学習が早い人ほど神経活動の割り当てが効率的である
Evelyn Tang, Marcelo G. Mattar, Chad Giusti, David M. Lydon-Staley, Sharon L. Thompson-Schill & Danielle S. Bassett
Nature Neurosciencevolume 22, pages1000–1009 (2019)
Article Published: 20 May 2019
Bassettラボより。高度な認知タスクには高次元な神経活動が可能であれば様々な情報をコードできるので有利である一方、その表象のためのエネルギーや検索コストを考えると大きすぎる次元は逆に不利であると考えられます。そのようなトレードオフの関係を学習速度の速い人間たちがどのようにクリアしているのかを調べている。
12種類の抽象的な図形と金銭的な価値を紐づけ、下位6位か上位6位か充てることで金銭報酬が与えられるタスクを行いfMRIで神経活動を計測。4日間続ける。 分離性次元、埋め込み次元、ラベル集合性の三つを定義し、初日の成績とそれぞれの指標の相関をとった。
分離性次元:n個の各図形に対してバイナリなラベルを与え(全部で2^n-2通り)、神経活動多様体上で線形分離可能である確率。
埋め込み次元:神経活動に対して紐づいている各図形というラベルをシャッフルした時の分離性次元。おそらく自分がこれまで多様体の次元と考えていたものとほぼ一致。
ラベルの集合性:同じ図形(似た図形)が神経活動多様体上で近い距離にあるかどうかの指標。
初日の成績が高い人ほど分離性次元は高く、埋め込み次元は低く、ラベルの集合性が高い。つまり、早く学習できる人ほど、検索コストは小さいかつ、各神経活動は区別しやすく、同一の入力に対してロバストな活動をしているという、効率的な神経表象をしている。
また、この相関に有意に寄与していた領域は左海馬と右temporal poleであった。
安直に神経活動の次元、という言葉を使うべきではない、とあらためて思った。しっかり数学的に定義して、拡張すべき次元はなんなのか、が知能拡張のKeyとなる。また、海馬でmanifold研究するのも面白そう。