ASHP Statement on Pharmaceutical Care
* 一部意訳あり
Definition “定義”
薬剤師の使命はファーマシューティカルケアを提供することである。
ファーマシューティカルケアとは患者の生活の質を向上させるという明確な結果を達成することを目的とした薬に関連するケアの直接的かつ責任ある提供である。
Medication Related “薬物関連”
ファーマシューティカルケアには薬物療法(実際の投薬)だけでなく、個々の患者に対する薬物使用に関する判断も含まれる。
必要に応じて、これには薬物療法を使用しないという判断、同様に薬物の選択や投与量、投与経路・投与方法についての判断、薬物療法のモニタリングおよび個々の患者に対する薬物関連情報の提供とカウンセリングが含まれる。
Care “ケア”
ケアの概念の中心は思いやり、他人の幸福に対する個人的な関心である。
全体的な患者ケアは、(とりわけ)医療、看護、およびファーマシューティカルケアを含む統合されたケアの領域から構成される。
これらの各分野の医療専門家は独自の専門知識を有し、患者の全体的なケアに協力しなければならない。
しかしながら、ファーマシューティカルケアのために、薬剤師は薬の使用から最も望ましい結果を確かにするための独自の知識とスキルを提供する。
時に、彼らは各種のケア(ファーマシューティカルケアを含む)の遂行を共有する。
あらゆる種類の患者ケアの中心には医療提供者と患者の間に1対1の関係が存在する。
ファーマシューティカルケアにおいて、削減できないケアの「単位」は一人の患者と直接の職務上の関係にある一人の薬剤師である。この関係において、薬剤師は患者へ直接的に、そして患者の利益のためにケアを提供する。
患者の健康と幸福は最も重要である。
薬剤師は個々の患者へ直接的で個人的な思いやりのある確約をし、患者の最善の利益のために行動する。
薬剤師は患者の生活の質を向上させる明確な治療結果を生み出すことを目的とした治療計画の設定、実施、および監視において、他の専門家および患者と直接協力する。
Outcomes “結果”
明確な(所定の)薬剤関連の治療結果を達成することによって、個々の患者の生活の質を向上させることがファーマシューティカルケアの目標である。
求められる結果
症状の解消または軽減
疾患や症状の予防
疾患の治癒
疾患の進行の停止または遅延
これには3つの主要な働きが含まれる。
潜在的および実際の投薬関連の問題の同定
実際の薬物関連の問題の解決
潜在的な薬物関連の問題の予防
薬物関連の問題は特定の患者にとって最適な結果を実際的または潜在的に妨げる薬物療法を含む事象または状況である。
薬物関連の問題には、少なくとも次のカテゴリが存在する。
不適切な薬の選択:患者は薬物治療の適応があるが、不適切な薬を服用している。
治療量以下の用量:患者は正しいが少なすぎる(用量の)薬物療法で治療されている。
薬物相互作用:患者は薬物 - 薬物、薬物 - 食品、または薬物 - 臨床検査の相互作用の結果である医学的問題を抱えている。
適応のない薬の使用:患者は医学的根拠のある適応もなく薬を服用している。
有害薬物反応:患者は有害な薬物反応または有害な効果の結果である医学的問題を抱えている。
服薬の不履行:患者は(例えば、薬剤的、心理学的、社会学的、または経済的理由で)服薬していない。
症状の未治療:患者は薬物療法(薬物使用のための適応症)を必要とするがその症状のための薬物療法を受けていない。
過量投与:患者は、あまりにも多くの正しい薬物療法(毒性)で治療されている医学的問題を抱えている。
患者は望ましい治療結果の達成を妨げる特徴を有し得る。
患者は処方された薬物使用レジメンを順守していないかもしれない、あるいは患者の生物学的反応に予測できない変動があるかもしれない。したがって、不完全な世界では薬物療法がもたらす計画された結果は必ずしも達成可能ではない。
患者は望ましい結果の達成に貢献し、それを妨げないような行動をとることによって、望ましい結果を達成するのに協力する責任がある。
薬剤師や他の医療専門家は望ましい結果を達成するのに貢献する行動について患者を教育する義務がある。
Quality of Life “生活の質”
