第6回のQ&A

一般的な質問

ルドロジストの主張の説明で「ビデオゲームをゲームの媒体として研究する」というときの後者の「ゲーム」とは、第五回の質問への回答中の区別からいうと、表現形式をさすのではなくある特定の活動をさす言葉であると考えてよろしいでしょうか。

A. その通りです。説明不足だったかもしれません。

ビデオゲームとは少し話が逸れてしまうが、先生がナラトロジーという語についてわかりづらい、誤解を招きやすいというような趣旨のことをおっしゃっていて思ったのだが、学術的な場において、分かりづらい、本質的でない名称を変えるのにはどれくらいの労力や時間がかかるものなのだろうか。また、そこにはどういったプロセスが伴うのだろうか。

A. 具体的な作業としては先行する用語法（言葉遣い）を論文などで逐一批判していくということになりますが、学術的かどうかにかかわらず、一度ある程度広まってしまった言葉遣いに対してそれは誤用やミスリーディングだからやめろと言って修正するのは一般に非常に難しいです（成功するケースもあるでしょうが）。

ビデオゲームに対して使われる「ナラティブ」という語の特定の用語法についてそれをやろうとしたことがありますが、いろいろな意味で難しかったです。参考：

FPSの話で、例に出されたゲームたちが「ルールは大体同じで、フィクションが異なる」と言われていて、つまりFPSというジャンル名はルールに付けられる名称なのだと考えた。一方で、例えばホラーゲームというジャンル名はフィクションに付けられる名称だと言うことができる。そう考えると、だいたいのビデオゲームにはルールかフィクションに注目したジャンル名が付けられており、ビデオゲームにとってこのふたつが非常に重要な（本質的な？）要素なのだと思えた。

A. 分類の観点として両方あるのはその通りですね。数としては、ルールの観点で分類されているゲームジャンルが大半だとは思います。

初期FPSゲームの例で紹介された、敵がナチス風のFPSを見て思ったのですが、ゲームがプロパガンダとして国家に利用されたことはあったのでしょうか。

ＦＰＳはいつごろから天井が描写されるようになったのか気になりました。というか、どうして初期のＦＰＳ（Wolfstein等）は壁を描写しなかったのでしょうか。

制度関係

①コンピュータプログラムや②表象内容、③制度的事実のような存在しているともいないとも言えるようなことに関して、少なくともこの文脈では虚構的だと言ってない。

①〜③に関しては確かに存在していないと言えなくも無いと思うが、仮に存在しないにしても事実として現実的と言えるのではないか、と思いました。コンピュータプログラムがうまくいっているかどうかや記号の表象内容が文脈にあっているかどうかは現実世界が事実どうなっているかを見れば判断できると思います。また、虚構新聞を見るときはそれをフィクションとして見ることが重要であり、だから受け手の想像の中で面白いのであって、プログラムや表象内容や制度はあくまで事実として受け入れられることで意味がある、ないし便利な概念として受け入れられるのではないかと感じました。

A. 「存在しないにしても事実として現実的と言えるのではないか」という言い方には問題があるとは思いますが（この場合の"real"は「実際にある」という意味なので）、おっしゃることはわかりますし、個人的にはおおむね同じ立場です。

言いたいことを的確に言うために理論的概念があるわけなので、言い方が難しいと感じた場合はどういう概念が必要かを考えるとよいです。たいていはすでに誰かが作っているので、いろいろ勉強すると求めている概念が得られることが多いです。

今回の授業で特に興味を持ったのは、制度の存在論である。制度的事実は、それ自体としてはもともと価値があるものではないが、制度によって意味が与えられるものという認識で良いのだろうか。授業では貨幣の話が出てきていたため、ビデオゲーム内の貨幣も制度的事実であるのかと想像がつくが、レベルを上げるための経験値も制度的事実と言っていいのだろうか。また、制度的事実を虚構的なものとして捉えるか、現実的なものとして捉えるかはその人次第であるが、ユールは現実的なものとして捉えているということだろうか。

A. 貨幣の例がミスリーディングだったかもしれませんが、「価値」の問題ではないです。「制度によって意味が与えられたもの」という理解でおおむね大丈夫です。個人的には、ビデオゲーム作品の内容（の中のルールの側面）の多くは制度的事実どころか文字通りの事実（物理的事実）だと言っていいという立場をとっていますが、議論の余地はかなりあります。ユールもビデオゲームについてはどちらかというと物理的な意味で「現実的」と言っているでしょうね。

