How to improve your playing
この記事では、もう少し突っ込んだ練習方法について触れる。
正直なところ、演奏技術は楽器に触っている時間で決まる、というのがほぼ全てなのだが、そうはいっても効率の良い方法とそうでない方法というのはある。
今回は効率よく演奏スキルを向上させる方法について、普段自分が考えていることを書いてみた。kuguma.icon
スランプになっている方の参考になれば幸い。
便宜上、フレーズのコピーというシチュエーションで考えていく。
演奏に必要な2つの能力、4つの要素
まず大前提として、演奏には4つの要素軸に対してそれぞれ2つの能力が必要とされる。自分に足りないところを理解して、それを補うような練習をすると良い。kuguma.icon
GPTちゃんがかわいいAAを書いてくれたよ。kuguma.icon
code:_
(4つの要素)
┌─────┬─────┬─────┬─────┐
│ピッチ│リズム│強弱 │奏法 │
└─────┴─────┴─────┴─────┘
▲ ▲ ▲ ▲
│ │ │ │
┌───────────────────────────────┐
│ 感覚能力(Input) │
│ ~耳で特徴を捉える~ │
└───────────────────────────────┘
│
▼
┌───────────────────────────────┐
│ 身体能力(Output) │
│ ~技術で再現する~ │
└───────────────────────────────┘
2つの能力
音楽をうまく演奏するには、①特徴を捉える感覚能力と、②捉えた特徴を再現する身体能力 の2つが必要となる。
つまりInputとOutput。kuguma.icon
絵の模写で考えるとわかりやすいかもしれない。ものをよく観察し(①)、それを書き写す(②)。どちらが欠けていても良い模写はできない。フレーズのコピーも同様のことが言える。
①はいわゆる耳の良さで、これがないと、お手本と自分の演奏の差分に気付くことができない。つまり、「何を」良くすればいいのかがわからない。
②はいわゆる技術で、これがないともちろんやりたい演奏を再現することができない。
①が特に厄介で、見えていないものを書き写すことはできない。ので、まず見えるようにする必要があるが、これを鍛える方法はけっこう難しい。この記事で紹介するのは、「演奏の構成要素に注目して聴き、再現する」という方法。
②は基礎練で地道に上達させる必要があるが、
タイパのよい練習方法として、「運動性記憶」に着目した上で「分割・ゆっくり・寝る」方法を勧める。
演奏の4つの要素
演奏を構成する要素は色々な分類方法があるが、個人的には4つあると思っている。ピッチ、リズム、強弱、奏法。
余談:これはVST3のパラメータでもあるんだよね。kuguma.icon これらの4つの要素について、前述した2つの能力がそれぞれ必要になる!!
つまり掛け算で必要な能力は計8種類あるのだ。kuguma.icon
これについては後述することとして、まずはInput/Outputに着目した練習方法を紹介する。
①感覚能力のトレーニング
まぁぶっちゃけ、ソルフェージュの聴音をやるのが一番の近道という結論になる。kuguma.icon ソルフェージュの聴音では、聴いた音を楽譜に書き起こす。最初は単旋律からはじめ、最終的にはオーケストラ譜を書き起こすところまでやる。芸大の作曲科/指揮科の人間はほぼ全員これが出来る。
ただ、演奏をする人間の場合は、必ずしも楽譜を経由させなくても良いと思っている。(例えば、歌える、とかでもいい)
一方で楽譜に相当する情報だけでなく、微妙なニュアンスも汲み取らないといけない。大変!kuguma.icon
細かいニュアンスを聴き取るコツは注意して聴くこと。では何に注意して聴くか?
先ほど紹介したピッチ、リズム、強弱、奏法の4つの要素に注目する。
お手本をスロー再生したり、EQで自分のパートだけ良く聞こえるようにして補助をしながら、音源を聴いてみよう。
一度に同時に複数のことに着目するのは無理なので、4つの要素それぞれに気を配りながら何回もお手本を聴いて、観察してみよう。kuguma.icon
その後、これが一番大事なのだが、理解したことを、なんらかの身体表現に変換して再現すること!
