前立腺癌取扱い規約(第5版)第4版からの変更点(病理)
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第4版(2010)ー WHO第3版(2004)ー ISUP2005
第5版(2022)ー WHO第4版(2016)ー ISUP2014
* WHO第4版
* UICC/TNM分類第8版
対象疾患:原発性前立腺癌
神経内分泌腫瘍、非上皮性腫瘍、転移性前立腺癌症例も規約に準じて記載することが推奨される
所属リンパ節転移所見記載法
頁31 所属リンパ節に総腸骨リンパ節が含まれているが、所属リンパ節に加えの部分にも総腸骨リンパ節が記載されている。誤植。
泌尿生殖器のリンパ節の図が転載されているが、所属リンパ節の図示はされていない。
所属リンパ節に加えて総腸骨リンパ節、正中仙骨リンパ節を切除した場合は記載することとなっている。
組織学的分類
WHO分類第4版(2016)に基づく
分類は上皮性腫瘍・神経内分泌腫瘍・非上皮性腫瘍・転移性腫瘍となった
腺癌が腺房腺癌となった
導管腺癌が独立した
粘液癌、印環細胞癌が名称変更とともに腺房腺癌の亜型となった
導管内癌が採用された
悪性度不詳の間質性腫瘍が採用された
量的に最も優勢なものによって分類する
上皮性腫瘍
腺房腺癌
通常型
クリスタロイドあり
亜型
萎縮亜型 ! atrophic variants ←複数形誤植
偽過形成亜型
泡沫状腺管亜型
粘液亜型
全体の25%をこえたら粘液亜型とできる
印環様細胞亜型
多形巨細胞亜型
肉腫様亜型
癌腫と肉腫の二相性がある場合
高グレード前立腺上皮内腫瘍
低グレードPINは記載しない
導管内癌
高グレードPINとの鑑別が必要
診断基準は参考文献が提示されており、各々が良さげなものを採用することとなった
Am J Surg Pathol. 1996 Jul;20(7):802-14. doi: 10.1097/00000478-199607000-00003.
Spread of adenocarcinoma within prostatic ducts and acini. Morphologic and clinical correlations 有料
Mod Pathol. 2006 Dec;19(12):1528-35. doi: 10.1038/modpathol.3800702. Epub 2006 Sep 15.
Intraductal carcinoma of the prostate on needle biopsy: Histologic features and clinical significance 無料
Arch Pathol Lab Med. 2007 Jul;131(7):1103-9. doi: 10.5858/2007-131-1103-APOTIH.
A proposal on the identification, histologic reporting, and implications of intraductal prostatic carcinoma 無料
尿路上皮癌
扁平上皮性腫瘍
扁平上皮癌
腺扁平上皮癌
基底細胞癌
神経内分泌腫瘍
小細胞神経内分泌癌
大細胞神経内分泌癌
その他 ! 対応する英語名なし
高分化神経内分泌腫瘍(旧カルチノイド腫瘍)
パネート細胞様神経内分泌への分化を伴う腺癌
非上皮性腫瘍
悪性度不祥な間質性腫瘍
肉腫
血液・リンパ性腫瘍
転移性腫瘍
Gleason分類の修正
WHO4thに準拠した
量的に多いものより第1パターンとして記載する
生検検体では第2パターンは数値が高いものを採用する
第2パターンが5%未満の場合には無視する
生検検体ではパターン4の割合を記載する
パターン1と2は用いない
手術検体では説明が判りづらいが、第2パターンも量的に次に多いものを採用する
第2パターンが5%未満で第1パターンよりも数値が小さい場合は無視する
第3パターンがパターン5で全体の5%をこえる場合は第2パターンとみなす
上記の場合にはパターン5の割合を記載する
パターン1は記載しない
治療による変性を受けていない部分を評価する
全てがnon-viableである場合には評価しない
nananana.icon 量的多寡を示す第Xパターンと分化度を示すパターンXという似通った表現が相変わらず使われており、カタカナ表記がさらに視認性を悪くしている
Gleasonパターン3に分枝状腺管が追加された
Gleasonパターン4に糸球体様構造が追加され、hypernephromatoidが消去された → 形態学的にどれかにいれる
篩状腺管はすべてパターン4とする
粘液亜型は粘液を除いた構築より分類する
nananana.icon パターン1および2の図は記載がない
パターンの組織亜型ごとの説明あり
nananana.icon 第3パターン以下を記載する場合が無くなった
すべての記載方法が第1と第2パターンの和で示される(簡略化された)
グレードグループ分類の導入
併記する様、導入された
報告事項
針生検、TURP、手術材料で報告内容が明記されている
組織診断、Gleasonスコア、グレードグループ分類の順に必須
篩状腺管については有無を別に記載する(詳細および理由については不明???)
記載については施設内で取り決めること
針生検
複数コア、コアごと、各コアと標的生検部位、同一標的生検部位、標的生検部位ごと、同一部位の複数の標的によって記載方法を変える
標的生検なのか部位生検なのかを区別(記載)する
TURP
導管内癌があれば記載する
全摘手術材料
水平断面における前立腺の領域が図示された
脈管浸潤
lyとvがLVIになった
病理学的T分類
pT2の亜分類が無くなった
nananana.icon 臨床病期では無くなっていない
RM1, EPEx, pT2+ の記載はpT2で良いことになった
病理学的N分類
pNの大文字表記となった
病理学的病期分類
新たな病理学的病期分類案が示されているが、pM0、pMXは使用しないとのUICC/TNM分類第8版のルールによりStage ⅣC (=pM1)でしか病理学的診断の段階で診断・記載できない
→ 所見記載の例においても病期分類は記載されていない
がん登録用コード
所見記載例に記載あり
組織学的治療効果判定基準
これまでの判定は予後予測に有用で無いと報告されたため、いずれの治療法においても判定をおこなわないこととなった。
viable cellの残存の有無のみを判定する
従来のviable、non-viableの判定基準が変わり、何らかの変性所見があればすべてnon-viableな癌細胞と判定することとなった
従来のviableとされた、腺腔構造に乱れ、細胞間結合の不規則性、核濃縮、奇怪核、好酸性変化、空胞変性、細胞膜の不明瞭化も、第5版よりnon-viableと判定される
(参考)
病理と臨床 2022 Vol.40 No.9 速報解説