ルールとフィクションの区別の話で、制度的事実を虚構と見なすかどうかという論点がありましたが、現行の社会システムの多くは制度的事実と言えるのではないかと感じました。制度的事実を虚構と見なす立場では、純粋な物理的動作のみを事実と捉えるのでしょうか。

A. 制度を虚構的なものと考える立場だと、物理的な事柄だけが（もう少し広くとれば自然科学で記述される事柄だけが）本当に存在するものだということになるでしょうね。そういう立場は「物理主義」や「自然主義」と呼ばれます。

ルドロジー対ナラトロジー関係

一般にビデオゲームの研究といえば、個々のビデオゲームを論じるのではなく、ビデオゲームというものを論じるのが主眼なのか。

A. いろいろありますが、初期は表現形式としてのビデオゲームの特性を考える研究が主流でした。個別の作品論は作品批評以上のものにならなかったりするのであまりないものの（逆に文学研究や美術史研究で個別の作品論があたりまえのように成り立っているのが不思議です）あるにはあります。それ以外にもいろいろなアプローチがあります。

単に物語の媒介としてゲームを理解するのなら、ナラトロジストがゲームを研究対象にする必然性はあまりないような気がしました。その点でルドロジストの批判は一定の説得力をもつと思います。

A. ここで批判されている「ナラトロジスト」も一応そのメディアに特有の物語表現のあり方を問題にしているので、その点はあまり批判のポイントになっていないです。つまり「ナラトロジスト」は、たんにビデオゲームで描かれているストーリーを論じるみたいなことをしていたわけではないです（実際にはその手の研究はいまも昔もけっこうあったりしますが、それはここでの「ナラトロジスト」の話ではないです）。

ゲームスタディーズの初期研究がもっぱら物語の側面を取り上げていたという話が意外でした。というのもメディア研究というと、新聞なら新聞という形態に、映画ならその内容ではなく映画という形態に注目するというように、第一段階でそのメディア媒体固有の側面を探るイメージだったからです。

A. ここで問題になっている「物語」というのは描かれるストーリーのことではなく、物語表現のあり方のことです。その表現のあり方の独特さを問題にしているわけなので、メディアの固有性の研究ではあります。

また、ビデオゲームやデジタルメディアなどを「物語の新しい形」みたいに研究したり賞賛したりするタイプの研究がナラトロジーと仰っていましたが、どういうふうに研究していたのかが疑問でした。アーケードゲーム系統の（例えば「スペースインベーダー」とか）ものも、すべて「物語の新しい形」とみなしていたのでしょうか。確かに「スペースインベーダー」とかなら、「宇宙からの侵略者」みたいなイメージストーリーはできると思うのですが、そのような種類の研究であったと理解すればいいでしょうか。これも疑問になりました。

初期のゲームスタディーズにおいてはナラトロジーが先行していたとのことでしたが、前回までのビデオゲーム史を見る限り、明確な「物語」を組み込んだゲーム（例えば「ドラクエ」のようなRPG）は、ある程度ビデオゲームの基盤が確立した時期に出現したように見えます。また、アーケードゲームを源流とするゲームには物語性があまりないというお話もありました。そのように明確な「物語」が存在するゲームが圧倒的多数とは言えなかっただろう時代に、どうして「物語」に着目したナラトロジー的見方が先行したのかが気になりました。

初期のゲームスタディーズにおいてビデオゲームを物語の媒体としてとらえるナラトロジーとビデオゲームをゲームの媒体としてとらえるルドロジーで対立が起こった。初期のゲームには物語性が薄かったにもかかわらずナラトロジー的が先行研究であったのは違和感を感じた。またそういった意味でもルドロジーの方がナラトロジーよりも包括する範囲が広いような気がした。

A. 「ナラトロジスト」と呼ばれる人々の研究が出てきたのは1990年代半ばであって、ビデオゲームの歴史で言えばもはや初期ではないです。年代に注意を向けるようにしてください。

「ルドロジー対ナラトロジー」の話で、フラスカらはそれまでの先行研究がビデオゲームの物語媒体的側面しか論じていないことを批判したとありましたが、逆に言えば1999年までにはゲームは小説などと似た役割を持つ「物語媒体」として捉えられ始めていたと考えて良いでしょうか。

A. 局所的な分野での研究上の動向と、ある文化的なカテゴリーに対する一般的な理解のあり方は別のことなので、そこをつなげないほうがいいとは思いますが、ADVやRPGというジャンルが成立している以上、ビデオゲームにある種の独特な物語媒体としての側面があるという認識は遅くとも1980年代初頭からすでにあると思います。

