第2回のQ&A

一般的なコメント

よくわからない部分といえば、ゲームの種類の違いである。授業中に回答していらっしゃったかと思いますが、ビデオゲームの定義が一律に言えない中でも、ゲームユーザーとしても学ぶ身としても経験値がないので大まかにもう少し教えていただけると幸いです。

A. ジャンルや作品の特徴については必要な範囲で簡単に説明するようにします。

追記分：

テレビゲーム・コンシューマーゲームという語がビデオゲームと近いような意味合いで用いられることもあるが、その違いがどのようであるかも気になった。

A. 「テレビゲーム」「コンシューマーゲーム」ともに和製英語なので、あまり気にしなくてよいと思います。「テレビゲーム」は（使い方にもよりますが）意味的には"video games"におおむね対応します。「コンシューマーゲーム」は、据え置き型の家庭用ゲーム機上のビデオゲームのことで、アーケードゲーム・PCゲーム・携帯型ゲーム・スマホゲームなどと対比されるものですね。英語だと"console games"と言います（ゲーム機は"video game console"と言います）。

いずれにせよ、言葉の違いとカテゴリー（概念）の違いは別の事柄なので、言葉の違いにこだわる必要はあまりないかなと思います。ほぼ同じ概念を別の言葉で言いあらわすことはよくあるということです（とくに言語が違えばそれは普通のことです）。

松永先生のスライドのデザインが非常におしゃれで見やすいです。自分は発表資料作りや発表自体に苦手意識を感じているので、最近発表資料のスライドのデザインを気にし始めました。資料作成の時に意識していることや、参考にしている文献などあれば教えていただきたく思います。

A. ありがとうございます。自分ではぜんぜん足りていないと思っていますが、ウェブデザインを少し仕事でやっていたことがあるので、そのおかげはあるかもしれません。グリッドを意識して要素を揃える（グリッドシステム）、まとまりがぱっと見でわかるようにする、などの常識的なことはめんどくさくならない範囲で気にするようにしています。とくに参考にしている文献などはないですが、『ノンデザイナーズ・デザインブック』はほめられているのをよく見ます。あとは、よいと思ったデザインを分析したり真似たりしてみるといいんじゃないでしょうか。

毎回の課題についての質問ですが、第1回目の授業では、受講生各自が各自なりに「重要と感じた部分」を述べ、それについてさらに考えたことを述べる、というふうに課題内容を提示されていたと思います。それに対して今回は授業内容「全体」をまとめて、授業の内容について述べよ、みたいな課題というふうに講義を受けた身としては理解していますが、毎回の課題は①各自が各自なりに重要と感じたことを述べてさらにそこに対しての自分の思考を述べる、あるいは②授業内容全体をまとめて、内容の一部（もしくは全体）についての自分の意見を述べる、はたまた③どちらでもよい、のどのあたりなのかがいまいちPandaの課題の内容を見てもつかめていません。今回自分は②でやったつもりですが、今一度ご教示いただけますとうれしいです。

★A. 説明が不十分・不適切だったかもしれません。すみません。

③ですかね…。基本は①で大丈夫なのですが、②だと授業をちゃんと理解しているかどうかがわかりやすいですね。自分が興味を持ったポイントがはっきりしていたら①、とくになかったら全体をまんべんなくまとめる②、みたいな感じでいいんじゃないでしょうか。いずれにせよ、授業のまとめ部分については、長い記述は求めていません。

歴史的な疑問・コメント

個人的には、『スペースインベーダー』『スーパーマリオブラザーズ』などのゲームがなぜ爆発的ブームとなったのかが気になった。同時代の他ゲーム作品には疎いのだが、何か他のゲームたちと差が付くようなゲームアイデアや操作性などがあったのか？

A. これは同時代の作品群とそれらを並べてプレイしたらよくわかると思いますが、単純に圧倒的に面白いからでしょうね。何がその「面白さ」を生み出しているかを正確に語ろうとするのはそれこそ批評になるので難しいのですが（たとえば複雑さとシンプルさがいい感じのバランスになっている、とかでしょうか）、とりあえずやってみると感触がぜんぜん違うと思います。あとは、上げられている2作はビジュアルだけでも十分に魅力的な作品ですね。

