AOMEI社のバックアップソリューション(主にCentralized BackupperやMultiManager)を利用しての所感
顧客の要望により、Windows PC×複数台のシステムバックアップを取得することになった。
結論としては、タイトルにあるAOMEI社の製品を使うことになったのだが、AOMEI社の提供する情報がインターネット上に少ない上に、Centralized BackupperやMultiManagerのことになると特にほぼ情報ない、という感じがあったので、誰かの役に立つことを願って、以下にまとめてみようと思う。
# まずは要件
PCが起動しなくなった、などのハードウェア故障時に、別のPCにリストアできること(最大の目的)
リストア先のPCが、バックアップ取得元のハードウェアと構成が異なるものであってもリストアできること
バックアップ対象PC自体がほぼ全てバラバラな機種だが、コスト面から考えてリストア先として用意するPCは1台にしたい、というのが背景
いわゆるデータ領域はLAN内にあるサーバー(OSはWindows Proなので、厳密にはサーバーではない)が全て保持しており、そちらは使っている業務アプリの提供元が別途バックアップ取っているのでバックアップ対象外
インターネットに繋がっていないオフライン環境のPCがメインターゲットのため、保存先はクラウドではなくローカルストレージ
対象PCの台数は10台程度だが、そのうち、ネットワーク的に分断されたPCが1台ある(このPCはインターネット接続可)
Windows Serverは含まず、Windows 10と11のみの環境
顧客がバックアップやリストアの操作をする予定は今のところないが、できれば日本語表示可能なものがベター
# ベンダー的な観点での候補
色々と調べてみたところ、候補に挙がったソリューションがいくつか。
AOMEI Centralized Backupper (以下CB)
これを採用した、と言いたいところだが結局AOMEI Multi-Manager + Backupper Technician Plusになった(後述)
CBは無茶苦茶安い。サーバー×0台、Windows PC×20台程度なら、5万円切るくらい。
Arctera (旧Veritas) System Recovery
日本の販売代理店さんに見積もり依頼したが、1台当たりで1万円以上して、どう考えてもCBの方が安かったので採用せず
(あともう一つ何かあった気がするけど忘れました...)
# AOMEI製品の中での候補
次に、AOMEI製品の中で商用利用可能なものをリストアップしてみる。
AOMEI Backupper Workstation
Windows PC×1台で利用可なライセンス。サーバーは不可
AOMEI Backupper Server
Windows PC/Windows Server×1台で利用可なライセンス
AOMEI Backupper Technician
Windows PC×台数無制限で利用可能なライセンス。サーバーは不可
これを利用している顧客に有償で技術サービスを提供していいライセンスらしい
AOMEI Backupper Technician Plus
Windows PC/Windows Server×台数無制限で利用可能なライセンス。
PlusではないTechnician同様に、有償サービス提供可
AOMEI Centralized Backupper
バックアップ対象のPC/サーバー台数によって「台数制限あり(台数によって価格変動)」と「台数無制限(固定)」が選べる
CB以外は、基本的に各PCにインストールしたアプリを各PCで操作してバックアップを取得するが、CBは中央管理可能な管理画面がライセンスに含まれているので、対象PCのバックアップタスク管理やスケジューリングが可能
AOMEI Cyber Backup
CBはPC/Serverのみが対象だが、こちらはSQL DatabaseやVMも含むらしい
こちらも管理画面はついているらしい(CBと同じ画面かは試してないので不明)
AOMEI Multi-Manager
これだけあってもバックアップできないので注意
CBの管理画面だけを切り出して、ライセンス販売しているもの
これに紐づけられるクライアントのライセンスは、Technician / Technician Plusのみっぽい
AOMEI社としては、その他にもツールを販売しているがここでは割愛。
今回の要件としてはサーバー/DB/VMは含まないので、Server / Cyber Backup / Technician Plusは候補から外れ、この時点ではWorkstation / Technician / Technician / Centralized Backupperに絞られた。
その中で、やはり1台1台管理するよりも、管理画面で中央管理できた方が良いというのがあり、CBについて調べていった。
また、CBの台数を選べる方のプランで見積もりも取ってみたところ、20台程度のライセンスでも十分に安く、顧客の予算的にも問題なさそうだったので、「台数制限ありのCB」を採用する方向で進めていった。
# AOMEI製品全般のバックアップ方式
AOMEI社製品は、ほとんどの製品で試用期間が30日あるので、CBについても事前の検証を行うことができた。
CB含むAOMEI社のソリューションでバックアップが可能な対象領域は、
システムバックアップ
ブートセクタ含む、OS起動に必要な部分のバックアップ
今回の案件ではこちらのみを利用
ディスクバックアップ
システム関連部分に限らない、ディスクの丸ごとバックアップ(の認識/試してない)
パーティションバックアップ
パーティション単位のバックアップ(試してない/名前からするにブートセクタは含まないと思われる)
ファイルバックアップ
ファイル単位(と恐らくフォルダ単位)のバックアップ(試してない)
などで、更にいうとファイルの同期(フォルダAのファイルHoge.xlsxが更新されたらフォルダBのHoge.xlsxも更新される、的な)なども可能っぽい。
今回の要件ではシステムバックアップが取れていれば良いので、これのみ検証を行った。
また、バックアップ方法も増分/差分/フルバックアップなどが選べ、保存領域が抑えられるのも嬉しいポイント。
システムバックアップの差分ってどうやって割り出すんだろう。すげーな。
# Centralized Backupperについて
ここからは、実際に手を動かして検証したり、顧客環境で環境構築してみた所感。
CBは中央管理ができるのが最大の魅力で、管理画面から色々なことができる。
セットアップ系
ネットワーク上のPCにリモートでクライアントAgentをインストール可
クライアントのログイン情報が必要ではあるが。。。
クライアントAgentのインストール後、ライセンス登録も管理画面から可
バックアップタスク系
1つのバックアップタスクに複数PCを紐づけて管理可能
スケジューリングも可能
何ならバックアップの最大同時実行数も設定できる
これは無茶苦茶良くて、例えば「バックアップ対象は10台だけど、同時に10台のバックアップが起動しても保存領域へのディスク書き込みがボトルネックになる」みたいな時に、同時に3台分のバックアップしか起動しない、といった制限を掛けられる
バックアップの失敗時などに、SMTPでメール通知が可能(素晴らしい!)
