悪口について
悪口は上品さと敵対するので、上品であることはそれだけで悪口の対象になりうるのだが、
多くの人々は上品であることを是としており、下品であることを避けようとする。
その癖に悪口を言いたくなってしまうので、嫌らしい上品さと、歯切れの悪い悪口が世に蔓延り、悪口を言えないくらいに上品だったり、勢いがよすぎてもはや上品なのではあるまいかというくらいの悪口は嫉妬の対象にもならず、もはや伝説のような扱いである。
切れ味のいい悪口を言う人は、大体優れた人間観察の目と、下品の品というものをよく理解している。中途半端ではなく、下の下の品としてよく磨かれた悪口は、職人技である。
悪口は難しい。
論理的であるよりも、理不尽であるべき。
「スパイスカレーをスパイスから作る男は嫌い」
一見理不尽だし結構好きな悪口だが、そこはかとなく誰かに共感してもらおうというあざとさ、狡猾さが滲む。だが、中高一貫ノンデリホモソーシャルで洒落たメガネをかけたコンサルかベンチャーに勤めているサウナとキャンプが好きそうな男がむかつくなぁという感情を端的に言い表しているように思う。
「友だち以上恋人未満」のような、言わなくていいことを言わないことによる滋味がいい。