W.O.W (WALK ON WATER)のネガティブな感想 +BLにおける社会描写とかトリガーワーニングとか
W.O.W (WALK ON WATER)(原作:Jang mokdan、マンガ:Jaxx)は日本語で読んだけど、個人的には同性愛差別描写、セックスワーカー差別描写がキツくて辛かった。
もちろん差別描写は否定的な文脈で描かれてるし、英語圏のまとめサイト見ても高評価。
でも私個人としては、恋愛娯楽作品で…つまりセックスや恋愛描写を楽しむことがメインの作品にしては描かれる差別描写があまりにも重く感じた。
例えば主人公同僚などの差別発言などに主人公が傷つくシーンがあるんだけど、そういうシーンが思った以上に、ダメージを与えて残り続けた。
その先で和解があったりして、主人公はそこで一区切りがつくのかもしれないけど、読んでいるうちにダメージが蓄積していって辛い。
たぶん作品としてはよくできてるんじゃないか…と思うんだけど、特に何重にも苦しいアウティング描写があまりにもキツすぎて、ちょっと。
キツい描写をキツいものとして描いている…という意味で、もちろん悪いわけではないけど。
日本のBLはあまり社会描写がないと思う。
海外fanficを読んでると、上手く社会描写とエンタメを混ぜてめちゃくちゃ面白い作品になってることが多いので、日本のBLにも増えたら良いなあと思ってた。
単純化して喩えるなら、シンデレラなどと同じ構造で、弱者が生き延びる話は共感したりハラハラしたり、幸福を勝ち取ることで爽快感があったりすると思う。
なんだけど、この作品読んで、エンタメと社会描写を混ぜると読者にダメージがありすぎる…ということもあるんだなと思った。
そういう指摘はいろんな分野でいろんな人がしているのを見かけていたけど、差別を否定的に描けば良いというわけでもないというのも実感した。
これまでX(Twitter)でよく見かけていた、表現の自由/規制議論で、悪を悪として描いたら良い…という考え方に、なんとなく単純化しすぎているような気がしていた。
犯罪行為を美化して描くのは良くないというのはそうなんだけど。
だからといって否定的に描けばそれでOKです、という話ではないんじゃないかと思う。
社会に対してどういう影響があるのか、読者に対してどういう影響があるのか。
結論は出るものじゃないけど、考えることは良いことだと思う。
だからこそトリガーワーニング(例えばレイプ描写が含まれるので気をつけてくださいというような)は重要なんだと思う。
これまでトリガーワーニングのある作品を読んでも、あまりダメージがなかったので実感としては分かっていなかったんだと思う。
ホラーが好きだから、暴力、暴言、差別に基づく恐怖描写、性加害描写はたくさんあって、書き方の好き嫌いはあっても、気にしたことなかった。
トリガーワーニングを読んでも似たような描写を見ても、結局、その人が、どのタイミングでどの作品でダメージを受けるのかはコントロールできるものではないので、トリガーワーニング自体も万能ではないということなんだと思う。
最近、読んだとある本で、トリガーワーニングはあるべきだが役に立たない…と性被害者でもある作者が書いていて、そうなんだと思う。
あるべきだけど、役に立たない。役に立たない、でもあるべき。
話はずれるけど、tapasのトリガーワーニングはとても丁寧で参考になる。
エッチかわいい系の作品で、ソフトな性描写(夢のなかでのイメージ)で首にものが巻き付く描写のトリガーワーニングに絞殺があったときはびっくりした。
失礼だけど、最初見たとき、ちょっと笑ってしまったんだよね。
でもいろいろ可能性を考える機会になった。
暗い作品で生々しく描かれた描写につらい体験思い出してしまう人もいるだろうし、娯楽作品で気軽に描かれた描写で思い出したり、軽く描かれることで被害を軽視されたように感じてよりつらくなる人もいるかもしれない。