エビデンスに基づく教育の逆説
抄録
客観的根拠に基づいて教育の研究・実践・政策を一体的に進めようとするエビデンスに基づく教育は、一まとまりの意味システムとして特有の政治的機能を果たす。そのためその教育への批判は、その理論的前提への内在的批判とともに、その実行が再帰的に社会にもたらすものに目を向ける必要がある。教育観の変容を経て成立可能になったエビデンスに基づく教育は、それを要求してきた固有の歴史的・社会的文脈ゆえに教育を変質させ、教育の形骸化や空洞化をもたらすであろう。さらには教育学を廃棄に追い込んでいく可能性もある。