既存のニューメディア論者が、ビデオゲームを物語の媒体という観点から研究をしたのはなぜでしょうか？具体的にはビデオゲームを物語の媒体としか捉えられなかったのか、それとも様々な解釈があったなかであえて「ゲームの媒体」として捉えたのでしょうか？

A. 実際の理由はわかりませんが、どちらかと言えば前者でしょうね（後者の選択肢の「ゲームの媒体」のところは「物語の媒体」の誤記として読みました）。

19枚目のスライドに、ナラトロジーは「理論の帝国主義」「植民地化」であると書いてありましたが、これはどのような意味でしょうか。なぜルドロジリストがそこまでナラトロジストを見下したのかあまり腑に落ちませんでした。

★A. 「帝国主義」「植民地化」は自治や自立を侵犯しているというニュアンスでしょうね。具体的には「映画研究者や文学研究者が、映画や文学を扱うための理論をビデオゲームに無理に適用することで、ビデオゲームの特性をないがしろにしている」といった意味合いだと思います。

ちなみに「見下した」わけではなく、下からの批判というイメージです。「ナラトロジスト」と呼ばれていたほうが年長で研究者としては影響力があり、ルドロジストのほうが若い研究者たち（リアルタイムでビデオゲームとともに育った世代）という感じです。「自分たちが大事にしている文化に対して、よくわかっていなさそうな年長者がポイントのずれたことを言っている（そしてそれをありがたがっている人たちがいる）ことに対するネガティブな反応」として想像すると、ルドロジストの動機が想像しやすいかと思います。

ナラトロジーはルドロジストたちによって後出し的に称された立場であるため、ナラトロジーも「規範的な問題」に含めてしまっていいのか少し疑問に感じた。ルドロジストが「ゲーム媒体としての側面に注目す"べき"」と主張したのはわかるが、ナラトロジストは単純にゲーム媒体としての側面を見落としていて、そこに「物語的側面に注目す"べき"」というニュアンスがなかった可能性もあるのではないかと思った（ナラトロジーの立場をとる当時の論文などを読んでみないと分からないが）。外野によって誇張されたという話も関係すると思うが、両者は対立構造として非対称だなという印象を受けた。

A. 非対称というのはその通りで、「ナラトロジスト」と呼ばれた人々自身には規範的な意識はなかったと思います。ニュートラルに言えば、「ナラトロジスト」はビデオゲームを論じる視野が狭かったくらいの話なのですが、ルドロジストから見れば、不当に観点を限定している（ビデオゲームの重要な側面を完全に無視している）ように思えたということでしょうね。

しかし、明確な派閥を持たないルドロジー派とナラトロジー派の論争が、どのような結論を持って両者ともに納得し、この論争が終結したのかという疑問点が残った。

A. 「ナラトロジスト」とされた側が「自分たちはビデオゲームを物語媒体として研究すべきなどといった規範的主張はしていない」というごく真っ当なことを言って、ルドロジストたちも「外野がやいやい言っているだけで自分たちは物語やフィクションがビデオゲームにとって重要でないなどとは言っていない」というこれまた真っ当なことを言って盛り下がったかたちです。

この蔑称は、ルドロジスト側が用いたものなのでしょうか、それとも外野がつけたものなのでしょうか。「外野が煽った」とおっしゃるからには外野が「なんだ、これまでのナラトロジスト側の意見はクソじゃないか」みたいに蔑視していた、ということかなと思いましたが、しかしもし仮にルドロジスト側が用いたなら、実際にかなり手ひどい批判を浴びせたのではないかとも考えられます。手ひどく批判を浴びせておいて「実際にあまり対立した印象はない」としらばっくれるようなのもいかがなものかと思ったので、この辺りは疑問になりました。

「ルドロジー対ナラトロジー」について、ビデオゲームをゲーム媒体としてみるか物語媒体としてみるか、の二元論になってしまっているのが、いかにも対立を煽られていた結果のような印象を受けた。改めてゲーム媒体としての側面の重要性が認知されたことは、その理解を進めるうえで良いことだったことかもしれないが、ビデオゲーム自体はどちらの側面も持つのだから、二つを対立させるような語り方はあまり研究を進めるのに資さないのではないかと思った。