アーケードゲームの元となったコンピューター開発は、宇宙開発や軍事技術と密接な関係があるが、それがゲームにどれほど影響しているかはわからないというお話がありました。初期のアーケードゲーム "Spacewar!", "Computer Space", そして『スペースインベーダー』に至る一連のゲームの内容は、まさに宇宙・軍事開発と重なっているように見えます。コンピューターという道具と宇宙・戦争のイメージは結びつきやすく、その親和性を製作者は利用して多くの人々に受け入れられるゲームになったということなのではないかと思いました。

A. 同時代にSFや宇宙もののフィクション（小説、映画、コミックなど）はふつうに人気があったので、そちらからの影響のほうが直接的には大きいかなとは思います。たとえば『スターウォーズ』や『スタートレック』などです。戦争の題材との結びつきも、フィクションや遊戯機械を含めた娯楽の多くがもともと暴力的なモチーフを取り入れがちというのがあるかもしれません（なぜそうなのかはよくわかりませんが）。

ビデオゲームをどう定義するかによるが、後のゲームに与えた影響という点で考えるとSpaceWar！は重要な最初期のゲームであると言える。それが卓球ゲームやブロック崩しに姿を変え、さらにそれらがコピーや移植をされたことでスペースインベーダーなどのビデオゲームのマスカルチャー化に一役買うゲームも誕生した。

この流れを見ると最初期のゲームには球が重要な存在だったとわかる（卓球の球やブロック崩しの丸い物体、シューティングゲームの弾、パックマンも丸い？など）。このように球を使うゲームが多かったのは、ゲーム間でコピーや移植、模倣を繰り返したことや当時のコンピュータ技術でも作り易い形であったことが原因だろうが、ドンキーコングやマリオの登場まで「人間」が出てこないのは作れなかったからなのか作らなかったからなのか気になった。

A. 人間（的な形状をした存在）はすでに1970年代のアーケードビデオゲームのころからしばしば登場していますが、単純に細かいドットを打つのが大変という事情はあったと思います。

アーケードビデオゲームの一連の歴史の中で、『ドンキーコング』をはじめとするキャラクターが登場するゲームと、『スペースインベーダー』のようなキャラクターが登場しないゲームとではゲームとしての性質に大きな違いがあるように思われる。前者はゲームの中にストーリーが感じられ、後者は１回のプレイ毎にゲームが完結するような感じがある。このように性質が異なるように感じられる2種類のアーケードビデオゲームだが、これらはアーケードビデオゲームの歴史という1つの枠組みの中で理解できるものなのだろうか。これらはそれぞれが別の起源をもつように思われる。

A. 『ドンキーコング』もループするのでそこまでちゃんとしたストーリーでもない気はしますが、いちおう背景の設定（さらわれた女性を助ける）と展開（ドンキーコングがどんどん逃げる）が明確にあるという点で、ストーリーの側面がよりはっきりあると言えるとは思います。ただそうした要素が『ドンキーコング』という作品にとってどれだけ重要なのかについては考えてみてもいいかもしれません。とくに今回お話しするRPGやADVにおけるストーリーの重視とどこまで同じことが言えるのかは、論点として重要だと思います。

アーケードゲームからの流れとRPG,ADVの流れ両方がファミリーコンピュータの発売によって統合されたとあったが、現在のビデオゲーム文化はVRやソーシャルゲームなど多様な形態を持つように思える。そうした分岐がどのように起きたのか、分岐点となったゲーム作品は何なのか気になった。

A. VRゲームは発想自体は歴史が長いのですが（任天堂のバーチャルボーイなどはわかりやすい例です）、VRデバイスの普及がある程度見込めるようになった以降に本格的に作られるようになった印象です。どちらにせよ、作品先行というよりは技術先行のジャンルだろうと思います。

スライド内の広告写真等からの予想したにすぎないのですが、施設に設置する初期のアーケードゲームは立ってプレイするものが多かったのでしょうか。もしそうであれば、喫茶店に設置する机一体型のゲームや、座って長時間プレイするタイプのゲーム機が増えると遊戯施設の利用者の行動パターンが変わってきそうだと感じました。さらに、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機によってビデオゲームをプレイする環境が多様化する中で、遊戯施設(ゲーセン)に求められる楽しみやゲームの種類もかなり変わっていると思います。

A. おっしゃる通り、Atariのころは基本的に立ってプレイするものだったと思います（アップライト筐体と言います）。その後、インベーダーブームのころにテーブル筐体が生じ、そのさらにあと（1990年前後？）にカクテル筐体という傾斜のついた画面で座ってプレイする形態が生じるという順番のはずです。

