいは幸福についての考え)は背景に退きがち
ふさわしいのは「自分たちが普段どう生きているかを記述し、捉え直そうとすること」なんじゃないか
自分にとっての「当たり前の言葉の不確かさ」に気がつく。そこから考えはじめる。
倫理学の内訳
規範倫理学、メタ倫理学、応用倫理学
規範倫理学
義務論、功利主義、徳倫理学
こうしたものとどう付き合うか?
〜〜主義で一貫した結論を出すという姿勢は倫理学というよりも、信条の選択
完結した領域としてではなく、全体の中で互いに関連し合う各パートとして捉える
知識をインプットして終わりではなく、各分野を「渡って」いく。「ほんとうはわかっていなかった」
倫理学はなぜ必要か
解釈と批判を続けること
しつこく考える上で本は良いパートナー
本や長い論文は、読めば必ず"変な部分"が出てくる
第1章 現代に生きる功利主義―誰もが幸福な社会を目指して(児玉聡)
児玉聡
/BCBookReadingCircle/BC003『功利主義入門』
功利(utility)。制度などをその「効用」によって判断する
ジェレミー・ベンサム(最大多数の最大幸福):帰結主義(カントの動機主義との対比)、平等主義
ジョン・スチュアート・ミル:快楽の質を導入
ムーア「そもそも善とは何か?」→メタ倫理学
快=善?(自然主義的誤謬)
非認知主義」「殺人は悪い」というのは「殺人、イヤだ!」と叫んでいるようなもの
リチャード・マーヴィン・ヘア(1919-2020)
普遍化可能性(カント的)と指令性
指令性:「この本面白いですよ」に含まれるもの
「〜〜すべき」という道徳的判断は、命題ではなく行動を指示する命令文
二層理論
ピーター・シンガー
効果的利他主義とシリコンバレー
デレク・パーフィットの長期主義
第2章 義務論から正義論へ―カントからロールズ、ヌスバウムまで(神島裕子)
神島裕子
『正義とは何か-現代政治哲学の6つの視点 (中公新書 2505)』
『ポスト・ロールズの正義論:ポッゲ・セン・ヌスバウム』
翻訳『正義論』
カントの道徳法則
定言命法:普遍的立法の定式
君の意志の格律が、いつでも同時に普遍的立法の原理として妥当するように行為せよ
帰結ではなく動機
→ロールズ
社会的の基本的な仕組みをどのような原理にもとづいてつくれば、公正と言えるのか
無知のヴェール、正義の二原理
反照的均衡
直観的な道徳判断と、正義の原理
→アマルティア・セン(経済学者)、マーサ・ヌスバウム(哲学者)
ロールズの「基本財」の限界
ケイパビリティ・アプローチ
潜在能力(ケイパビリティ)の平等
読み書きができる、栄養がとれる、移動できる、健康でいられる、教育を受けられる、……生きるためのさまざまな能力
マーサ・ヌスバウムの中心的ケイパビリティのリスト
グローバルな正義
ロールズは、基本的に国内社会を前提としていた
→トマス・ポッゲ
地球資源税
「正義」は原理だけで成り立つものではない。正義を支える市民が必要。
/BCBookReadingCircle/BC005『これからの「正義」の話をしよう』
第3章 徳倫理学の復興―善い生き方をいかに実現するか(立花幸司)
立花幸司
『徳の教育と哲学ー理論から実践、そして応用までー』
翻訳『人間にとって善とは何か: 徳倫理学入門』
『ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫) 』
徳倫理学
徳(アレテー):物事が本来持っている優れた性質
人間が人間として善く生きるために必要な優れた性質
アリストテレスの倫理学
幸福(エウダイモニア)を達成するために必要な徳
知性的徳(理性)と倫理的徳()
倫理的徳:習慣によって形成される性格的な傾向、欲望や感情を適切に制御し、中庸を保つ能力
「どのような人間であるべきか」を考える(人そのものを見る)
功利主義やカントの義務論との違い
上記は善悪の基準を抽象的で普遍的な原理に求めるという共通点を持つ
G ・E・M・アンスコム
現代道徳哲学1958年
フィリッパ・フット、アイリス・マードック
アラスデア・マッキンタイア
『美徳なき時代』1981年
コミュニタリズム
ロザリンド・ハーストハウス(ニュージランド)
『徳倫理学について』1999