ピッチ → 一緒に歌う。
リズム → 一緒に手を叩く。タカタカみたいな感じで間を埋めてリズムをなぞる。
強弱 → デュダデュダみたいな感じでオノマトペで再現する。
奏法 → (楽器による)
これをすることで、聴いた音と、身体表現(=運動性記憶)の間に1対1対応の学習データができる。
この学習データを蓄積することで、音を聴いたときにそれを身体表現として再現する回路が頭の中に構築されていく。
手や何かを叩く、歌う、など、自分にとってネイティブな身体表現に変換して再現できるようにまずしてみよう。
もちろん楽器演奏がネイティブなら、最初からそれに変換するのが効率は一番いいけどね。kuguma.icon
②身体能力のトレーニング
こちらは所謂楽器練習、のイメージで基礎練あるのみ、なのだが、「運動性記憶」を意識して練習するとタイパがよくなる。
運動性記憶はその名の通り、運動に関連した記憶なのだが、これは小脳に蓄積される。
人間の体は、ある程度の長さまで、手続きをまとめて記憶することができる。我々は考え事をしながらでもペットボトルのお茶を飲むことができる。容器を掴んで…持ち上げて…ふたをあけて…それを口に運んで…とかは考えてない。
こういった動作は小脳に記憶されており、記憶に従って自動的に再生されるので、我々の論理思考(前頭葉)と並列に動作させることができるわけだね。kuguma.icon
さて、運動性記憶も他の記憶と同様、参照/入れ子構造を持っている。先ほどの例でいえば、お茶を飲む動作はより細かい動作(たとえば容器をつかむ動作と、ふたをあける動作など)の組み合わせで成り立っており、それらもさらに細かい動作(キャップをつまむなど)の組み合わせで成り立っている。
演奏についても、質の高い動作を、こういった一連の手続き記憶として再生できるようにするのがゴールになる。
そのためには、最小単位の動作から順番にインストールしていくのがミソになる。
脳だけに。kuguma.icon
あるフレーズが弾けない場合は、弾ける部分がでてくるまで短く分割する。弾ける速度まで落とす。これが全て。
弾ける部分は、既に小脳にインストール済みの動作であり、組み合わせると弾けない動作、これが未インストールの動作ということになる。というわけでこいつをまずは頭に定着させ、定着したら動作の長さを少しずつ大きく、かつ速く再生できるようにしていく。
定着には一定の時間と繰り返しが必要になる。下地なしでいきなり長いフレーズを流暢に弾けるようにはあまりならない。
寝る、休憩などを組み合わせる。ちょっとずつこまめにやっていこう。あとは寝ればなんとかなる。kuguma.icon
…こういう都合上、作業スペースの横にピアノを置いてちょくちょく弾くスタイルが一番タイパが良いんだよね。kuguma.icon
このようにしてフレーズを滑らかに通せるようになったら、ここがスタートライン。次は①で書いた4要素を再現できるように集中し、注意しながら演奏してみる。これも同様にゆっくりから分割しながらやる。集中・注意が必要なくても、要素を再現できるレベルまで馴染んだら、そのフレーズはマスターです。
とまぁ、プロを目指すながらこういったストイックな練習が必要になるんだけど、エンジョイ勢でも、分割・ゆっくり・寝るはタイパのよい練習方法なので、一見遠回りに見えるかもしれないがぜひ試してみてほしい。
余談
実は人間の運動学習には両側性の学習転移が起こるという性質があり、右手でできるようになったことは左手でも60%くらいできるようになってたはず。なので、ある程度片方の手でできるようになってから反対の手で練習するのがオススメ。 この方法は自分はパチカやシェイカーの習得で大いに活用した。kuguma.icon
4要素それぞれのトレーニング
前の項目では、Input/Outputに着目して書いてみたが、今度はピッチ、リズム、強弱、奏法の4要素に着目して基礎的な練習方法(フレーズ練習の前段階)を紹介する。
ピッチ
感覚能力は聴音で譜面を起こすことで向上する。身体能力はインターバル練(ドレ→ドミ→ドファ等)で任意の音から任意の音に飛ばし、どの場合でも外さず音を当てられるように。ボーカルは下から高音域に飛ばす場合にピッチ低くなりがち。また、フレットレス楽器(Vn/Ba)では特に重要になる。
吹く楽器の場合は加えてロングトーンも大事。
リズム
これがなんだかんだ一番難しく、そして一番重要。
感覚能力を養うには任意の速度のメトロノームを鳴らしながら、任意のタイミングで手を(もしくは机を)叩く練習がまずはオススメ。3連符2, 3拍目と4分2,3,4拍目 くらいは安定して入れられるようになっておきたい。
これができない場合はリズム感が不足しているということがわかるので、重点的にやったほうがいい。
最初は身体的なガイドを自分で作るのがオススメ。足や口を使う。(例えば3連符ならタカタタカタと口ずさむなど)
基本ができるようになったら、それの前ノリ(プッシュ)・後ろノリ(レイドバック)を程度を変えながらできるようにする。
さらにできるようになったら、4拍を自分で叩きながら前・後ろで歌えるようにする。
これムズいんだよねkuguma.icon
身体能力は上記を楽器でできるようになればOK。もちろんこれができたうえでフレーズ練で色々なリズムパターンをインストールしていくことが必要。
強弱
感覚能力はさほど必要ないが、速いフレーズをコピーする場合はそのニュアンスがリズムに由来するのか強弱に由来するのかを聴き取るのが意外と難しい(まぁだいたい両方。)
身体能力を鍛える場合は、自分が出せる一番大きい音と、一番小さい音の幅を広く持つようにする(=ダイナミクス)。特に小さい音はどの楽器でも安定して出すのが難しいので重点的にやるとよい。
奏法
要素としてあげたが、正直楽器による。ピアノだと装飾音(トリルとかグリッサンド)とかかな。kuguma.icon
奏法は知識によるところが大きく、存在を知っていないと認知も再現も難しい。先達に学ぶのが良い。
知ってさえいればひとまとまりのイディオムとして処理できる。
まとめ
うまいこと音楽をやるためには、耳(Input)と身体(Output)の両方を、4つの要素/軸(ピッチ・リズム・強弱・奏法)に着目して鍛えるのが有効という話を書いた。kuguma.icon
だいたいうまく音楽ができない場合は、基礎がおろそかになっている場合が多いので、これら8要素のどの部分が自分に不足しているかをチェックしてみて、不足しているところを鍛えてみよう!kuguma.icon
とはいえ、効率を上げても楽器に触る時間が少ないと元も子もない。なんだかんだ時間の確保が一番難しいよね。kuguma.icon
それでは良い音楽ライフを!kuguma.icon*3