今回の案件では、オフライン環境といえど実は一部PCの一部のポートはFWを通じて外に出ることができて、このメール通知も問題なく動作できたため、無茶苦茶うれしかった。何が嬉しいって、これができないと逆に、失敗したことに気づくのは画面を見てからということになるので、誰かが都度確認しないといけない、ということになるから。
今回は利用していないが「保存先のディスク容量が〇〇GBを下回ったら通知(しきい値を設定可)」とか、「クライアントのCPU負荷が〇〇以上なら通知」とか、後者のようなバックアップに関係ないところまで通知が可能
バックアップの保存先は、NASかWindowsの共有フォルダ
NASはあまり詳しくないので割愛、今回はWindowsの共有フォルダを採用
これは少し残念なポイントで、例えばCBの管理画面やMultiManagerをインストールした管理用PC自体のバックアップを取りたい時に、なんと保存先にローカルフォルダが選べないので、自分のローカルフォルダなのにわざわざ共有フォルダとして見えるようにしないといけない、ということが発生した(基本的に他のPCから共有参照される想定、なのが「保存先」なので、理解はするが共感はしない、というところ...)
リストア系
ここは後で詳しく説明するが、他が素晴らしいのにここがイケてなさすぎた。。。
ただし、バックアップ取得元とリストア先のハードウェア構成が異なってもリストア自体は可、という点は素晴らしいところ
複数台のPCのバックアップを管理するのであれば、一元管理できる管理画面は必須と言えるし、上記のような細かな設定ができるので、Centralized Backupper / Cyber Backup / MultiManager + Technicianのどれかを選ぶべきかと思う。
ただし、私の場合はCBのリストア部分が要件に合わなかった、という話を以下でするので、くれぐれも皆様には、バックアップ側だけでなくリストア側の要件も満たしていることを、試用版による事前検証などで確認してから製品選択して頂きたい。
# CBのリストアについて
今回の要件は「PC故障時などに、他の生きてるPCなどにリストアができること」だったのに、本当に残念なことに、CBでは「リストアしたいデータの元PCが、管理画面上でオンラインである必要がある」という謎の制約がついていたことが、顧客環境での設定があらかた終わった段階で発覚。。。
正直これはなんでなのか全く理解できない。システムバックアップをリストアする時に、取得元がオンラインである必要、全くないよね?と。
というか、オンラインであるPCのシステムリストアを行いたいとなるのは、PCのキッティングを効率化したい〜とかそういう方向でのニーズしかないと思っていて、ハード故障とかいわゆるDR(Disaster Recovery)的な観点の方がどう考えてもニーズとして多く、それに対応してないってどういうことなん!?と。
もちろん、検証の段階で「別PCにリストアして問題なく動くこと」までは確認していたが、手元のPC台数が少なかったこともあり(言い訳になるが)、「オフラインPCのデータをリストアできるか」までは試していなかった。
システムを導入する者として、無茶苦茶反省した。
# 結局どうなったか
CBでは要件を満たせない、となったので、販売代理店の方から代案をご提案頂いた。
そして結論としては「MultiManager」というCBの管理画面だけを製品化したようなものと、クライアントライセンスとして「Technician Plus」を組み合わせた形のものに変更することで、CBの機能や操作性を保ちつつ、要件も満たすことができた。
(ここまで確認ができたところで、この記事を書いている)
CBの管理画面とMultiManagerの管理画面はほぼ一緒で、唯一異なるのは管理画面経由で取得できるクライアントAgentのインストーラーが、CBではCB専用Agentという感じで、MultiManagerではMultiManager用Technician/Technician Plusだった、というところ。
なので実は、CBの管理画面のままでTechnician Plusのクライアントをバックアップ対象として認識させる、というのを試して認識できない、ということがあったりしたのだが、全く同じ見た目ではあるが、クライアントとして認識できるライセンスが異なる、というのに注意(日本で自分以外の人が踏むことは二度と無いだろうという注意点ではある)。
# 最後に
このあたりの経験を誰かにシェアするのはやぶさかではないので、CBやMultiManagerの導入を検討していてこの記事に出会った奇特な運命の方は、どうにかして私への連絡方法を探し当てて連絡してみて欲しい。
(ここでの連絡先公開はしません。悪しからず。)