テーブル筐体が廃れた理由は、1985年の風営法の改正によってゲームセンターの営業にいろいろな制約ができたせいもあるかもしれません。カクテル筐体に移行したのは、観戦のしやすさなどもあるでしょうね。1992年ごろから『ストリートファイターII』などによって対戦格闘ゲームが流行しはじめますが、はじめテーブル筐体のストIIもあったのが、すべてカクテル筐体に変わっていったという個人的な記憶があります。

筐体の形状によって客の行動がけっこう変わる（あるいは逆にコンテンツの種類とそれへの客のニーズによって適した筐体が変わる）というのは、その通りでしょうね。

自分は生まれたころからビデオゲームがある時代に生まれたので今一つ実感がないのだが、従来からアーケードゲームで遊ぶ文化があった中に、アーケードビデオゲームが登場・流行した際、従来のアーケードゲームとの違いがユーザー側に明確に意識されたのだろうかと少し疑問に感じた。

A. もっともな疑問だと思います。従来の遊戯機械の新しい趣向としてとらえられたのか、まったく別の新しいカテゴリーとしてとらえられたのかは、それこそ受容史研究をしないとわからない話ですね（そしてビデオゲームの草創期に対してそれをやるのはかなり難しいかもしれません。新聞資料くらいしか使えなさそうなので）。

携帯型であるゲーム＆ウオッチの方が先に生まれその後家庭用であるファミコンが生まれたのは意外であった。小型化の順番や社会への浸透具合の順番から考えれば逆ではないかと思った。

A. 1970～1980年代初期に携帯型ゲーム機と据え置き型ゲーム機は同時並行的に多数生じているので（スペックはぜんぜん違いますが）、一般的にどちらが先というのはないのですが、たまたま任天堂がゲーム&ウオッチでひと山当てて、その後ファミコンでも大きな山を当ててビデオゲームプラットフォームの覇権を握ったということだと思います。

余談ですが、1990年代後半から2000年代前半は任天堂が相対的にあまりぱっとしない時期だったのですが（PSが強かった時代）、DSとそれに続くWiiによって復活したという流れもあります。1990年代後半にポケモンによって過去のハードだったゲームボーイの人気が再燃するなど、任天堂は伝統的に携帯型ゲーム機に助けられてきた会社でしょうね。

授業ではファミコンのスペックのみ評価されていたが、コントローラーのデザインが割と重要な要素であるとも思えた。アーケードではハードとソフトがセットなため一つのゲームのために特化した変わったコントローラーでよいが、家庭用ゲーム機では汎用性が求められる。その点、アタリ社の家庭用ゲーム機は大きいジョイスティックであり、アーケードっぽさがあったのに対して、ファミコンは十字キーのコンパクトな横長であったことが大きな差となったのではないだろうか。

A. 汎用性はアーケードの筐体でも実現可能ではあるでしょうが、おっしゃるようにファミコンのコントローラの形状も重要だったというのはその通りだと思います。ファミコンのコントローラがデファクトスタンダードになった結果、現在のゲームパッドにもつながるあのかたちが自然で汎用的に思えるという方向の説明もありそうです。

Spacewar!がたくさんコピーされ各大学に広まったということについて、この時点では情報をシェアし集合知を作っていく体制ができていたのに、ブッシュネルがゲームを商業化したことによってそのような文化や情報共有制度は失われてしまったのではないかと思いました。逆に商業化されることによって、例えば子供にもわかりやすいようなゲームが作られるなどゲームの種類の幅が広がったということも有り得るのだろうか、などと考えました。

A. 商業になれば技術は商売道具なので、共有するというわけにはいかないでしょうね。軍事の場合も同様です。逆に大学は商売をしていないからこそ研究とその知見を共有できるわけです。

加えて、ハッカー文化と言いますが、戦後のアメリカのコンピュータ開発者たちがある程度共有していた心理的傾向があるらしく、そういうのも知の共有にとってプラスだったのだと思います。インターネットカルチャーの根底にある精神なので、いまでもネット上のいろいろなところでその感じに触れることがあるかもしれません。PCゲームの文脈は伝統的にその雰囲気がわりと色濃くあります（2000年代のフリーゲームからインディーゲームまで含め）。逆に初期のアーケードビデオゲームは多くが商売目的なので、まったく逆の雰囲気と言ってもいいかもしれません。

