『群論への第一歩』「第8章 準同型定理」ノート
(一日一章のペースは一旦横に置く)
この章で学ぶこと
すごい、書いてあることが理解できる
概念が脳に浸透してきた感じ
準同型定理
群論で学ぶ大きな定理の一つ
準同型の核が作る商群は、準同型の像と同型になる
核とは?
準同型によってG‘の単位元に移されるGの元全体の集合
これは群Gの正規部分群の一つ
正規部分群とは?
群が持つ部分群の一種
商群とは?
群を正規部分群で割って得られる商集合はm商群という群をなす
集合だけでなく、群演算もあるということだろう
以上を確認していく
集合と写像と同値類
写像fを三つの写像に分解する
rashita.icon具体的なイメージで考えよう
集合Xがあり、X‘では、aグループ的な元たちがa'に移される。b,c,dも同様
そういう操作(あるいは関係)がf
これを三つに分解する
まず、「似た物同士で集合を作る」(商集合X/〜)
四つの同値類の集合が生まれる
写像p 全射
同値類一つにつき、一つの点に集める
全単射$ \overline{f}
元は4つだけ
それをx’に移す
単射q
$ f = q○\overline{f}○p
写像fから全単射$ \overline{f}が構成できた。
名付けから想像されるが、フォーカスが当たっているのは3つの写像のうちの$ \overline{f}
pqは補佐的な印象
とりあえず今日はここまで。
続きから
上記と同じことを、集合Xではなく、群Gにおいて考える
基本的には同じ構図
同様に同じ構図で今度は準同型が出てくる
一つ前では、G→G'は写像fだったが、ここでは準同型fになっている
二つの群GとG'があり、写像f:G→G'が次の条件を満たすとき、写像fを群Gから群G'への準同型という
$ f(x*y) = f(x)*'f(y)
ようするに特殊な条件を満たす写像のこと
「積を積に移す写像」
状況を再確認
二つの群、GとG'があり、写像fがあって、その写像fは、 $ f(x*y) = f(x)*'f(y) を満たしている、という状態がまずある
その状況で、以下の5つ問いが「はい」と答えられるかどうか
1. 準同型fで単位元e'に移される集合NはGの部分集合になるか
2. fが作る同値関係を〜としたとき、G/〜=G/Nになるだろうか 3. GからG/Nへの全射pは、全射準同型になるだろうか
4. G/Nからf(G)への全射f~は、同型写像になるだろうか
すなわち、全単射準同型になるだろうか
5. f(G)からG'への単射qは、単射準同型になるだろうか
これらの問いは「はい」と答えられ、頭の方に出てきた
$ f = q○\overline{f}○p
を満たすような$ \overline{f}が構成できることになる
それぞれ1~5が順番に確認される
正規部分群の定義
Nは群(G,*)の部分群とします。Gの任意の元gに対して、左剰余類g*Nと右剰余類N*gが等しくなるとき、すなわち
$ g*N = N * g
のとき、NはGの正規部分群であるといい、
$ N \triangleleft G
と表記します。
rashita.icon正規という言葉から正規分布を連想する。 正規分布はグラフでみると左右対称になっている
正規部分群も、「左剰余類g*Nと右剰余類N*gが等しい」とあり何らかの対称があって、それが「正規」という名前につながっている?
とりあえず、ある条件を満たす部分群のことを正規部分群と呼び、その条件とは$ g*N = N * gとなること。
以下正規部分群の確認
いったんここまで(2024/3/15)
つづき(2024/3/16)
単位元のみからなる部分群は正規部分群
E = { e } とすると、Eは群Gの正規部分群になる
Eは、Gの部分群
任意のg
g * E = { g * e } = { g } = { e * g } = E * g
g * E = E * g
rashita.iconこれはわかりやすい
eの演算は「そのまま」なので、左も右も同じになるイメージがつきやすい
GはG自身の正規部分群
GはG自身の部分群
任意のgに対して、
g * G = G = G * g
g * G = G * g
rashita.iconこれもそりゃそうだ、感。
一応確認すると、G = {1,-1}、 * →かけ算 だとすると
g=1なら、{1 ,-1} g= -1なら、{-1,1}で共にG
逆側も同じ
群$ (G,*)が次の交換律を満たすとき、Gを可換群といいます。
Gの任意の元、x,yに対して、
x*y = y *x
が成り立つ。
(元が同じというよりも、集合として同じ)
今日はここまで(2024/3/16)
続き(2024/3/19)
上記は極端な例と言えるので、もう少し一般的な場合で考えてみる
対称群(S3,○)に関して、正規部分群になる部分群と、そうでない部分群を調べてみる 対称群の各元に名前をつける
e
恒等置換
r1=(123),r2=(132)
三次置換
a1=(23),a2=(12),a3=(13)
互換
さらにS3の部分集合の以下の三つにも名前をつける
G={e,r1,r2,a1,a2,a3}=S3
