柄谷行人とPluralityの関係
AudreyからのPull Requestで明確化されました
AudreyからのPull Requestの和訳
我々は、深さと広さの完全なスペクトルが存在し、2つの間のトレードオフを表していることを見ることができる。経済学者はしばしば「生産可能性フロンティア(PPF)」によって技術を説明するが、これは緊張関係にある2つの望ましいものの間で現在可能なトレードオフを示すものである。 図では、このようなPPFとして協力のスペクトルをプロットし、以下で研究するさまざまな具体的態様を、豊かだが狭いコミュニケーションを持つ「コミュニティ」、両者の中間的態様を持つ「国家」、薄いが広い協力態様を持つ「商品」という大まかなカテゴリーに分類している。このフロンティアを、フロンティアに沿ったすべての地点で外側に押し出すことが⿻の目標であり、この7つのポイントで説明したように、それぞれが技術的に強化された拡張機能となる[^KojinKaratani]。 [^KojinKaratani]: このように交換様式をコミュニティ、国家、商品に三分割したのは、『世界史の構造』(2014年)における柄谷行人の研究に触発されたものである。柄谷は「X」と名付けられた新しい交換様式を提唱しており、この様式は互恵性と協力のグローバルなネットワークを育成することによって、これまでの様式の限界を超越しようとするものである。 解説nishio.icon
歴史の発展とともにより広い範囲での協力が必要になり、まず国家(交換様式B)が発明された そして国家をまたぐ協力、交換様式Cとして商品(市場、資本主義)が生まれ地球規模に広がった 資本主義による商品の市場流通はとても広い協力形式であり、通貨を媒介として国家を超えた分業・協力が行われている。が、しかし交換様式Aの時代のような親密さが失われている
柄谷はこの世界史の流れを俯瞰した上で、「交換様式Aのより高次元での回復」が行われるであろう、と予想した
多様性を超えたコラボレーションのスペクトラム.icon
AudreyからのPull Request
We can see there being a full spectrum of depth and breadth, representing the trade-off between the two. Economists often describe technologies by "production possibilities frontiers" (PPF) illustrating the currently possible trade-offs between two desirable things that are in tension. In the figure, we plot this spectrum of cooperation as such a PPF, grouping different specific modalities that we study below into broad categories of "communities" with rich but narrow communication, "states" with intermediate on both and "commodities" with thin but broad cooperative modes. The goal of ⿻ is to push this frontier outward at every point along it, as we have illustrated in these seven points, each becoming a technologically-enhanced extension[^KojinKaratani].
[^KojinKaratani]: This tripartite division of modes of exchange into communities, state, and commodities is inspired by the work of Kojin Karatani in The Structure of World History (2014). Karatani proposes a new mode of exchange, labeled "X", which seeks to transcend the limitations of previous modes by fostering global networks of reciprocity and cooperation.
他の資料
ヴィタリックさんのEthereum上で研究開発された「新たな交換様式」は、不特定多数の人が公共の利益のために交換することを可能にするものです。これは一見すると個人のための利益に見えるかもしれませんが、最終的にはコミュニティー全体の利益になるという共通認識につながります。これらはメカニズムデザインの活用方法であり、私はこれを台湾の政治にできる限り応用するようにしています。 前置きが長くなりましたが、なぜこのような交換様式をRadicalxChangeと名付け、Radical x Changeと別々の単語に分けて表示しなかったのか。それは日本の文学者であり哲学者である柄谷 行人(注3)さんが提唱している交換様式X、すなわち「交換様式論」(注4)から着想したものだからです。 ---
私が現在興味を持っていることの一つは、日本の哲学者であり文芸評論家でもある柄谷行人さんが唱えている「交換モデルX」をデジタルの力で実現できないだろうかということです。 私は柄谷さんの思想に強い影響を受けています。たとえば、『トランスクリティーク カントとマルクス』は、カントの視点からマルクスを、マルクスの視点からカントを見たものですが、私に大きな影響を与えた作品です。 彼は多くの考えを持っていて、とくに『トランスクリティーク』に続いて刊行された『世界史の構造』などに出てくる「交換モデルX」という概念は、間違いなく私に大きな影響を与えています。 少し説明すると、柄谷さんが言っている交換モデルXとは、家庭のような無償の関係の交換モデルA、上司と部下のような上下関係のB、政府内部あるいは不特定多数の人たちが対価で交換する市場のような関係のC、これら三種類に属さない四つ目の交換モデルを指しています。これは開放的な方法で、不特定多数の人々を対象としつつ、「家族のように何か手伝いを必要とすれば、見返りを求めずに助ける」という交換モデルです。
柄谷行人サイドの視点から描写してみるnishio.icon
この本は台湾デジタル大臣のAudrey Tangが経済学者Glen Weylと共著で書いたPluralityというムーブメントについての解説である
この本の中で、Audreyは交換様式論に着想を得て協力の深さと広さのトレードオフという概念を展開している
交換様式Aに相当する「少人数の深い協力」が、交換様式Cへと発展する過程で、商品市場のような関与する人は多いが互いをよく知らない「広くて浅い協力」に変わって行った
この深さと広さのトレードオフは技術的制約がもたらすもので、技術の発展が生産可能性フロンティアを押し広げることによって「より深く広い協力」が発生すると考えている。これは「Aの高次元での回復がD」「Dは人間の意志で作り出すのではなく、到来する」という柄谷先生の考えとも