また素朴な疑問ですが、日本で作られたヒット作が『スペースインベーダー』『パックマン』『ドンキーコング』など、英語を元にしたカタカナタイトルばかり（例外は『魔界村』などでしょうか）（これは最近のゲームでもそうかもしれない）ですが、やはり「海外風」の方が人気だったからなのか？と少し考えました。

A. いくつか理由は言えると思いますが、①単純に当時のアーケードビデオゲームはアメリカでも売ることを前提にしていた、②日本語（2バイト文字）の設計と表示が単純に大変、などの事情から、当然の選択だったと思います。

例外はいろいろあって、アーケードなら『与作（きこりの与作）』、PCゲームなら『倉庫番』や『平安京エイリアン』などがあります。PCゲームのとくにアドベンチャーゲームの場合は、日本語じゃないと日本人プレイヤーにとってきついのもあって、早い段階からタイトルも含めて日本語化されている印象です。

とはいえ、「海外風」にするという慣習が（映画その他の文化と比べて）日本のビデオゲーム文化の中にかなり強力にあるのもたしかでしょうね。もともとアメリカから来たカルチャーという意識がずっとあるのかもしれません。その意味ではポピュラー音楽に近いかもしれません。

日本のアーケードゲームの箇所で、子どもがビデオゲームをプレイする文化がどのように定着したのかが気になった。ゲーム＆ウォッチは当初はサラリーマンをターゲットとしていたらしく（Wikipediaより）、定価約6,000円は経済的に保護者の理解がないと小中学生には買うのは難しい金額に思われる。ゲームセンターは風俗的に良くないといった印象があった時期であろうがゲーム自体にはそのようなレッテルは貼られていなかったのか、インベーダーゲームの社会問題化などを考慮しても子どもに買い与えてくれるものなのか少し疑問に思った。>

A. 「目が悪くなる」などのわかりやすいビデオゲームの悪影響論が（とりわけ教育の現場などで）目立ってあらわれてきたのは、もうちょっとあと（ファミコンブームのころ）だと思います。世代的にぎりぎり古くなったゲーム&ウオッチが友だちや親戚の家に転がっていた世代ですが、ちょっとしたおもちゃの一種くらいの位置づけだった気がします。家庭のテレビも独占しないですしね。

ちなみにサラリーマン向けというのは当初の販売戦略がそうだっただけで（「ウオッチ」は時計としても使えるという発想です）、実際のところ、大半は子どもがユーザーだったと思います。

追記分：

日本では、今でこそ上の世代にはゲームは子どもがやるものというイメージを抱いている人々も多いと思うが、もともとは大人もゲームセンターに足を運んで『スペースインベーダー』に興じていたという事実は見過ごされがちかもしれないと感じた。当時を知らない世代としては、ファミコンの社会に与えたインパクトがインベーダーのそれを上回ったため、イメージが上書きされているのかもしれない、などと思った。

A. その通りでしょうね。歴史的に見れば、大まかにユースカルチャーではあるでしょうが、そこまで子どものカルチャーというわけではないです。

日本で大ヒットした『スペースインベーダー』がカフェなどに取り入れられていた時期は、ゲームは大人の文化だったと講義では理解しました。しかし、任天堂のゲーム＆ウォッチの普及でゲームが子供の文化になったのはなぜか疑問に思いました。当初はゲームがある種の嗜好品的なステータス（ギャンブルやたばこ、酒など）と同じような扱いを受けていたように見えましたが、それが子供にまで波及して、結果的に「子供の文化」といわれるようになるのはどのような経緯があったのでしょうか。今でこそE-sportという形でゲームは大人がやってもおかしくない、という認識が広まりつつあると思いますが（日本ではいまだに大人がゲームをやっていると顰蹙を買うような、オタク文化的な扱いを受けていそうですが…）、アメリカではゲーム＆ウォッチが流行った時期に同じようにゲームが「子供の文化」になったのでしょうか。

A. アメリカでも家庭用ゲーム機は当初から主に子ども向けだったとは思います（それはなぜかと聞かれると難しいですが…）。ゲーム&ウオッチについては少し上の回答でも書きましたが、おもちゃの延長という扱いでしょうね。ただアーケードゲームはもちろん、PCゲームも基本的に一貫して年齢層高めのカルチャーなので、「子どもの文化」扱いするというのは単純におもちゃ屋に置かれるタイプのビデオゲームしか見えていない視野の狭い人による言説が広まっただけだと思います（おそらくファミコン以降です）。