H={e,a1}
N={e,r1,r2}
H、NともにGの部分群になるが、
HはGの正規部分群ではない
NはGの部分群である
となる。
rashita.iconつまり、左剰余類g*Nと右剰余類N*gが等しくならない、等しくなる、の違いが生じる
HはGの正規部分群ではない
GをHで割った場合(左剰余類)と、HをGで割った場合(右剰余類)で違いが出てくる
よって正規部分群ではない
掛け合わせている二つの元を交換すると異なる剰余類に属する場合が発生している NはGの正規部分群である
上とは逆に、二つの元を交換しても属している剰余類は等しい
g * n とそれをひっくり返した n * g は等しいとは限らない(元のレベルの視点)
g * n とそれをひっくり返した n * g は等しい剰余類に属している(剰余類のレベルの視点)
Well-defined
(G,*)を群とする。群Gを正規部分群Nで割った商集合G/Nを群にするため、群演算となるG/N上の二項演算○*を次のように定義する
(a*N)○*(b*N)=(a*b)*N
(a*N)、(b*N)、(a*b)*Nは共にG/Nの元
ここでは、「剰余類a*Nと剰余類b*Nの○*による積」を「*による積a*bの剰余類(a*b)*N」として定義している
言い換えれば、剰余類同士の二項演算○*を、その剰余類の代表元同士の二項演算*で定義している
rashita.iconつまり、○*は何かということを考えるときに、この○*というやつは、(a*N)○*(b*N)という形で計算すると、もともとのGの二項演算を使った(a*b)*Nと等しいんだぜ、という風に置いた、ということ。
で、このように○*を定義すれば、それを二項演算としてG/Nという商集合は、群になる。つまり(G/N,○*)が群
これは証明が必要
その前に、このような二項演算の定義の仕方は問題ないのかの確認
剰余類同士の二項演算○*を、その剰余類の代表元同士の二項演算*で定義している
これがいけるのかどうか。
具体例で考える
a*N={a,a1,a2}
b*N={b,b1,b2}
それぞれどれでも代表元に選ぶことができ、そのどの場合でも二つを○*したときが等しくならないといけない(そうなっていたら代表元に依存しないと言える)
そのように代表元に依存しない形で定義されていたら、「その定義は、well-definedである」という
定理(well-defined)
Nを群(G,*)の正規部分群とし、Gの元a,b,a',b'について
a*N = a'*N
b*N = b'*N
ならば、
(a*b)*N = (a'*b')*N
となる。
rashita.iconまず、Nは正規部分群なので、「左剰余類g*Nと右剰余類N*gが等しい」が使えるぞ、というのがぱっと思い浮かぶ
証明
まず任意の元a,bについて、
(a*b)*N=a*(b*N)
であることを示す
(a*b)*N→x=(a*b)*nであるnNが存在する
→x=a*'(b*n)であるnNが存在する
→x=a*'mであるmb*Nが存在する
=a*(b*N)
よって
(a*b)*N=a*(b*N) ……1
同様に
(a*N)*b=a*(N*b) ……2
及び
(N*a)*b = N*(a*b) ……3
準備が整った
(a+b)*N=a*(b*N) //1より
=a*(b'*N) //最初の仮定より
=a*(N*b') //正規部分群なのでひっくり返しても等しい
=(a*N)*b' //2より
=(a'*N)*b' //仮定より
=(N*a')*b' //正規部分群なのでひっくり返しても等しい
=N*(a'*b') //3より
=(a'*b')*N //正規部分群なのでひっくり返しても等しい
これでOK
rashita.iconhoge*Nというのを作るとひっくり返せるぞ、というパターンが見て取れた
とりあえずこれで、代表元のどれを選んでも問題ないことが確認された
この部分は、「○*を定義すれば、それを二項演算としてG/Nという商集合は、群になる」という証明の手前の段階。
定理8-2 (正規部分群による商集合は商群になる) (G,*)を群とし、NをGの正規部分群とします。商集合G/N上の二項演算○*を、
(a*N)○*(b*N)=(a+b)*N
で定義すると、(G/N,○*)は群になります。この群G/Nを、GをNで割った商群、または剰余群といいます
群の公理から確認する
結合律、単位元の存在、任意の元に対する逆元の存在
ちょっと一言より
NがGの正規部分群であるときには、群としての構造を保ったまま、元xを余剰元x*Nに「太らせる」ことができる
rashita.iconまさに「構造」という感じ。
核の定義
fをGからG'への準同型とします。G'の単位元をe'としたとき、 f(x)=e'
を満たすGの元x全体の集合をfの核といい、Ker f で表します。すなわち、
Ker f = { x 属する G | f(x) = e'}
です。
rashita.icon復習。準同型とは、特殊な条件を満たす写像のこと
その写像の核が、上で定義されている
G'で、e'に移されるGの元の集合のこと
