Pluralityと学問知の交差点
https://www.youtube.com/watch?v=8hzm3naX9dY&list=PLHsuZp6_Tsv9NlzuJwDNqf7ezKkp6O9MU&index=1&t=5354s
Plurality Tokyo Namerakaigi #2
13:15~14:45 セッション1 Pluralityと学問知の交差点
​Audrey Tang、Glen Weyl、駒村圭吾、宇野重規、鈴木寛、安田洋祐。モデレーター: 鈴木健
セッション全体の構成
1. 冒頭 0:00-0:33
司会 鈴木健氏が趣旨説明。
90分のタイトなパネル:
基調講演 → Glenn Weyl と Audrey Tang
自己紹介&問題提起 → 国内パネリスト4名
テーマ横断コメント → 相互議論
Q&A 20分
2. 基調講演(Glenn Weyl & Audrey Tang)0:33-16:00 頃
歴史観
1945〜2025 の米国主導体制は終わりつつある。
AI と民主主義の対立が顕在化。
2つの危険なAIビジョン
1. 左派的ユートピア(Sam Altman ら)──万能AIが全てを解決。
2. 右派的アナーコ資本主義(Musk, Bitcoin)──連帯を切り崩す。
Anarcho-capitalism - Wikipedia
台湾モデルの提示
g0v → 行政コードのオープンソース化 → コロナ対策成功
Polis(vTaiwan)で合意形成、Community Notes へ波及。
概念フレーム
Plurality = 「無限の多様性の無限の組合せ」(Star Trek 由来)
Arendt の「複数性」、Danielle Allen の「エネルギー転化」理論、Tang の「数位/多位(數位/數衆)」
協力の広さと深さのトレードオフを技術で押し広げる
例:脳間コミュニケーション(深さ↑ 幅↑)、承認投票(幅↑ 深さ↑)
3. 国内パネリストの論点
宇野 重規(東大)
政治思想・比較政治
トクヴィル/Dewey/Arendt を鍵概念に再評価
民主主義は「多様な実験の場」
“ファンダム”=現代の結社
「政治とは多様性を扱う技芸」
駒村 圭吾(慶大・憲法)
憲法学
法律家は民主主義に懐疑的(憲法は民主主義を制御する)
代表制は本質的に COI を抱える
裁判×クラウドファンディング Call4 は新しい civic tech
法 を Plurality の駆動力として位置付けてほしい
鈴木 寛(東大/元文科政務官)
デジタル民主主義実践
1996〜 地方電子会議→コミュニティスクール→オンライン熟議
高校生政策コンテストなど25年の試行
「普通の多数派」が政治から逃げない仕組みをAIで支援したい
安田 洋祐(阪大・経済)
マーケットデザイン/ゲーム理論
Weyl とは同門。Radical Markets を翻訳監修
Alone(個人主義的偏狭)から Plural へどう橋渡しするか
「お金のない市場」「票を数えない投票」の理論例を提示
1次元の比較(価格・票数)が多様性を潰す課題を強調
4. 基調講演への応答
Glen
Dewey はネットワーク民主主義の源流。
日本は“米国式デモクラシーの劣化コピー”ではなく、独自の実践(市民会議・未来デザイン会議など)を世界に示すべき。
Audrey
“Lagrange point”メタファー:運動と政府の重力均衡点に立ち、両者を翻訳する。
無関心(Indifference)が公共の敵、差異(Difference)が友。
5. 相互議論のハイライト
法とAI
AIポリティシャン=市民が書いたモデル仕様に基づき予算配分を自動執行。透明性・多元的倫理を確保。
市民集会の再設計
AIで「多様性を最大化する組合せ最適化」→ 複数アセンブリの結果を統合。
Quadratic Funding × クラウドファンディング
公的資金やフィランソロピーを市民寄付で二乗比例マッチング。
アート/ミュージアムの役割
科学・政治を体験に翻訳し“普通の人”の参加障壁を下げる(チームラボ、未来館などが例示)。
6. Q&A(抜粋)
個人内にある“多様性”をどう育むか
自己の中の複数の文脈を結びつけ「一貫した内的プルーラリズム」を形成すると、橋渡し役になれる。(Audrey)
共有体験のない世代間をどう繋ぐか
ネットワーク効果:高結節度の個人が内部葛藤を乗り越えることでリーダーシップを発揮。(Glen)
テック志向層と政治無関心層の断絶
アート&デザインを介した翻訳装置を増やす。未来館の量子展示などが好例。(Audrey)
全体を貫くキーメッセージ
1. Plurality = 技術 × 多様性 × 民主主義 の再統合
深さと広さのジレンマを技術で解消し、異質性を「熱」ではなく「推進力」に変える。
2. 台湾モデルの実証性 & 日本の潜在力
g0v/Polis で実績を示した台湾に続き、自治体実験や市民会議が進む日本が“次の担い手”になり得る。
3. 制度デザインの新フロンティア
Quadratic Voting/Funding、承認投票、マネーレス市場、AIポリティシャン――既存制度の“微修正”ではなく根底からの再設計。
4. 法・教育・アートの橋梁機能
憲法・裁判によるチェック、探究学習カリキュラム、体験型ミュージアムがそれぞれプルーラリティを社会に埋め込むインターフェースとなる。
このセッションは、「技術と民主主義は衝突ではなく協奏へ」という大きな潮流を、思想・制度・実装レイヤーで具体化した場でした。