「子どもの文化」という認識に加えて（あるいはその言い方に含意されるかたちで）、「程度の低い文化」という認識もある（あった）かもしれませんね。

当初ビデオゲームの供給を担ったのは日本では任天堂といえるだろうが、誰の目にも明らかなビデオゲーム文化の波に乗ろうと複数の企業が参入したわけではないようなのはなぜなのか、それともそれが失敗していただけで歴史記述として注目されてこなかっただけなのかが気になった。

A. 同時代の競合他社はたくさんありますし、任天堂が強すぎただけで、それらが必ずしも「失敗」していたわけではないです。その時期にそれなりにビデオゲームに接していた人は知っていると思いますし、ビデオゲームの歴史に詳しい人も知っているでしょうが、一般にはあまり知られていないかもしれませんね（歴史あるあるですが）。

当初のSpacewar!のようなゲームは、研究室のコンピュータでしか遊べないような、高価な環境を要するものであり、以降のアーケードビデオゲームも一般家庭が導入するには金額にとても無理があるものだっただろうと思う。これに対して、ゲーム＆ウォッチが唐突に登場して小型化・低価格化を成功させたかのように見えるのだが、なぜ任天堂にゲーム＆ウォッチを登場させることができたのだろうか。何か技術的な革新等があったのか気になった。

A. ゲーム&ウオッチは技術的にはポータブルな電卓のようなものなので、本格的なコンピュータ（とくにメインフレームやPCなどの汎用コンピュータ）とは比較にならないですね（もちろん電卓の発展史も別にあるのですが）。「LSIゲーム」や「LCDゲーム」などと言いますが、ゲーム&ウオッチ以前から同種のおもちゃはいくつか出ています。

むしろ、それなりのスペックを持つファミコンをかなり安く作れたところが任天堂のイノベーションだったんだろうと思います。なぜ安くできたのかについては、上村他『ファミコンとその時代』という本に開発者の当事者目線から書いてあります。

インベーダーハウスは初めて知ったが、テーブルにもゲーム機にもなるというのは画期的だと感じた。現代でも人気が出そうなのに何故消えていったのだろうと疑問に思った。ボンバーマンとか対戦できたら面白そうな気がする。オンラインで手軽に人と対戦できるようになったからなのだろうか。

A. テーブル筐体は個人的に好きな形ですしおしゃれに見えるので、もっとあっていいとは思います。画面と目線の角度がどうしても大きくなるので、見づらいということかもしれません。

また、今回紹介されたゲームは画面を縦に使うものが多いように感じた。横スクロールで大ヒットしたという点でもマリオブラザーズは多くのゲームに影響を与えたのかもしれない。

A. アーケードゲームの画面には横長や正方形もありますが、テレビを使う家庭用ゲーム機は横長固定なので、その点で横スクロール向きだったというのはあるかもしれませんね。

〔…〕ルールを増やしたり、難易度を高めたりする傾向が見えましたが、昔にはレベルデザインという概念があったのでしょうか。また、「スコア制」を使っているゲームが多いですが、何か理由があるのでしょうか。やはり、プレイヤー間のスコアバトルを予想し、競争するという心理を利用しているのでしょうか。

（用語が少し分からなかったのですが、モニターが付いているものが「アーケード（ビデオ）ゲーム」、付いていないものが「ペニーアーケード」と捉えて大丈夫なのでしょうか。）

A. 「レベルデザイン」という概念があるかどうかは「レベル（ステージ、面）」という概念があるかどうかによると思います。『ドンキーコング』くらいになれば明白にありますね。スコア制はおっしゃるように単純に競争やチャレンジのモチベーションを作るためだと思います（それこそピンボールマシンなどに直接由来する慣習かもしれません）。

用語の意味は以下の通りです。これらは相互排他的な概念ではないです（ペニーアーケードはカテゴリーが違うという点で他の二者とは違いますが）。

ペニーアーケード：ゲームをするための商業施設を指す（「ゲームセンター」に近い意味）。ビデオゲーム文化以前からある。

アーケードゲーム：もともとは、ペニーアーケードに置かれていた遊戯機械を指す。その後、アーケードビデオゲームを含めて指すようになった。日本語だとアーケードビデオゲームだけを指す傾向にある。

