暗黒大陸中国の真実
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中国の国情を把握している人を区分けすると三つに分けられる。ところが、いずれの人もいざ真実を述べるとなるとかなりの制約がある。三つの区分はこうである。 (一 )宣教師 (二 )民間事業家 (三 )領事館員や外交官等の政府役人最初にあげた「宣教師」たちは真実を話したがらない。なぜか。もし事実が知られると、今まで続いてきた援助が打ち切られる危険があるからである。次にあげた「民間事業家」たちも事実を話したがらない。なぜか。心証を害された中国人から不買運動が起こる恐れがあるからである。また、会社に罰則が課される恐れがあるからである。最後にあげた「政府役人」は在任中は外交辞令的なことしか言えない。厳重に口止めされているからである。したがって、現場にいて状況を最も的確に把握しているはずの人間が、事実上「さるぐつわ」をはめられ真実を述べられないのである。こういう ?5ロ令とでも言うべきものが敷かれた結果、アメリカ国内では、中国の真実とはかけ離れた思い違いやら誤解が生まれてきたのである。また、もし現役の役人がアメリカに帰国し、中国の話をしてくれと頼まれたような場合は、話の概要を政府に提出しなければならないことになつている cもし自分が関わった問題の全容を話そうものならクビが待っている。したがって、きちんと説明することなどできないから、明るく振舞い、中国の明るく見えそうな面をことさら取り上げるしかないのである。こういう欺瞞に満ちた、真相を一部しか明かさない話は百害あって一利なしであるが、こうした話が全国的に広まっているのである。聞く方にすれば、現場を知っている話し手を信用しているから、まさか嘘とは思わない。民間事業家も然り。真実を話そうにも話せないのである。同様な理由で、新聞に「反中国的人物」と叩かれるのを恐れているのである。
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都合のいいことだけ語るときは実に饒舌になるのである◎「中国人のキリスト救化の大来は明るい」としているが、それは布教活動の大技 g分のためであって、中国現地ではそのようなが例はまずもって見あたらない。こ・ついうたわごとは宣教師の専売特許である。とは言っても、全くの嘘をでつち上げているわけではない。圧倒的多 &の宣教師は、意図的な嘘と思われるものは排除しようという良麻を備えているのではある。しかしながら、まさに独断と偏見で「期待できる」と判断したものを実態以上に持ち上げる傾向がある。彼らは単なる「思い込み」に過ぎないものを既成少実とするような、積極的というべきか無謀な人間であり、都合の悪いことは完全に無視する人間であるから、全く信用するに当たらないものと断じるほかないのである。確かに宣教師は誠実ではあるが、宗教活動にのめり込むあまり、どことなく、冷静に物事を見つめる目がないのではないか。また、さまざまな事象を正確に伝えることができないのではないか。どこの世界にも例外がある程度あるものだが、宣教師の世界となると、熱心な人ばかりなのか、皆「右に倣え」で、例外がごく少ないのは不思議である。さて、中国在住者からは真実は聞くことができないことはおわかり願えたとは思うが、そのほかの人たちはどうであろうか。プロのジャーナリストや助成金を得て中国を訪問した者や大学教授たちはどうであろうか。こ・ついう人たちは中国に短期間しかいないからすべてを見聞きすることはできないのは当たり前だが、典型的な出来事をそんなに多く見聞きすることも叶わない。したがって、彼らの出す本も不備だと言わざるを得ない。しかし永住者には見えるものが短期滞在者には見えないという不利があっても、彼らには逆に好き勝手なことを言えるという「旨味」がある。彼らの情報源は怪しいものがあり、関連情報が故意に削除されているから、短期間の滞在では情報の信憑性を確かめる手立てはない。例えば、誰でもいいが外国のジャーナリストが来ると、すかさず中国政府の高官と会見の場を設けられる。こういう待遇を受けて舞い上がらない人はいない。
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平気で嘘をつく
中国に長くいる英米人に、「中国人の性格で我々とは最も違うものを挙げてください」と訊いたらほぼ全員が路踏なく「嘘つきです」と答えると思う。
