State-of-the-Art Management of Hyperphosphatemia in Patients With CKD: An NKF-KDOQI Controversies Perspectiveを読んで
低レベルのエビデンスを認識しながら、診療ガイドラインは食餌性リン摂取の減少や吸着薬の使用などの潜在的な戦略とともにCKD G3aから透析を受けている腎不全まで「上昇したリンを正常へ向かって低下させる」ことを提案している。
臨床家はまた、吸着薬選択のベストプラクティスにかなりの不確実性があることを明らかにしている。
たとえば、米国腎臓財団の腎臓病予後改善対策(KDOQI)が実施した2017年のオンライン調査では、「CKDステージ3-5(非透析)および高リン血症の患者はカルシウムを含まない吸着薬のみを投与されるべきか?」を尋ねた。
979人の回答者のうち、「はい」と答えたのはわずか46%であり、CKD患者に非カルシウムベースのリン吸着薬を優先すべきかどうかについての臨床コミュニティ内のかなりの不確実性を示している。
透析前のCKDにおけるリン低下療法のリスクとベネフィットはほとんど知られていない。
血清リン濃度は通常、CKDの後期まで正常であり、高リン血症の臨床的に重要な度合いはCKDG4まで明らかではない。
CKD G3-5(非透析)におけるリン吸着薬の長期試験はほとんど実施されてない。
CKD患者約150人を対象とした単一施設試験において、3つのリン吸着薬(炭酸ランタン、セベラマー炭酸塩や酢酸カルシウム)の1つは、プラセボと比較して血清リンと尿中リンを中程度に低下させた。
FGF23は全体的に低下しなかったが、二次層別解析においてセベラマー炭酸塩によって低下した。
最近発表された205人の患者を対象としたCOMBINE研究において、炭酸ランタンを1回1g1日3回、12か月間使用しても血清リンは低下しなかったが、二次解析では尿中リンとFGF23が中程度に低下した。
他の試験でも同様の結果が得られており、リン吸着薬は尿中リンに大きく影響するが、リンまたはその調節ホルモンの血清濃度には影響しない。
CKD G3-5(非透析)でのリン吸着薬試験の主な課題は、全てが患者中心または臨床転帰ではなく、代替アウトカムのためにデザインされていることである。
リン吸着薬は、腎不全における多くの代替の生化学的結果に好ましい影響を及ぼす。
血清リンへの影響と併せて、吸着薬はリン調節ホルモンであるPTHおよびFGF23の正常化に役立つ可能性がある。
腎不全におけるプラセボと比較して、重要な患者中心または臨床転帰への影響を評価するための試験はない。
高リン血症は腎不全で重篤になる可能性があり、その結果、症状および骨疾患、カルシフィラキシスおよび掻痒などのよく記述される臨床的合併症が発生する。
このため、臨床的に重要な高リン血症を予防するために吸着薬を使用することは正当化される。
セベラマーベースの吸着薬は、最も長い経験および直接比較の試験における最も多くの臨床データがあるカルシウムベースではない最初のリン吸着薬である。
他のリン吸着薬と同様に、臨床転帰に対するセベラマーベースまたは炭酸ランタン対プラセボのベネフィットは、試験で検証されたことがない。
クエン酸第二鉄はまた、CKDにおける鉄の恒常性を向上させる潜在的な利点を有しており、静注鉄および赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の使用を減らすことで正味のコスト削減をもたらす。
血清リンに対するその効果に加えて、クエン酸第二鉄は、FGF23の転写のための付加的な刺激である鉄欠乏を補正することでFGF23を低下させさるかもしれない。
CKDおよび腎不全患者におけるカルシウムの蓄積は、カルシウムベースのリン吸着薬の高用量に対する熱意を制限している。
これらの懸念は、若く、他の点では健康な進行CKD患者においてさえ観察された血管石灰化の存在および、カルシウム補給による正味の正のバランスを示唆したCKD G3-5(非透析)患者における小規模・短期間のバランス試験の発見から当然生じた。
しかし、CKD G3-5(非透析)患者におけるカルシウムおよび非カルシウムベースの吸着薬の複数の種類を含むより一般的な吸着薬の試験はまた血管石灰化の促進についての懸念を生じさせた。
さらに、カルシウムのバランス以外のメカニズムがこれらの効果に寄与する可能性がある。
