パーソナリティに関する研究の動向と課題
抄録
本稿では,この1年間に発表された日本のパーソナリティ心理学領域における研究のレビューを行った。過去1年間の研究動向をみると,以下の動向と問題が明らかとなった。まず,研究について分類・整理を行ったところ,研究される内容には一定の偏りが存在しており,パーソナリティそのものの構造や発達に関する研究が比較的少ないことが課題であると考えられた。一方,ライフステージごとのパーソナリティの機能や,パーソナリティと不適応・適応との関連については盛んに研究が行われていることが示された。ただし,これらは一時点の横断研究が多く,因果関係を明らかにするためには縦断研究や無作為化比較実験が求められよう。パーソナリティの測定については,質問紙法による尺度構成の研究が多く見られたが,既存の尺度と類似したものが多く,それらの分類や整理が必要であると考えられる。一方,Implicit Association Testやバウムテストといった質問紙法以外のアプローチはさらなる展開が期待されるだろう。
質問紙法によるパーソナリティ構造に関する検討が
進むと同時に,近年はその生物学的基盤を模索する試
みも進められており,双生児法や遺伝子,脳画像を用
いた研究も精力的に行われているが,本稿で扱った時
期の雑誌においては発表されていなかった。一方,わ
が国においては血液型とパーソナリティに関連がある という考え方が一般に広く根付いており,血液型性格
判断,血液型人間学などと呼ばれている。そのため,
血液型とパーソナリティに関する心理学研究は古くか
ら行われているが,実証研究においてはその関連に否
定的であり,菊池(2012)はこれを日本社会における
誤解に基づいた疑似科学としている。