社会生物学と人間の本性
『社会生物学と人間の本性』(原題:Sociobiology and Human Nature)
著者:ウィリアム・アーヴィング・グレゴリー(William Irons Gregory)この本は、E.O.ウィルソンが提唱した社会生物学の考え方をもとに、人間の行動や社会性を進化論的視点から理解しようとする試みをまとめたものです。ウィルソンの『社会生物学』は主に動物行動に焦点を当てていましたが、グレゴリーはそれをさらに進めて、**「人間社会にも生物学的基盤が存在するのではないか」**という問題に真正面から取り組んでいます。
内容の主なポイント
人間の社会行動は生得的傾向(遺伝子の影響)と文化(学習・社会化)の相互作用で生まれる
「遺伝か環境か」という二者択一ではなく、進化的に形成された認知や行動傾向が文化のあり方にも影響している
道徳、親子関係、利他行動なども、進化的に説明可能である
ただし、人間の文化の多様性は否定せず、単純な生物学的決定論に陥ることを避けている
背景
当時、社会生物学は「生物学的根拠に基づく差別を助長しかねない」と批判されたため、
グレゴリーも慎重に議論を進めながら、科学的根拠に基づく説明を試みている。