このKer fは、Gの部分集合であり、部分群であり、正規部分群である
それぞれ証明が確認される(部分集合なのは自明)
部分群
部分群であるためには、群演算で閉じていることがまず必要になる
あと、ker fが単位元を持ち、Ker fが逆元を得る演算で閉じていることが確認できればOKという流れ
核は正規部分群になる(定理8-4)
$ g*N = N * gを証明すればいいのだな、と予想は付く
「ちょっと一言」で考え方の流れが紹介されている
rashita.icon非常にわかりやすい
Ker f をNと置いて考える
NがGの正規部分群であるならば、$ g*N = N * g
$ g*N = N * gとは、g*NがN*gの部分集合であり、かつN*gがg*Nの部分集合であること
g*NがN*gの部分集合であるとは、g:Nの任意の元xが、N*gに属していること
g*Nの元xには、x=g*nを満たすnが存在する(n属するN)
それがg*Nということ
g*nがN*gに属するとは、g*n =m*gを満たすm(m属するN)が存在する
それがN*gということ
よって、任意のg(Gに属する)と任意のn(Nに属する)に対して、
g*n=m*g
を満たすm(N荷属する)が存在することを示す
rashita.iconKer は Kernelから来ているとのこと
rashita.icon証明を読んで確認した
準同型定理
fを群Gから群G'への準同型とすると、
$ G/Ker f \cong f(G)
が成り立ちます。
rashita.icon復習。$ \cong は「同型」の意味。
準同型が片側だけの等しさだったのに対して、同型は行って返っての等しさ
つまり、二つの群が群として等しいということ
fは同型写像←→fは全単射な準同型
rashita.iconまず式に注目する。
右側はf(G)でシンプル
左側は、
G/ Ker f
Ker f = Nとおけば、 G/N で商集合っぽい雰囲気が出てくる
Ker f は核
rashita.icon証明を読んでいく
(G,*)(G',*')の二つの群、それぞれの単位元e,e'
fは、GからG'への準同型と置かれている
準同型fの核 Ker fは群Gの正規部分群(定理8-4)
定理8-2 (正規部分群による商集合は商群になる)より、G/Ker fは商群となる 商群となるとどうなるか?
(G/N,○*)
(a*N)○*(b*N)=(a+b)*N
この関係が成り立つ(○*は、この商群の二項演算)
N = Ker f とすると、Gの元a,bに対して
(a*N)○*(b*N)=(a+b)*N
Gは、G自身の部分群である
+
定理5-3(準同型は部分群を部分群に移す)
復習
群Gと部分群Hがあるとき、準同型fはそのHをf(H)に移し、そのf(H)はG'の部分群である
↓
準同型fによるGの像f(G)は、G'の部分群
群G/Ker f(これは商群)から群f(G)への同型写像f_を構成していく
N = Ker fとして、写像
f_:G/N→f(G)
を、
f_:x*N→f(x)
と定義する。
rashita.icon確認する。商群G/Nをf(G)に移す写像を考えるということ。
f(G)は、G'の部分群
ここで、写像f_は、代表元xの取り方によらず定まることが示される(これは少し前にやり方が出てきていた)
f_は準同型
G/Nの群演算を○*とする。x1*Nと、x2*Nを商群G/Nの元とすると(任意の二つの元を選んでいるだけ)
f_((x1*N)○*(x2*N))=f_((x1*x2)*N)
○*は商群の群演算。つまり、(a*N)○*(b*N)=(a+b)*Nなのでそれが適用されている
= f(x1*x2)
f_は x*N→f(x) と置かれたのでそれを適用
=f(x1)*`f(x2)
fは準同型なので(積を積に移す写像)
=f_(x1*N)*'f_(x2*N)
f_は x*N→f(x) と置かれたのでそれを適用
これでf_が準同型であることが示された
rashita.iconf(x*y)=f(x)*'f(y)を示せばよい、という筋
f_は全射
$ x' \in f(G)とすると、f(x)=x'を満たす$ x \in Gが存在する。このとき、f_(x*N) = f(x) = x'なので、f_はx*Nをx'に移す。よって、f_は全射
rashita.icon全射はすべて移す、もれなくの意
f_は単射
x1*Nとx2*NをG/Nの元として、f_(x1*N) = f_(x2*N)と仮定すると、f(x1)=f(x2)となる
G/Nの二つの元があり、仮にその二つの元がf_で移されたときに等しいとすると、準同型fで移されたx1とx2は等しくなる
ここから式を展開して、x1*N = x2*N が言えて、f_が単射であることが示される
rashita.icon単射はXの元がそれぞれ異なるYの元に移されること
「だぶらない写像」
以上からf_が同型写像となり、
$ G/Ker f \cong f(G)
が証明された
rashita.icon全体をぱっと掴めるほど理解したわけではないが、部分部分で何が意図されているのかは少し分かった