A. ニュートラルに見ればその通りですね。

授業資料内には「これは、ビデオゲームがどのようなものであるか（あるいはどのようなものであったか）という論点とはひとまず切り離したほうがよい。」とあったが、「ビデオゲームにはルールとフィクションという2つの特徴があったからルドロジーとナラトロジーという2つの研究上の立場が生まれた」と考えるのは不適切なのでしょうか。ルール的側面を中心に研究すればルドロジー的な立場に、フィクション的側面を中心にすればナラトロジー的な立場になるような気がします。

また、ルドロジストの象徴するようにビデオゲームの大きな特徴としてゲームであることが挙げられるが、そのビデオゲームを理解するにあたりスポーツやパズルなどの伝統的なゲームから類推したり、それらを大局的に比較する動きは存在するのでしょうか？

A. そういう「動きが存在する」かどうか以前に、そもそもルドロジストがそういう立場です。たとえば、ユールの『ハーフリアル』の前半（3章まで）はおおむねそういう内容です。

ある対象をどのように研究「すべき」かということは、つまり、ある対象はどうあるべきかという問題の一部ですか？

ルドロジーとナラトロジーの話の中で、ある対象をどのように研究すべきか（規範的問題）とそれが実際にどうであるか（記述的問題）は分けて考えるべきであるとのことだった。ここで規範的な主張は無自覚にやりがちなので気をつけるべきだが、自覚的にやる分にはありともされていたが、研究方法について記述的に考えるということがどういうイメージなのかが浮かばなかった。研究の手法などについては常に自覚的であるべきということでいいのか。

そこで疑問となったのは、この論争というものがあってないようだったという共通理解が現在あるとはいえ、今後ビデオゲームに関する論文を書く際に「ゲームスタディーズ」という言葉をどの程度の前提を持って用いるべきかということです。例えば「この研究はゲームスタディーズの系譜に則り、このような方法論を用いる」と言ったような時に、「フィクションは用いない」「物語は重視しない」というような文脈が入ってしまうことはないのか、ということは気になりました。言い方を工夫すれば良いだけのような気もしますが…。

A. ルドロジストが主導したというのは初期（2000年代前半まで）の話なので、いまはとくに気にしなくていいです。むしろ、一般のプレイヤーも含めて多くの人がビデオゲームのフィクションとしての側面を自明のように重視しているでしょうから、それとの対比でルール的な面を強調してもしすぎることはないと思います。

昨今若者の間で流行っているゲーム（特にスマホアプリゲーム）を語る上では物語としてのゲームとゲームとしてのゲームの側面に加えてキャラクター論の視点が必要だと思うのですが、その観点から見た研究などはあるのでしょうか。

A. おっしゃる意味でのキャラクターは、基本的にストーリーと同様にフィクションの側面に含まれます。「キャラクター論」ということで具体的にどういうのを想定されているのかわからないのでお答えしづらいです（有象無象を含めればどんな研究でもあるとは思いますが）。

ルールとフィクション／記号の理論関係

ビデオゲームの不自然さを説明する「ルールとフィクションの食い違い」とは、カイヨワの指摘に見られるようなルールとフィクションの相容れなさと理解してよいのでしょうか。

A. やや違います。カイヨワが言っていたのは原理的なレベルでの両立しづらさの話で、ここで問題にしている「食い違い」は個々の作品において実際に生じている（感じられる）不一致です。とはいえ、無関係ではないかもしれません（たとえば、原理的なレベルで両立しづらいので実際に不一致が生まれやすい、という関係があるかもしれません）。

見えない壁という話で思ったのが、VRゲームでのゲームと現実とのリンクである。自分が現実空間で動く事でゲーム世界のキャラクターが動くタイプのVRゲームの場合、たとえゲーム空間に広大な世界が広がっていても、プレイヤーがいる現実空間に何か物があったり壁があったりすると、そこに阻まれてしまうということが生じる。こういった事例もルールとフィクションの食い違いと言えるのだろうか。

★A. 考えたことがなかったですが、普通のビデオゲームで言えば、コントローラーのスティックがすごく固くなっていて動かしづらいとかに近いんじゃないでしょうか。ルールやフィクションがどうこういう以前の入力インターフェイスレベルでの問題ではないかということです。

最近思ったビデオゲームにおける不自然さの一つにビデオゲームの世界では全員が同じ言語を話しているという現象がある。世界を冒険するRPGゲームなら、行く先々で違う言語を話しているはずではないか…と疑問に思った。キャラクターが話す内容がゲームの進行上重要ならばそれはゲームのルールを表しているとも言えそうだし（例：謎解きのヒントなど）、雰囲気作りのためのあいさつや他愛のない会話なら虚構世界の演出とも言えそうだ。

