クリストファー・アレグザンダー―建築の新しいパラダイムを求めて
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クリストファー・アレグザンダー/工作舎
クリストファー・アレグザンダー―建築の新しいパラダイムを求めて | スティーブン グラボー, 朗, 吉田, 智子, 辰野, 正美, 長塚 |本 | 通販 | Amazon
「パタン・ランゲージ」「センタリング・プロセス」などのキーコンセプトを次々と提出し、建築パラダイムの再構築を図るクリストファー・アレグザンダーの全体像を余すところなく描き出し、建築界のみならず、現代思想全般に衝撃を与える傑作評伝。
「アレグザンダーは完全な非個性化、中性化、あるいは無名化をこそ意図している。
それゆえ人間的な生活への正統的で良識的な理解をのぞんでいる。
このような立場をつらぬいているために、はじめて普遍的な言語への探求が
可能になっているといってもいい。
磯崎新(建築家)
■目次より
前書き クリストファー・アレグザンダー
序
建築の経験してきたパラダイム危機
クーンの科学革命の構造モデル
新パラダイムの提唱者アレグザンダー
科学としてのデザイン
アレグザンダーの建築の生成理論
アレグザンダー理論のもたらす叡知
パラダイム危機に突破口を与えるものは何か
第1部 
1章 問題提起
美の問題はどのようにとり扱われてきたか
「笑み」のような美しさをもった建築
美を実現する建築プロセスの開発
美の実現はなぜなされてこなかったのか
現代建築が間違っているのか、アレグザンダーが間違っているのか
2章 異常事態の認識
科学的精神を培った少年時代
七歳で建築家を志す
建築の異常性に気づいたケンブリッジ時代
さらなる研究の場を求めてハーバードへ
「はだかの王様」的状況の発見
3章 ルールを極限まで適用する試み
よいデザインとは、形とコンテクストとの適合だ
よい適合にはパタンがある
ダイヤグラムの発見とその問題点
ツリー構造からセミラティス構造へ
新たな問題を提起したBARTプロジェクト
ダイヤグラムは生成力をもつシステムになるか
4章 生成システムを求めて
環境はパタンでできている
規則システムと生成力
パタン・ランゲージと生成文法
ものの全体性と知覚との関連
環境構造センターの設立と、パタンランゲージの実践
パタンランゲージと社会環境との関係
客観主義と主観主義を超える新しいパラダイム
アレグザンダーは構造の全体性の意味を解明する
第2部
5章 ブレイクスルー
空間の質を直観する
生き生きと生気を帯びた状態こそが本質的だ
ブレイクスルーはいかにして起こったか
生成力を生み出す「名づけえぬ質」
質の客観性の主張が、既存パラダイムを揺るがす
6章 価値と事実の間で
質についての科学は、価値の問題とかかわる
精神と物質をめぐる論争史
精神と物質を一致させようとしたカント
事実と価値とが分離した世界
ラスキンの慨嘆
事実と価値とが一体になった理論こそが必要だ
科学の拡大へ向かって
7章 個人性と非個人性の接点
科学は「個人的知識」を含んでいる
個人性と非個人性をつなぐ
「個人性を超越して普遍性へ参与する」
すべての建築家がいだく二種類の不安
不安の根源に潜む死への恐怖
8章 もの作りの本質
建築はもの作りに始まる
もの作りの楽しみ
もの作りが人を不安から解放する
9章 拡張と実験
直観の助けを借りていた初期のパタン・ランゲージ
素人にパタンランゲージを使わせる実験
パタンのもつ柔軟性
モデストクリニックの実験と、オレゴン大学の実験
「有機的秩序の原理」
「ユーザー参加の原理」
漸進的成長を促進する「小規模プロジェクト優先」の原理
「コミュニティ制度の原理」と「診断の原理」
「資金プロセス調整の原理」
第3部
10章 共同作業
環境構造センターのメンバー
共同作業のもたらした効果
グループを率いたアレグザンダーの不屈の精神
女性の感覚がよい環境づくりには欠かせない
女性的気質が質を感じとる感性を養う
11章 理論の構築
パタンランゲージ理論のもつ形式的な上品さ
あらゆる理論はリアリティに投企するための手助けにすぎない
全体性をもった理論
宇宙の本質に触れるまで理論を普遍化する
アレグザンダーの理論は、新パラダイムの発見をもたらすか
12章 挫折、そして新たな展開
パタン・ランゲージを使った建築の挫折