西洋人はまず嘘をつかない。もちろんアメリカ人でも、付き合い上、やむを得ず嘘をつくことは誰にもある。全く信用ならない人もいるにはいるが、ごく稀である。頑固ー徽、嘘は全くつかない人の方が多い。また学者は何にもまして正確さを重んじる。話をする時は確信のあることしか話さないも
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中国人は誠実で正直であるというのは大きな間違い
「中国は誠実で正直である」と子供の頃から聞かされてきたが、はたしてそうであろうか。野蛮で時代遅れの中国の現実を知らないから、そう思い込んできただけである。現地に行って見るといい。上海には『チャイナ・ウィークリー・レビュー』など中国人が出しているアメリカ人向けの新聞があるが、想像を超えた野蛮で時代遅れな記事ぱかりである。現実に目を向けよ。昨日まで中世さながら、混沌とした分裂国家であった国が、今日は、活気にあふれた道義国家、愛国心漲る統一国家と思われている。が、実は、食うものもろくにない大昔さながら「節約こそ美徳」の王道を歩んでいるのである。
情報があまりにも少ないのである。私の子供時代、学校で地理の勉強をしたり、教会の日曜学校で中国人のために祈りをしているのを聞いたり、異教徒をどう導くか宣教師が熱く語っていた頃と同じである。それどころか最近は、新聞や国際慈善団体向けに「夢の中国」と「現実の中国」を一緒くたにして、ますます世間を混乱させている「善意の人」までいる。
しかし中国人は演出家であり、辛い立場に追い込まれても見事に演じきれる素晴らしい役者である。役柄になりきり、厳しい現実を忘れさせることなど朝飯前である。またそのスピードが素晴らしい。例えぱ車夫。ぼろをまとい寒さにちぢこまり、作り笑いをして物貰いをしているかと思うといきなり、
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布教活動の実態
はたして効果はどうか。伝わるほどの効果は出ていない。情報というものは全く当てにならないものである。「期侍以上の成果」というがとんでもない。現実が知れたら、支援が減らされる。いま少し説明の必要がある。現地の模樣を伝える情報紙はたくさんあるが、いずれも「きれい歩」ばかりである。しかし、経験者は自分が ?|いた記事を見て「俺はこんなことを ?}いていたのか」と暗い気持ちになる。つまりこういうわけだ。誰だって新人記者として現地の教会に派 }flされると、「熱烈歓迎」される。そこでつい、いい気になって「きれい事」ぱかり書く。ところが実情を知るにつれ、「これでいいのか」と思うことが多々ある。しかし、「宣教師の生活がかかっている。書いたら大変だ。新人の頃は面倒見てもらったしな」というわけだ。個人的感情に流され事実を書けないのだ。「悪いことは悪い」と訴えなけれぱ記吉とは 3えない。しかし、これが実情である。こういうわけだから、自分が杏いた記車を見て何も Bえなくなるのである。
ところで、中国では慈善活動に従 *Kする者はすべて「宣教師」と呼ばれている。一度も教会で説教したことのない医師や社会活動家も「宣教師」である。本書でも広い意味で「宣教師」を使うことにする。
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たまたま手にしたー九三三年七月六日付けのニューヨーク・タイムズに次のような記事があった。「中国のキリスト教離れ五万人」 (「レイメン海外宣教師調査報告書」より〇「混迷の中国でキリスト教離れ。内乱と反キリスト教運動が原因か」とある。五万人という数字はプロテスタントだけのようだ、プロテスタントは四十数万。そのうちの五万である。ちなみに、中国で教派を問わず「信者」と祢する者は二百五十万である。
書くべきことが書かれていない。それはこういうことである。騒乱が起こると宣教師が避難する「救会は閉鎖。補助金も減額。となると信者はどうなるか。何も貰えなくなる。こういうことが多発しているのに、なぜ書かないのか。
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虐殺されても中国人をかばう宣教師
アメリカは、こういうプロパガンダ攻撃を次から次へと仕掛ける政府を「正統な中国政府」として承認している。しかし、この「政府」の影響の下、過激な学生や無知な民衆が、我がアメリカ人を多数殺害しているのである。「政府」とは国民党政府で、巨大な秘密結社のようなものである。高官の椅子を自由に動かし、反外国運動を焚きつけ、外国人殺害の裏で手を引いているのは国民党である。スローガンを見れぱ明らかである。
