コンビニで学んだことが今の自分を作る大切な「点」となった
高校3年生となった頃、私は働かざるを得ない状況となった。早朝の新聞配達に加え、夕方コンビニでアルバイトを始めた。いざ働きだしてみると「働くこと」は意外にも楽しかった。42年後の今ならわかる。「働くこと」とは、先生や父以外の人から学ぶこと、外に師匠を持つことだったのだ。
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コンビニでのアルバイトは、設計事務所に通い始めるまで続いた。コンビニ店長からたくさんの事を学んでいたことを、その時の私は気づけなかった。3年も経たないうちに、自ら設計事務所を開設することになるとは思っていなかった。いえ、この店長から学べたからこそ、私は設計事務所を開設できたのだ。
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まず最初に挨拶の仕方から教わった。朝だけでなく夕方でも、挨拶はいつでも『おはようございます』。『手はお客さまに見えるように、前に置きなさい』、いつでもなんなりと、お申し付けくださいの姿勢だ。『商いはいつでも、お客さんのために待機していること』が、大切なのだからと教わった。
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父以外の人が働いている姿を目の当たりにしたのは、思えばこのコンビニ店長が初めだった。いつでも『お待ちしていました』と、レジでお客さんを迎える店長も、一方、お客さんの目の届かない机に戻ると、目を閉じて休んでいた。ずっとこんな仕事を続けてきたのかと、レジに立つ私は店長を見つつ思った。
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大工という父の仕事を私は尊敬していた。『家を建てる』という、かたちのある見えやすい仕事だ。対して店長の『コンビニの仕事』も何かをつくっているのだろうか・・・。高校3年生の素朴な疑問の答えは、今となっては自明だ。それは、私たち家族の毎日の暮らしの『安心感』だったのだ。
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「今必要な物がコンビニには必ずあるのだ」という安心感を、我が家だけでなく地域の方みな同様に持っている。この『安心感』には既視感があった。当たり前だ。私はその安心感を作りだすために、日々住まいの図面を書き、かたちとしているのだから。その源流を遡っていくと同じ源へと繋がっていたのだ。
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大きな声で主張したり、他者を批判したり問い詰めたりすれば、大勢の人から容易に注目される。一方、「いつでも当たり前のように、静かにそこにある」ということ。私たちの日々の暮らしに欠かせない『安心感』は、気づきにくいものになってしまった。けれども私は、この安心感こそ大切にしていきたい。
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