患者の生活の質を評価するためのツールがいくつかある。これらのツールはさらに発達しており、薬剤師はこの主題に関する文献の熟知を保つべきである。
患者の生活の質の完全な評価は客観的および主観的(例えば、患者自身の)評価の両方を含むべきである。
患者は自身の治療に関する生活の質の目標を設定することに情報を得た上で関与するべきである。
Responsibility “責任”
あらゆる種類の患者ケアにおける基本的な関係は、患者が提供者に権限を与え、提供者が能力と責任を患者に与える(責任を負う)相互に有益なやりとりである。
責任には道徳的信頼性と説明責任の両方が含まれる。
ファーマシューティカルケアでは、個々の薬剤師と個々の患者との間の直接的な関係は患者の安全と幸福が薬剤師に委ねられている職務上の約束の関係であり、薬剤師は患者の最善の利益となる十分な専門的行動を通して信頼を守ることに尽力する。
医療チームの責任あるメンバーとして、薬剤師は提供されたケアを文書化しなければならない。
薬剤師は薬剤師の行動と判断から生じる患者の転帰(医療の質)について個人的に責任を負う。
Implications “意義”
薬剤師が個々の患者の明確な結果を達成する義務を負うべきであるという考えはファーマシューティカルケアの概念において特に重要な要素である。
薬剤師が薬剤師の行動がもたらす個々の患者の転帰に対して個人的に責任を負うという期待は薬学の継続的な専門化において重要な進歩を意味する。
ファーマシューティカルケアの提供は臨床専門職としての薬学の成熟を意味し、薬剤師のより成熟した臨床薬学活動の自然な発展である。
ASHPは、ファーマシューティカルケアは人々が薬を最大限に活用できるようにするという専門的職業の目的において基本的なことであると考えている。
それは、あらゆる種類の患者ならびにあらゆるカテゴリーの薬剤師および薬学組織を超えた統一的な概念である。
ファーマシューティカルケアはすべての臨床現場において薬剤師によって適用可能かつ達成可能である。
ファーマシューティカルケアの提供は、入院患者、外来患者、または地域社会における薬剤師に限定されず、ある一定の学位や専門領域の認定、専門資格、研修生、または他の資格を有する薬剤師にも限定されない。
それは学問や教育現場の薬剤師に限定されない。
ファーマシューティカルケアは、正式な資格や職場の問題ではない。そうではなく、それは患者の最適な薬物使用を実現するための患者との直接的な個人的、専門的、責任ある関係の事柄であり、患者の生活の質を改善へ導く。
薬剤師は、個々の患者の代わりに継続的なケアを行う義務を負うべきである。
彼らは、勤務シフトの変化、週末、および休日にかかわらず患者のケアの継続を確実にする責任を負う。
重要な意味は、ファーマシューティカルケアを提供する薬剤師は主たる責任がある薬剤師が不在である場合に補助的なケアを提供する薬剤師のチームのメンバーの一員として働く必要があるかもしれないということである。
もう1つは、責任がある薬剤師は患者が医療システムのある構成要素から別の構成要素へ移行するとき(たとえば、患者が入院したり、外来診療や地域の診療へ戻るために病院から退院したときなど)、ケアの継続が維持されるよう取り組むべきということである。
ファーマシューティカルケアの提供において、各診療領域の責任がある薬剤師間での患者のニーズに関する専門的なコミュニケーションは、したがって、不可欠である。
ASHPは、そのようなコミニュケーションをより良くするであろうファーマシューティカルケアの実践方法の開発は専門家にとって重要な優先事項であると考えている。
ファーマシューティカルケアは薬局実務の目的と薬物使用プロセスの目的の両方として考えることができる。つまり、薬剤師が薬局実務に従事する基本的な職業上の理由は、ファーマシューティカルケアを提供することでなくてはならない。
さらに、薬剤師(および他の人たち)が運営する薬物使用のシステムは個々の薬剤師によるファーマシューティカルケアの提供を支援し、可能にするように設計されるべきである。
ASHPは、組織化された医療環境では、ファーマシューティカルケアが院内薬局の重要な使命の一部である場合や、管理活動が個々の薬剤師によるファーマシューティカルケアの提供の促進に集中している場合に、ファーマシューティカルケアは最もうまく提供される可能性があると考えている。