福州を流れる川の上流でのこと。高齢のイギリス人女宣教師が二人、追剥に捕まり「裁判され」、「帝国主義者」にされ、「残虐なる死刑」に処された。生涯を聖職者として現地住民のために捧げた二人に待っていたのは、体中を切り刻まれ、長時間悶え苦しみ殺されるという無残な最期であった。当然ながら、中国国民党「政府」は何もしなかった。政策の一環であるから、助けるわけがない。対照的に、こういう反外国人、反キリスト教運動がいくら起こっても民間人は別段驚かない。冷靜に見ている。中国人はいつまで経っても中国人であって、いくら表で愛想を振りまこうとも、裏では何をするかわからない人間であることを重々承知しているからである。
毎回同じことの繰り返しだ。クリスチャンに対する大々的な虐殺、略奪がしばらく嗚りを潜めると、宣教師たちは「とうとう中国人もキリスト教徒となってくれた」と喜びの声を上げる。一方、民間人は、「ちよつと待ってくれ。元の中国人にすぐ戻るよ」と。
数十年経っても同じことの繰り返しである。民間人の方が正しく、宣教師がトンチンカンな反応を
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妹の宋美齢は蒋介石に嫁いだ。宋一家は全員が留学している。蒋介石の妻となった美齢はウェルズリーカレッジ (マサチューセッツ州ウェルズリーにある全寮制女子大 )に学び、宋子文自身もハーバ—ド卒である。全員がクリスチャンである。にもかかわらず、官報で反クリスチャンを指導しながら tfiとして恥じない一家である。
宋一家の内輪もめは有名である。蒋介石はほんの数年前まで、熱心な共産主義者であり、中国の赤化を目論むソヴィエトが差し向けた工作員と共に動いていた。当時の中国中央政府は、ある意味 (ロシアが差し向けた国民党中央執行委員会政治顧問の )ボロディンに牛耳られていた。蒋介石としては面白くない。そこで例によって対立した。これを見た孫文の未亡人宋慶齢は蒋介石を公然と非難する。それから怒りを靜めるためモスクワへ行き、しばらくは帰って来なかったから熱烈な共産主義者であるのは間違いなく、一九二六年に国民党が共産主義を排除してからは、一族と疎遠になっている。蒋介石は政略結婚で宋家の一員になった。留学経験もないから英語もうまくない。単なる軍閥の頭領に過ぎず、権力維持に必要な戦いしかしなかった男である。その経歴から見て「洞が峠を極め込む」日和見であり、略奪者に近く、目的のためには手段を選ぱない。
一方、宋子文は外国人には頗る評判がいい。中央政府の中では珍しく、カがあり、国全体のことを考えて行動する人物である。宋子文は国全体のために何をすべきか考える前向きな姿勢のようである。主な仕事は、中央政府の働威となっている軍閥を宥め、政府に刃向かわせないためにばら撤く金のエ面である。貸付金がチャラにされ回収が困難だから、宋の苦労は並大抵ではない。
税関だけは正直な米英人を雇う
政府の主な財源は関税である。税関は外国人である。これは約七 +五年前、清王朝の要望で取り入
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日本を非難し、中国人を弁護する宣教師宣教師は別にして、中国にいる外国人で中国人に同情する者はまずいない。「自業自得だ」というのである。考えても見よ。商品略奪即件が何年も続くのに、政府には保護策を打つ素振りもないのである。それでもなお、中国人に憐憫の情を示す者がいるだろうか。我々アメリカ人は国際法に則ってあくまでも公平に商品の売買をしているに過ぎないが、中国の正統政府とされる国民党政府は、中国人の生き血を吸う「帝国主義吸血鬼」と罵倒している。上海と天津以外のアメリカの役人は詐敗、反米運動に忙殺され、日本軍の行動を見て涙を流す暇などない。日本軍は世界各国が幾度となく明言していること、つまり「やるべきこと」をやったのである。
ところが宣教師だけは不思議なもので、中国人に迎合するぱかりでまことに滑稽である。中立を保つべき第三国人が表立った動きを取ることは好ましくないのにもかかわらず、宣教師たちは公然と日本を非難した。私が知っている宣教師は日本領事に抗議文を送りつけた。怒った日本領事がこの抗議文をアメリカ領事に転送した。驚いたアメリカ領事は件の宣教師を召喚し、国際儀礼違反であるから日本に謝罪するよう要請したという具合である。宣教師が抗議するとはまことに奇妙である。中国人の暴虐に、それも政府援助の暴虐に最も長く苦しめられているのは他ならぬ宣教師である。「中国人の誇りが傷つけられた」と抗議した宣教師がいたが、窓の外を見よ。数年前、校舎は放火され、焼け跡が今でも残っているではないか。焼いたのは誰だ。同僚と信頼を寄せた中国人教師ではないか。教え子ではないか。校門を見よ。放火専件の頃、可愛いはずの中国人のギャングが対立するギャングをパーティ等と偽って誘い出し、隠し持っていたマ
