ドパミンニューロンの発火とドパミン放出量は必ずしも一致しない
Article | Published: 22 May 2019
Dissociable dopamine dynamics for learning and motivation
Ali Mohebi, Jeffrey R. Pettibone, Arif A. Hamid, Jenny-Marie T. Wong, Leah T. Vinson, Tommaso Patriarchi, Lin Tian, Robert T. Kennedy & Joshua D. Berke
Nature (2019)
ドパミンの役割はいろいろな仮説が存在し、不明な部分が多い。例えば報酬、価値、報酬の期待、報酬予測誤差、等々いろいろな役割について実験事実と仮説が唱えられてきた。本研究ではlateral - VTAドパミンニューロンの発火が「報酬予測誤差」、NAcでのドパミン放出量が「価値」をコードする説を支持する実験結果を示した。そして前者は即時的に変化することで「(強化)学習」に寄与し、後者は比較的ゆっくりと変化することで、動物の「モチベーション」に寄与すると示唆される。
右穴/左穴にポークするとそれぞれ固有の確率で報酬が与えられる2択のバンディット課題中のラットのVTAドパミンニューロンのユニット記録、及び投射先のNAcドパミンイメージングを行った。報酬をもらえる確率はcueなしに変更する。
・オプトタグしたドパミンニューロンの発火の変動と報酬が実際に与えられた確率の変動は相関しない(Fig. 2, 4)
・ドパミンニューロンの発火は正負両方の予測誤差に相関する(Fig. 5, Ex. Fig. 5)
・ドパミンの放出量と報酬が実際に与えられた確率の変動は相関する(Fig. 1, 3)。(マイクロダイアリシス、ボルタンメトリー、ドパミンイメージングどの手法を使っても)
・ドパミン放出量と強化学習モデルに当てはめた時の状態価値関数あるいは予測誤差関数との相関を計算すると、状態価値関数の方が相関した(Fig. 3)。
・ドパミン放出量と左右穴の選択潜時は逆相関する。→ドパミン放出量はモチベーションと相関する(Fig. 1)。
発火≠神経修飾(伝達)物質放出であることを改めて再認識した。電気生理だけでなく、ボルタンメトリーや各物質イメージングも含めて多角的に解析することの重要性がうかがえる。
ところで、ゆっくり変化するドパミン放出量は何によって調節されるのか?
放出や再取り込みにかかわる受容体やMAO等の代謝酵素の発現量なのか?グリアとの相互作用なのか?それとも結局その発現量や相互作用を調節するのも他の回路が関わる発火依存なのか?