権限を与えられた最前線で働くスタッフが個々の患者へ直接的なケアを提供し、管理者、他の薬剤師、および支援システムによってサポートされるこのアプローチは、多くの薬剤師および管理者にとって新しいものである。
このアプローチの重要な結論は、組織化された医療環境でのファーマシューティカルケアを提供する薬剤師が一人でそのようなケアを提供することができないということである。
彼らは薬局や他の分野の同僚、サポートシステムとスタッフ、そして管理者と相互依存的なやり方で働かなければならない。
薬剤師は労働システムと患者のニーズを満たすためのすべての活動の取り組み及びサポートシステムへ適切に焦点を合わせた実践を計画する義務がある。
一部の患者は異なるレベルのケアを必要とし、それらの違いを考慮して労働システムを構築することは有用かもしれない。
ASHPは、ファーマシューティカルケアの提供とそれを記録し、支援するための効果的な労働システムの開発が専門家にとっての優先事項であると考えている。
ファーマシューティカルケアの提供において、薬剤師は患者の実在的および潜在的な薬物関連の問題を評価するために、薬物療法に関する独自の視点および知識を用いる。
これを行うには、彼らは個々の患者に関する臨床情報に直接アクセスする必要がある。
彼らは薬物使用に関して判断を下し、そして他の専門家と協力してそして彼ら特有の専門知識と評価を考慮して個々の患者に最適な薬物使用を推奨する。
ファーマシューティカルケアには、薬物使用に関する事項への患者(および家族などの介護者)の積極的な参加が含まれる。
薬剤師の行動から生じる治療結果に対する責任の承認は、薬剤師が薬物使用に関連する問題について独占的な権限を有することを主張するものではない。
医師や看護師を含む他の医療専門家は、薬物使用プロセスにおいて、価値があり、確立され、よく認識されている役割を担っている。
ファーマシューティカルケアの概念は、他の医療従事者の役割や責任を損なうものではなく、また薬剤師による権限の侵害を意味するものでもない。
薬剤師のファーマシューティカルケアにおける行動は、協力的に実施され、見なされるべきである。しかしながら、薬剤師の知識、技能、そして伝統は、彼らを患者の薬物使用を向上させるための医療チームによる取り組みの正当なリーダーにする。
ファーマシューティカルケアは、薬剤師と個々の患者との間の直接的な関係を必要とする。
一部の薬剤師および他の薬局職員は患者との直接的な関係を伴わない臨床および製品に関する薬局活動に従事している。
適切に設計されていれば、これらの活動はファーマシューティカルケアを支援することができるが、ASHPはそのような活動をファーマシューティカルケアとして特徴付けることは混乱を招き、非生産的であると考えている。しかし、ASHPは、臨床および製品に関する薬局活動は不可欠で患者と直接対話する薬剤師の行動と同じくらい重要であると考えている。
薬学の教育者は学生にファーマシューティカルケアを教えなければならない。
継続教育の提供者は、薬剤師や他の薬局職員がファーマシューティカルケアを理解するのに役立つはずである。
学生と薬剤師は、個々の患者に代わって責任ある薬物関連の問題解決を概念化し実行するように教えられるべきである。
カリキュラムは、適切なファーマシューティカルケアを提供するために十分な知識とスキルを持つ卒業生を輩出するよう設計されるべきである。
これらの変化をもたらすための新たな取り組みが進行中である。
ファーマシューティカルケアを提供できる薬剤師を養成するために必要な学生および大学院生の教育と訓練のために、薬剤師は指導者としての時間と教育研究室としての仕事現場を確約しなければならない。
ファーマシューティカルケアを提供するためのさまざまな方法およびシステムを評価するための研究が必要である。
ファーマシューティカルケアは、薬局にとって心躍る新しい展望を意味している。
ASHPは、すべての診療現場のすべての薬剤師がこの展望を共有し、ファーマシューティカルケアの概念がその展望を実現するための職業の転換に向けて進むための薬剤師にとって刺激として役立つことを願っている。