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シンガンでなぎ倒し、死体の山を築いたのではないか。三年前、自宅の西では、一生を神に捧げた高齢の女宣教師が二人「帝国主義者の手先」とされ、拷問のあげく、殺されたのではないか。拷問され殺されたり虐殺されたりした米英人の墓だらけである。一晩で九人も虐殺された人たちの墓もある。あの抗議文を送りつけた宣教師の住む住宅で、「有望な中国人」に裏切られ、命からがら逃げ延ぴた経験がない人はいないはずである。ところで、あの抗議文を日本領事に送りつけた宣教師のお宅に招かれ、話を伺う機会に恵まれたので早速こう尋ねた。「ほかの人間だったら罪になるようなことの十倍も悪いことをしている中国人をなぜ特別扱いするのですか ?」
返事はこうだつた。
「アメリカ人にアメリカ人の戦い方があるように、中国人にも中国人の持って生まれた戦い方があるのです。彼らは彼らなりの努力をしているのです」
自家撞着としか思えない。一体あの自信はどこからくるのだろうか。常人には理解不可能なことを神様がじかにお教え下さったのであろうか。中国にいる宣教師は、神の怒りが日本の侵略軍に下るのを祈っている。一方、同じ宣教師でも、日章旗のはためく国の宣教師は、神が正義の味方日本に微笑んで下さったと喜んでいるのである。
日本を非難し笑い者となったスティムソン国務長官
アメリカ人の情報源は宣教師である。中国には大勢いるが、日本にはごくわずかしかいない。したがって、日本の情報はほとんど入らず、入る情報はほとんどが中国情報である。したがって、世論は
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南京虐殺は国民党に潜む共産勢力の仕業
一九二六年、宣教師たちはこの政府が最後の盟友と持ち上げた。ところがどうであろう。数ヶ月後その第一軍が南京を制圧した時の模様をこう述べている 。
南京虐殺に関する声明文
南京虐殺の真相を広くアメリカ人に知ってもらわんがため、外国人の生命財産に危 Wを加えられた三月二十四日に南京に在住していた我々アメリカ人は、署名のうえ、ここに声明文を記すこの残虐行為は、上官の承認の下、制服若用の兵士によって行われた。南京在住の我々アメリカ人全員がこの目で見たのであるから断言できる。彼らは、外国人の私邸、領耶館、学校、病院会社の米務所を略奪しただけではない。家にも学校にも火を放った。外国人と見ると老若男女構わず撃った。誤射ではない。殺意を持って撃つた人殺しである。ある若いアメリカ人娘などは二発も銃弾を打ち込まれ重傷を負った。アメリカ女と見ると強姦する。その他、外国人女に、言葉にできないほどの侮蔑行為を加えた。こうした ¢件の多くをこの目で目撃したのである。その他さまざまなことが、疑いの全くない事実である。北伐軍の兵士や中国人の友達の証言によれば、南京入城に際して命令ではないにしろ、「略奪、外国人殺害許可証」の類のものを持って南京に入城したようである。外国人の家に押し入る。金庫を開けさせる。着ているものまで剥ぎ取る。女は犯す。すべて計画通りだったことは部隊の行動からして明らかである。我々の中には、「隠れても見つけ出して殺してやる」と言われた者もいる。中国兵だけではなく、匿ってくれた中国人ま
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でもがそう言ったのである。ところが、この虐殺がピタリと止んだ。米英の軍艦の艦砲射撃が始まったからである。とたんにあちこちでラツパの合図があり、組織的破壊行動が止んだ。これで兵士の暴虐、破壊活動は上が命令した組織的行動だったことが証明された。以上は嘘偽りのない事実なのである。
この南京虐殺を画策したのは誰か。外国人と中国人双方の意見であるが、首謀者はロシア共産党指導者の指導を受けた国民党政府内に潜む共産主義活動家である。これらは外国人だけでなく、中国人にとっても敵である。根絶やしにしないと中国の統一どころではない。我々は中国の国家目標に心底共鳴してきたい これまで危険に晒されてはきたが、今後とも気持ちは変わらない。故に、現在、国民党政府の政策に強い影響を与える陣営を抑えねば、中国のみならず世界の行く末は安心できないものがある。