チャンドラー方式
『村上朝日堂はいほー!』 「チャンドラー方式」
レイモンド・チャンドラーが小説を書くコツについて書いた文章より。
まずデスクをきちんと定(き)めなさい。
自分が文章を書くのに適したデスクをひとつ定める。
そこに原稿用紙やら万年筆やら資料を揃えておく
きちんと整理しておく必要はないけれど、いつでも仕事ができるという態勢にはキープしておかなくてはならない
毎日ある時間──たとえば二時間なら二時間を──そのデスクの前に座って過ごす
それでその二時間にすらすらと文章が書けたなら、何の問題もない。
しかしそううまくはいかないから、まったく何も書けない日だってある。書きたいのにどうしてもうまく書けなくて嫌になって放り出すということもあるし、そもそも文章なんて全然書きたくないということもある。あるいは今日は何も書かない方がいいな、と直感が教える日もある。そういう時にはどうすればいいか?
たとえ一行も書けないにしても、とにかくそのデスクの前に座りなさい、とチャンドラーは言う。とにかくそのデスクの前で、2時間じっとしていなさい、と。
その間ペンを持ってなんとか文章を書こうと努力したりする必要はない。何もせずにただぼおっとしていればいいのである。そのかわり他のことをしてはいけない。本を読んだり、雑誌をめくったり、音楽を聴いたり、絵を描いたり、猫と遊んだり、誰かと話しをしたりしてはいけない。書きたくなったら書けるという態勢でひたすらじっとしていなくてはならない。たとえ何も書いていないにせよ、書くのと同じ集中的な態度を維持しろということである。
こうしていれば、たとえその時は一行も書けないにせよ、必ずいつかまた文章が書けるサイクルがまわってくる、あせって余計なことをしても何も得るものはない、というのがチャンドラーのメソッドである。