高カルシウム血症は、透析中の患者によく見られ、非致死性の心血管イベントと死亡のリスク増加に関連している。
非カルシウムベースの吸着薬の使用は、カルシウムベースの吸着薬より低い血清カルシウム濃度と少ない高カルシウム血症をおそらくもたらすにもかかわらず、腎不全における他の介入、透析液カルシウム濃度の変更、カルシウム受容体作動薬の使用および他の共同介入のような介入はまたカルシウムのバランスと濃度に影響するかもしれない。
透析液の低いカルシウム濃度は、最近、不整脈や心臓突然死のリスク増加と関連している。
したがって、吸着薬における外因性カルシウムおよびカルシウム溶液またはカルシウム受容体作動薬による減少の最適なバランスは不明である。
カルシウムを制限したいという願望に加えて、異なるクラスの非カルシウムベースの吸着薬は、有益であり、それらの使用のための特定の根拠を提供し得る他の効果を有するかもしれない。
低密度リポタンパク質の低下と抗炎症効果は、セベラマーベースの製剤でよく実証されている。
リン吸着薬の選択における他の重要な要因は、費用と関連する副作用である。
臨床転帰に明確な利点がなければ、医療費の削減は、非カルシウムベースの吸着薬のより高い費用よりまさるかもしれない。
併用に関する入手可能な研究はほとんどなく、ほとんどの試験では、主に一度に1つのリン吸着薬の使用が検討されていることに注意する。
プラセボに対する臨床転帰や臨床転帰に対する異なる種類の比較による有効性を推進させる試験は存在しない。
理論的に、非カルシウムベースの吸着薬は、FGF23刺激における外因性カルシウムそれ自体の影響のために、CKD G3-5(非透析)および腎不全におけるFGF23の濃度上昇をより効果的にコントロールするかもしれない。
CKD G3-5(非透析)および腎不全におけるFGF23コントロールの臨床的ベネフィットは、現時点では明確に実証されていない。
これらの研究の複数のシステマティックレビューおよびメタアナリシスが報告されており、各レビューにおいて、バイアスのリスクは中程度から高かった。
含まれている研究のほとんどは、主要転帰として臨床イベントのためにデザインされていなかった。
1つの大規模な研究であるDCOR試験は、死亡率を対象としていたが、追跡の維持が大幅に制限されていた。
これらの制限に基づいて、レビューは、カルシウムベースの吸着薬を超えるセベラマーの優位性に関して支持する、支持しない、不確実を含む現在のエビデンスについての異なる結論に達した。
最大かつ最も包括的なコクランレビューは、カルシウムベースの吸着薬に対するセベラマーの死亡における優位性と一致する点推定を報告したが、この発見は方法論的限界と不均一性から「低い確実性」とグレード付けされた。
カルシウムベースの吸着薬対非カルシウムベースの吸着薬の死亡への効果における高度な不均一性は、このトピックのすべてのシステマティックレビューで指摘されている。
たとえば、DCOR研究などのいくつかの研究では、ハザード比(HR)が0.93、95%信頼区間(CI)が0.79〜1.10と推定されたが、INDEPENDENT-HD試験などの他の49の試験は、HRを0.23、95%CIを0.15〜0.35と推定した。
Spoendlinらによる最近の研究は、米国の施設血液透析を開始した65歳以上の成人におけるセベラマーと酢酸カルシウムの有効性の比較が評価された。
セベラマーまたは酢酸カルシウムの新規使用者である最初の透析日から180日以内の患者を、傾向スコアを使用して分析し、群間の臨床的差異のバランスを取った。
このバランスの取れた集団において、心血管イベントと全原因死亡の両方のハザード比は0.96であり、有意ではなかった。
しかし、この研究の集団は小さく、信頼限界には群間のリスクの最大20%の差が含まれており、以前のメタアナリシスと一致する推定値である。
上記の考慮事項を要約すると、根拠の基盤は現在、腎不全の全ての患者に対して他を超えて吸着薬の一つの種類を支持するのに十分な強固さはない。
私たちの見解では、CKD G3-5(非透析)患者におけるリン吸着薬の常用、腎不全における特定のリンを標的とする吸着薬の積極的な使用や吸着薬のある種類を他の種類より優先することを正当化するためのデータは現在不十分である。
リン吸着薬の比較表(本邦未発売のものを含む)
https://gyazo.com/ad20ab60f7ed0d2808204126a57cf72d