文字を導入する
パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによる分析的キュビスムの最盛期(1909-12頃)の絵画言語。
2人の絵画に文字が最初に導入されたのは、1909年にブラックが新聞の見出しの文字を書き込んだ時だが、その後11年頃の作品には頻出するようになる、タイポグラフィとしての文字の導入も、切り子面との関係で説明できる。切り子面の集積によって、対象の判別が困難になったため、あるいは、2次元の平面としての絵画に、新たな平面を導入し、その平面性を強調するために文字を画面に導入したのだ。
ブラックもピカソも1911年前後、作品に(断片的ではあったが)文字を挿入することがしばしばあった。対象となる静物に新聞を用い、そこから文字を抽出して作品の中に配したのである。明確で現実的な「文字」を挿入・参照することによって、ある意味では難解な作品を抽象画ではなく地に足がついた現実的な具象画であることを主張したとも言えるし、また逆に挿入された現実的要素(断片的な「文字」)が難解さと相まってより抽象画のように見せもした。