A. どこでも同じ言葉が使われていて不自然というのはとくにビデオゲームに限った話ではなく、ある種のフィクションに共通する特徴だと思います。

記号と内容の話、建築にも当てはまりそう。

建築家が作品として作った構造物の中に含まれるオブジェは、作品の世界観を構成する記号（虚構世界に意味を持たせるもの）であると同時に、その構造物の機能を成り立たせる記号（ゲームメカニクスに意味を持たせるもの）でもある。

例えば、北野高校の校舎の、教室のドアの窓、「丸い必要ないやろ！」と思っていたけれど、校舎全体を船を模した作品と捉えるための記号としての役割があったんだなと思った。丸い窓の丸い要素は虚構世界に、窓であるという要素はゲームメカニクスに寄与していると言えるだろう。

ゲームの画面があらわす二つの機能があり、片方ずつしか表さない場合と両方表す場合があるということだが、スライドの中で①②③の三つで示されている区別は慣習とゲームの実践という二つの段階で行われ、たとえば「実は雲に触れたらマリオが死ぬ」というようなギミックがあった場合に最初の慣習が裏切られて画面上の雲が①→②にプレイヤーの意識の上で移行するというふうに考えたが、この理解で問題ないだろうか。

★A. （今回のスライドの最後に説明を入れました。）記号と内容の結びつきが生じる実際のプロセスがそういう感じになることはあるでしょうね（それ以外にもいろいろなあり方があると思いますが）。『ビデオゲームの美学』の中で少しだけそのあたりの話をしているので、スクショを貼っておきます（p. 216）。

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同じ理屈で音声部分も説明出来るかと考えたが、BGMについてはもう少し別の説明が必要かも知れないと考えた。（ゲームだけの問題ではないが。）

A. ビデオゲームであれ映画であれなんであれ、視覚表現や音声表現は記号としての働きしか持たないわけではないので、記号の理論で説明できない面があるのは当然ですね。おそらく「BGMについてはもう少し別の説明が必要」と感じられる理由は、一般に音楽が（少なくともいわゆるサウンドエフェクトよりは）記号としての働きをあまり持たないからかなと思います（もちろん、映画音楽もゲーム音楽も記号として使われるケースはありますが）。

私はゲームを選ぶ時に操作感や手触りなども重視しているのだがそれはゲームのどんな側面に関わるのか疑問だ。ルールともまた違う気がする。

A. 通常の意味での操作感や手触りは、ルールでもフィクションでもないでしょうね。ビデオゲームの重要な要素（ビデオゲーム作品の評価に関わる特徴）は、ルールとフィクションで網羅されているわけではないです。たとえば、グラフィックそれ自体はどちらにも入りません。

ドット絵マリオが好きです。ドット絵やポリゴンなどと比べると、グロテスクなほど肥大化したPCでしか算出できないようなグロテスクなほど稠密な3Dグラフィックは、イコンからインデックスへの終わりなき不毛な接近にも見えます。

A. 物理演算を使っていようがいまいが、グラフィックのリアリズムを追求するとインデックスにより近づくということはないと思います（むしろイコンとしてのレベルが上がっていく方向では）。パースの概念規定を再確認されるとよいかと思います。

違う話ですが、インデックス概念をビデオゲームに適用するなら、たとえば「ビデオゲームのゲームメカニクス（プログラムの内容）には、入力操作と画面の変化を通じてインデックス的に（つまり一種の因果関係を前提として）把握される面がある」くらいのことは言えるかなと前から思っています。

記号と内容の話の所で、実際のりんご（果物屋さんにある）が記号に対する内容であるというのは分かるのだが、私達が実際のりんごをイメージするときのそのりんごのイメージは、内容でも記号でもないのだろうか？そのイメージを絵にかいたらそれが記号になるということだろうか。また、ビデオゲームの画面に出てくるマリオのグラフィックは、マリオというフィクションのキャラクター（内容）を表す記号であるが、そのフィクションのキャラクターというものは実際には存在せず、記号と結びつく内容が記号と独立しておらず記号を含んで初めて内容になるのではないかということを疑問に思った。りんごという言葉やりんごの絵がこの世に無くてもりんごはどこかの木に生えているだろうが、マリオはそれとは違い、マリオという名前やグラフィックや説明する文章、プレイヤーの操作、ゲームメカニクスなどの現れとして作り出されたもののように思える。それは記号と内容の関係で語れるものなのだろうか。

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