アメリカのペニーアーケードと日本の遊技場がどういった関係にあるのか気になった。ペニーアーケードがいつからあったのかを確認することは出来なかったが、1960年代の時点で普及していたことから第二次世界大戦後、日本がアメリカの占領下にあった時代にはすでにあったとしてもおかしくない。戦後の日本に輸入されたアメリカ文化にアーケードゲーム、ペニーアーケードも含まれていたのか、別の系統で日本独自の遊技場が存在したのか、という疑問が授業を通して残った。

A. 川﨑寧生さんの博士論文（pp. 21-24）にそのあたりのことが多少書かれています。

これによると、おっしゃるように米軍からの文化の移入（機械の払い下げなど）が少なからずあったようです。それとは別に日本独自の文脈として、デパートの「屋上遊園地」という文化の形態が戦前からあるみたいですね。屋上遊園地はいまはほぼなくなっていると思いますが、記憶のかぎりでは平成初期くらいまでは普通にあったと思います。あとはボウリング場（これは日本独自ではないかもしれません）とか温泉旅館の遊戯スペースとかですね。

ゲーム&ウオッチによって十字キーが広まったということだったが、つまりそれ以前はアーケードビデオゲームに特有のUIが存在せず、それまでの他のアーケードゲームと共通のUIが用いられていたことだと思う。アーケードゲームの中の1つとして人気になってアーケードビデオゲームの文化が確立されたなら、元のアーケードゲームと共通する特徴はどれくらいあるのだろうか？

A. 十字キーの登場以前に、ビデオゲームのコントローラの様式はそれなりに確立しています（統一はされていませんが）。左右に動かせるバー、2～3個程度のボタンなどです。ジョイスティックを採用している家庭用ゲーム機もけっこうありますが、これもアーケードビデオゲームから来たものです。

従来のアーケードゲームとアーケードビデオゲームの連続性は、ある程度までは言えると思います。ピンボールマシンのインターフェイスはアーケードビデオゲームにけっこう近い面がありますし（両者でガチャガチャやるなど）、射的にかなり近い一人称的な射撃ビデオゲームも早い段階からあったりします。

『computer space』や『pong』などのアメリカ発のアーケードゲームに影響を受け『スペースインベーダー』や『ゼビウス』が日本で開発されていったのは理解できるが『パックマン』や『ドンキーコング』などがどういう流れの中で生まれていったのかが気になる。明らかに『スペースインベーダー/ゼビウス』と『パックマン/ドンキーコング』の二つの間には大きな溝があるように感じます。

『ドンキーコング』についても、ジャンプを取り入れたのは『ドンキーコング』が最初だとされていますが、梯子を使うクラインミングアクション（広義のplatformer）自体はすでにいくつかあります。

『ドンキーコング』の数か月後に『ジャンプバグ』というジャンプアクションも出ているので（これは横スクロールシューティングにジャンプ要素を足したみたいなものなので『ドンキーコング』とはだいぶ方向が違いますが）、そこまで独特のアイデアではなかったのかもしれません。

ただどちらの作品も、無から出てきたものではないにせよ、（『スペースインベーダー』もそうですが）かなりクリエイティブで新しい作品だったということは言ってよい気がします。

ゲームの持つ二つの側面が歴史のゆえだと考えればすっきりするとのことだったが、逆に言えばそれらが統合される以前においてはアーケード系とRPG系のゲームたちは「ビデオゲーム」という統一した文化として見られていなかったということでよいのか。

A. 当時の雑誌などで受容史を調べないと正確なところはわからないですが、そう言っていいように思いますね。純粋に技術的な観点からは、コンピュータ＋視覚ディスプレイを使った娯楽という点で早い時期から同種のカテゴリーとして認識されていたとは思いますが、明確に同じ文化（受容者層も含め）と見なされるようになったのは80年代の半ばではないかと思います。

これからまた後の授業で出てくるのだろうと思っていますが、いわゆる課金ゲーというものはどういった需要の中で生まれてきたものなのでしょうか。近年のクソゲーといわれるものだと、課金をしないと全然強いユーザーに対抗できなくて面白くない、みたいな意見はよくあることだと思いますが、そのあたりについても教えていただきたいです。

A. 最初に歴史の話を少ししているだけで歴史の授業ではないので、あとの授業ではとくに出てきません…。課金ゲームはフリーミアム（基本無料、free to play）とセットで出てきた収益モデルです。主流になったのは、主に2000年代中盤くらいのオンラインゲームからでしょうね。その後、モバゲーやGREEなどの携帯ゲーム向けのカジュアルなゲームで採用されて、ソシャゲやスマホゲーム（アプリ）につながるという流れだと思います。「需要」があったかどうかはわかりませんが、フリーミアムはカジュアル層を取り込むのに適した方法だったのだろうとは思います。

