群馬県立近代美術館(2)
美術館の中へと入りましょう。エントランスは美術館から少し離れた位置にあり、回廊(コリドー)で繋がります。大きな美術館と対比させるかのように、エントランスは小さく佇んでいます。聖書に「狭き門から入れ」という言葉があるそうです。建築家、磯崎新の代表作です。 https://gyazo.com/1b4571b0f97a55cf9ceecf3151cbe024
関越自動車道「高崎玉村スマートI.C.」(ETCのみ)で降りると、高崎方面に向かい10分ほどで到着します。この美術館の近くにお住まいの方の住まいを造ることになりました( 2017.08.15)
hr.icon
https://gyazo.com/131d9a8e39a453edcf16024a2fc8fb20
コンクリートで出来た小さく薄暗いエントランスの奥には続くのは、ガラス貼りの明るい回廊(コリドー)。
この回廊を、少し歩くと美術館ホールへ到着します。
https://gyazo.com/acdafc8bcfc381dd2d5ab257f22be804
美術館ホールに入った後も、明るい回廊からの直線は、そのまま階段へとつながっています。
右側には、鑑賞券を買う窓口があります。
撮影していいか尋ねたところ、このホールなら構わないとのこと。
左側には明るく広いホールがあり、その奥にある展示室の入口が見えています。
https://gyazo.com/98a89eb90ec6ae4843e4fc300cbc58cc
2階へと続く階段です。左右の壁は白い大理石貼りの豪華な仕上がりです。
1階から2階までの高さが高いので、階段の段数も相当なものになります。
踊り場を数か所つくることによって、階段のボリュームを小さく見せています。
https://gyazo.com/3e0c63103d11a2ba0a068233a3675801
対して、広いホールは、コンクリートのままの壁です。
展示室の入口カウンターのある、正面の突き当りの壁のみが、
階段と同じ大理石貼りになっています。
よく見ると、この大理石貼りの突き当りの壁には、
階段状の複雑な段が付いています。
壁というよりも、ひとつのオブジェのようです。
https://gyazo.com/8334616f6e4c9b901697322f51923f6b
しばらく、この大理石の壁を眺めていると、
美術館のボランティアの方から話しかけられました。
「作品を眺めるのではなく、
この突き当りの壁ばかり見ているひとは珍しい」と、
私に向かって言うのです。
「この壁には、建築家のメッセージがあると思いませんか」とも。
そして「プラトンの洞窟の比喩をご存知ですか」と尋ねられました。 洞窟に住む縛められた人々が見ているのは「実体」の「影」であるが、それを実体だと思い込んでいる。
「実体」を運んで行く人々の声が洞窟の奥に反響して、この思い込みは確信に変わる。
同じように、われわれが現実に見ているものは、イデアの「影」に過ぎないとプラトンは考える。
https://gyazo.com/0ef84f594b37b3e20be410cb7ea5fbd3
洞窟の比喩。私は初めて聞く言葉でした。ボランティアの方の話は続きます。
「この壁の大理石という素材自体には、大きな意味があるのではない」
「ホールの外に拡がる景色、外の「実体」を写し込むために、大理石を貼ったのではないのか」
「外の景色を写しこむ『スクリーン』としての役割こそ、この大理石の持つ意味ではないのか」
と、ボランティアの方はお話くださり、私に意見を求めているようでした。
https://gyazo.com/8b5d25af7a268b4aad0e25ccc5b5ecce
「なるほど」と、私は答えます。
「なるほど、階段では左右の壁に大理石が貼ってあるのも、」
「左右の壁に自分自身を写り込ませるため、なのかも知れませんね... 」
「他者を批評するのではなく、自分自身を批評しなさいと... 」
https://gyazo.com/b88749ab0e5d5aa09fdd277d4a69052e
大きなガラスの向こう側に拡がる「実体」。
突き当りの壁に写り込む「影」を目にすることで、
はっと、背後に拡がる「実体」に気づくことができる。
https://gyazo.com/e1547d96ca800e926c75b303e5183e30
このホールは、そんな「洞窟」なのでしょうか。
すみません。話はここで終わりです。
近いうちに、もう一度訪ねて、続きを書きます。
hr.icon