情報ゲインを予測するニューロンの発見
Article | Published: 08 July 2019
Mattias Horan, Nabil Daddaoua & Jacqueline Gottlieb
Nature Neuroscience, volume 22, pages1327–1335 (2019)
FEPにおけるactive inferrenceや脳のギブスサンプリングにも通じる話だと思うのですが、行動をとる前にその行動をとることによる情報ゲインの期待値を予測するニューロンを発見したようです。
サルの視覚の実験で、画面上に現れるcueの動きに追随して視線を動かせば必ず、報酬が与えられる選択肢へ誘導してくれる課題と、同様のcueが現れるが、連続して正解の選択肢が決まっているためにcueを見なくても解答がわかる課題を解かせ、latelal intraparietal area(LIP)のニューロンのスパイクを記録しました。前者の課題はcueに注目することで回答の情報が得られるので情報に富んだ、Informative trial(INF)で、後者の課題はcueを見ることによって得られる情報はない、uninformative trial(unINF)です。どちらの課題も90%以上の正解率で学習でき、サッケードによりcueを見始める直前の活動を解析しました。
すると、INFのときに活動が上昇したり、得られるreward量(これも予めサルはわかっている)が少ないトライアルの時に活動が上昇するニューロンが多かった(Fig. 3, 4、両方に反応するものも、両方に反応しないものもある)。また、報酬量の多いトライアルでは発火率に対する情報ゲインの寄与が大きいトライアルほどcueを見ている時間が短くても正解率が高かったFig. 6)。報酬量が少ない時はこのような差は見られなかった。
生物は報酬の量だけを考えて静的に世界に満足することは決してなく、不確かさを減らすために能動的に外の世界にでようとしたり(ノーズポークしたり)新たな行動をとってみたりするわけですが(active sampling)、その際に、その行動により得られる情報量を予め推定する機構が脳の中に(視覚に関してはLIPに)存在するのだと考えます。