Spacewar!がどんどん色々な大学などに焼き増しされていく中で、製作者の権利（言い方が正しいのかわかりませんが、著作権的な）はあまり重要視されなかったというお話がありましたが、時代が少し下ってから、ブロック崩しなど、アメリカのゲームを基として日本のゲームに輸入されたようなものに関しても同様に特にお咎めはなかったのでしょうか。アメリカは権利にうるさいイメージがあるので気になりました。

ただ、以下の動画（1979年放映の『ルポルタージュにっぽん』のインベーダー特集）を見るとわかりますが、当時からあからさまな模倣は問題視されていたのだと思います。

動画中の当時の任天堂の山内社長の「遊び方にパテントはない〔つまりゲームはパクリ放題なのである〕」というせりふがよく知られています（8:08～）。任天堂は『ドンキーコング』のヒット以降、知的財産権にうるさい会社になっていくので、その皮肉としてよく引き合いに出されるものです。

任天堂のインベーダーゲーム『Space Fever』（1979）

テレビや動画などを見ていて、ファミコンを懐かしむという行為をするのは大体男性というイメージがあったので、女性にどれだけファミコンが普及していたのかが気になった。任天堂の公式サイトでファミコンの思い出を語るといった場所があったのでいくつかコメントを読んだが、閲覧した30件のコメントのうち女性のものは6件で、そのうち4人がゲーム機の購入もしくは使用を制限されていたという「思い出」について語っていた。講義の冒頭でどのような社会的地位の人間に普及したかの方が意義深い研究になりそうということを仰っていたがまさに男女の普及率の違いは面白い研究対象になりそうだと思われる。

サイトURL（同様のコメントを掲載していた三つのうち一つ）

★A. いろいろな調査の中で、初期のビデオゲーム文化は男性中心の文化だった（あるいはいまだにそうである）とは言われます（とくにアメリカはそうです）。日本だと、家庭用ゲーム機の世界はまだ偏りが少ないほうだったと思いますが、PCゲームやアーケードゲームの文化は、より男性中心的かもしれません。あとはジャンルごとにユーザーのジェンダーの割合が違うというのもよく言われますね（パズルゲームは女性の比率が高いなど）。

ユーザー層とは別の話ですが、ビデオゲームは、女性表象（あるいはジェンダー表象全般）に一定の偏りと問題が長らくある文化でもあります（最近それを意識的に是正する動きが顕著です）。

加えて、開発者は圧倒的に男性の割合が多いと言われていますね。とはいえ、これはIT業界一般のジェンダーバランスとの比較がないと意味のない数字かもしれません。

ウィキペディア英語版ですが、以下ではそのへんのことがよくまとめられています。

少し古いですが、別の大学での授業資料も共有しておきます。

理論的な疑問・コメント

アーケードゲームとビデオゲームの違いは定義によって異なるとのことでしたが、例えばどのように定義したらどのように区別できるのでしょうか？

例えば、ゲームセンターに置いてあるメダルゲームのことを考える場合、ボタンが3つならんでいて、ボタンで手を選んでじゃんけんをして勝ったらメダルが出てくる単純なものを考えると、それは電子的に統制されているとはいえビデオゲームとは言えない気がします。しかし、それの複雑さが上がり、モニターに映像が映って、映像の中のキャラクターとじゃんけんゲームをするようなものであったとしたら、それはビデオゲームに入る気がします。ゲームセンターの中には、シューティングゲームで敵を撃ち落としてメダルを獲得するメダルゲームもありますし、スーパーマリオのメダルゲームもあります。メダルゲームのゲーム性は、もはやメダルを獲得する目的に付随するものには収まらないものになっていると思います。(そもそも、メダルを獲得したいか、ゲームをしたいかのどちらがメインかでゲームか否かが決まるわけでもないと思いますが)

論点がいろいろずれてしまいましたが、このあたりが気になりました。

A. 技術的な面で定義するとすれば、モニタ（視覚ディスプレイ）を通した映像表現をどこまで重視しているか、コンピュータプログラムによる内部処理が当のコンテンツにとってどこまで本質的か、操作系の形状はどうであるか、あたりで一定の線引き（および「ビデオゲームっぽさ」の特徴づけ）は可能だと思います。これらの条件でじゃんけんの2つのケースのあいだにうまく線が引けるかどうかは微妙ですが。