幾何学的特性についてのさらなる説明の必要性
幾何学的特性と何か
幾何学的特性を生み出すプロセスの明確化
新たな幾何学的特性が、建設プロセスを転換する
第4部
13章 プロセスを求めて
生成プロセスとしてのパタン・ランゲージ
認識レベルの飛躍が、生成プロセスの範囲を拡大する
プロセス理論を建築にもち込むことの難しさ
真の生成力をもつキー・プロセスの発見へ向けて
14章 マネー・フロー
パタン・ランゲージの実現を阻む経済的問題
抵当プロセスが商品としての住宅を生み出す
住宅の漸進的成長を実現する「草の根ハワジングプロセス」
クラスターとビルダーによる建設組織
草の根ハウジングプロセスは、経済的政治的問題を回避できる
マネー・フローの検討がもたらしたふたつの概念
15章 政治・社会とのかかわり
環境の適切な分化が見られないのはなぜか
政治組織としてのクラスター
アレグザンダーの提唱する最も基本的な政治メカニズ
政治の問題に直面させられたバークレー事件
バークレー事件に対する世間の異常な反応
バークレー事件はパラダイム創造への大きな一歩だった
16章 建設行為
現行の建設プロセスに従ってつくられたモデスト・クリニック
新たな建設プロセスを求めて行われた画期的な実験
コンクリートを使った新しい施工方法の開発
最適な構造を実現するコンクリート工法の可能性
今までの理論を総合的に実践したメキシコプロジェクト
それでもやはり質は実現されていなかった
建設行為はデザイン作業と同様に重要だ
17章 戦いの火蓋は切って落とされた
第二期実験の開始
徐々に拡大する既存パラダイムとの鯉語
ますます深刻化する誤解と対立
ことばの意味内容までもが変わらなければならない
社会の文脈を離れて成立する理論はありえない
第5部
18章 ガラス玉演戯
アレグザンダー流『ガラス玉演戯』
より具体化したパタン・ランゲージの欠点
幾何学的特性への理解不足
トルコ統老のコレクションが、幾何学的特性についてのヒントを与えた
幾何学的特性は、そのものに備わるスピリチュアルな力と関係がある
知覚についての初期の研究
「全体的な知覚」こそが必要だ
サブ・オブジェクトとサブ・シンメトリー
しかしサブ・シンメトリーもまた、他の現象の副産物にすぎない
19章 幾何学と色彩
幾何学的特性をもったものを作るワークショップ・セミナー
一二の幾何学的特性
一二の幾何学的特性はパタンと幾何学とを結びつける
「センタリング・プロセス」の発見
色にも幾何学的特性やセンタリング・プロセスは当てはまる
センタリング・プロセスは施工方法も変える
中心をつくり出す施工方法
質をもったものが現れたとき、自我は解放されより大きな存在に触れる
20章 総合
足跡を振り返って
芸術が質をつくり出し、科学がそれを叙述する
かつて科学と芸術は完全に統合されていた
科学も芸術もともに質を扱ってこなかった
真の自由とは何か
建物を建てているときにこそ自由が得られる
新しい「ヒューマニズムの建築」に向けて
近代建築の問題はプラトンの洞窟の比験に似ている
哲学的アプローチとアレグザンダーのアプローチとの決定的な違い
■クリストファー・アレグザンダーとは?
1936年、ウィーンに生まれる。63年、ハーバード大学Ph. D 修了。『都市はツリーではない』『形の合成に関するノート』などの著作をつぎつぎに発表し、建築理論家として名をはせる。一方、67年に環境構造センターを設立、数々の建築プロジェクトを手がけ、一躍脚光をあびる。77年には、それまでの研究成果をまとめた著書『パタン・ランゲージ』を著し、まったく新たな建築理論を提出、建築パラダイムの再構築をはかる。主な参加プロジェクトには、オレゴン大学のマスタープラン、モデスト・クリニック、メキシカリ実験住宅、リンツ・カフェなどがある。また84年には、埼玉県の東野高校を建設、「名づけえぬ質」の実現された建築として、高い評価をうける。現在、カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部建築学科教授。
■著者紹介:スティーブン・グラボー Stephen Grabow
1943年生まれ。65年にミシガン大学を卒業後、72年、ワシントン大学で博士号を取得。現在は、カンサス大学で建築学の教授を務める。建築や都市計画に関する論文・著作も多く、建築雑誌の編集委員なども歴任する。
#パターン本
#1989年