個人的には、明らかにビデオゲームと言える他のコンテンツとどこまで同種のものと見なせるか（どの点でどこまで類似しているか）、という程度の問題として考えたほうがいいかなと思います。

冷戦期における受容のあり方が西と東で全く異なっていたり、computer spaceが不発に終わったりと、ビデオゲームは人々がどう受容するのかが発展に大きく関わっていることがわかった。考えてみれば、それはビデオゲームに限らず、文化全般においてそうであると思う。模倣により、どんどんと大衆に広まってゆき、権利などが次第に主張されるようになる、という流れも文化としてビデオゲームが存在している証のように感じられた。ひとつ、ほかの文化と大きく異なっていると感じた点は、発展のありようである。アートや文学などと比べて、ビデオゲームの根幹にはテクノロジーがあり、テクノロジーは時代とともに前進する特徴があるために、目に見えて鑑賞者（操作する人）の自由度が時代とともにあがっているように感じた。全くアートの文脈を知らない人は、20年前の作品と今の作品をパッと見分けられないかもしれないが、ビデオゲームにおいてはそれが容易なのではないか、と思った。

A. ご指摘の点はよく主張されることですね。個人的な見解では、ビデオゲーム文化には技術至上的な価値観が作り手にも受け手にもかなり深く浸透していて、それがビデオゲームとその表現の可能性についての理解と発想を妨げている面が少なからずあるのではないかと思っています（最近はそれでもインディーゲームの興隆やレトロゲーム実況などによってだいぶましになりましたが）。テクノロジーがメディアとコンテンツのあり方をかなり牽引・制約するタイプの文化なのはたしかですが、その面を強調しすぎると見えなくなるものも多いということです。

追記分：

〔…〕当時にしては複雑な操作を必要とするComputer spaceは不人気で、一方単純な操作のPONGはヒットしたということの理由は、単に操作が単純か否かということなのか疑問に思いました。現代のおいて複雑な操作のゲームも流行しているということを考えると、人間が複雑なゲームより簡単なゲームを好むという本能のようなものは存在しないと言えるのではないでしょうか。そこで、当時の人々が複雑なゲームの操作に慣れていなかったからという単純な理由の他に、当時のパソコンのスペック的な物理的制約で単純な操作のゲームの方が人々の手の届く範囲に普及しやすかったからという理由、または、ゲームの操作の複雑性に関わらず内容的な面白さによるという理由などを考えました。

A. 「本能」はないでしょうが、プレイヤーのリテラシーの問題はあるでしょうね。ビデオゲーム（もっと言うとコンピュータとのインタラクション）というものがほぼなかった時代と、ビデオゲームやPCやスマホが広まっている現代とではだいぶ話が違うと思います。操作の簡単さだけでなく、ゲームの内容も大事だろうというのはその通りですね。

次回の講義を聴けばわかるのかもしれないが、なぜ現在のビデオゲームの起源が上記の二つの系統に分けられるのか気になった。というより「アーケードゲーム」と「RPG/ADV」では、レイヤーがズレている気がして、その二つが並列して扱われているのに少し違和感を覚えた。「アーケードゲーム」はゲームの形態の一つなのに、「RPG/ADV」はゲーム内容の種類の一つで、ここのレイヤーの違いは何か問題を生まないのだろうか。

「アーケードゲーム」という名称は、そのゲームの稼働形態（硬化を投入してプレイする）に注目した分類で、「ロールプレイングゲーム」は具体的なゲームの内容（キャラクターを演じる）に注目した分類ですが、ビデオゲームを二つに大別する際に、どうしてこのような次元の異なる非対称なラベルが用いられるのか不思議に思いました。稼働形態か、ゲーム内容かどちらかに基準を置いて分類する方が自然に思われます。

★A. ビデオゲームジャンルの分類をしたいのであればおっしゃる通りなのですが、この授業では歴史的展開を考える上で「文化」や「文化の系統」の話をするためにその2つのラベルを持ち出しているだけです。なので、その意味で両者を同じ種類のカテゴリーとして並置しています（ゲームジャンルの分類名とまぎらわしいというご指摘であればその通りですが、他に適切な言いようがありません。たとえばRPG/ADVのほうを「PCゲーム」と言ってしまうのも、複数の点でミスリーディングなので）。