慢性子宮内膜炎の病理診断基準
nananana.icon 病理学的診断基準のコンセンサスは現時点(202305)では得られていない
https://gyazo.com/035d36fef754945ba065a41f17f1916c
* 産婦人科の実際 Vol.69 No.10 2020 P.1055- 慢性子宮内膜炎の診断と治療
! 慢性子宮内膜炎の診断基準
病理学的に子宮内膜組織には間質細胞の過剰な増殖、間質と上皮の分化の相違、顕著な浮腫などの所見が認められるが、形質細胞の存在の確認によりなされる。
免疫組織学染色の標準化がなされていないため使用抗体や染色法により検出率が異なるのではないか。
形質細胞の計測方法が統一されていない。少数の形質細胞では診断基準に達しないとの意見がある。
子宮内膜採取の方法、時期が決まっていない。
分泌期では形質細胞が黄体ホルモンの影響により消失する可能性がある
キュレットとカテーテル式の内膜採取器具の違いにより採取できる量と厚みが変わる
臨床経過に基づいた診断基準が認められていない
慢性子宮内膜炎の基準を決めて、それを満たす群での検討しかなされていない。
信頼の置ける臨床統計に基づく子宮内膜組織を用いた診断基準は存在しない。
* 産科と婦人科 2019年11号(31)p.1329- 子宮内膜炎の子宮鏡診断
! 無症候に発症し、不妊症の原因となると考えられている
! 免疫組織学染色CD138による子宮内膜の形質細胞同定率は56%(HE染色単独では13%)
! 抗菌薬治療で陽性細胞が消失する
! 好中球や膿瘍形成を見る場合には急性子宮内膜炎を考えること
* HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY VOL.25 NO.4 (2018) P.283- 慢性子宮内膜炎の病態と治療意義
病理学的診断において画一化された国際的な診断基準が存在しない。研究ごとに診断基準が異なるのが現状。病的意義を考え合わせた国際的な診断基準が必要。
組織標本の一切片においても複数の部位に形質細胞の集積を認めることから、子宮内膜の生検でも診断は十分に可能だと考えられる。
一定の範囲に複数の形質細胞(5個以上など)の存在を認めた場合のみ診断している報告も認められる。
* Fertil Steril 104:927-931, 2015 Pregnancy outcomes in women with chronic endometritis and recurrent pregnancy loss.
CD138免疫組織学染色により紡錘形および円形の両方の形質細胞が検出可能となり、検出率が上がる
上記診断により未治療の場合、慢性子宮内膜炎では有意に次回の生児獲得率が下がる
◇ 慢性子宮内膜炎
○ Chronic endometritis
子宮内膜生検組織です。子宮内膜間質にCD138陽性の形質細胞の浸潤が散見されます。非内膜ポリープの子宮内膜において、対物40倍(400倍:HPF)の20視野にXXX個(>5~10個)のCD138陽性細胞を認め、慢性子宮内膜炎を示唆する所見です。内膜ポリープ病変が併存し、同部位ではより高度の形質細胞浸潤を認めます。 nananana.icon 臨床医より慢性子宮内膜炎の検索の依頼があった場合には、免疫組織学染色CD138を病変部(非内膜ポリープ部)に行う。対物40倍(400倍) で20視野に5~10個以上のCD138陽性細胞を認めた場合、慢性子宮内膜炎を示唆すると報告する。
nananana.icon 強視野を対物20倍(200倍)とするか対物40倍(400倍)とするか、接眼レンズの視野数はいくつか、計測視野数が1~20視野かで同じ検体だったとしても判定結果は変わる可能性が残る。
nananana.icon WHO5thの記載にならい、WSIの利用などの可能性も考えるとmm2あたりの個数測定が今後は望ましい。
nananana.icon CD138免疫組織学染色が自施設でできない場合には、外部への委託が必要。
nananana.icon 保険診療上の問題(保険診療の場合)。
ウェブでみかけた判定の例
子宮内膜(40倍4視野)が提出されており、基本的に分泌早期の内膜所見を呈しています。CD138免疫染色では、弱拡大視野対物4倍4視野で20個の陽性細胞を認めます。強拡大(対物20倍)1視野では、0.1個(20/100)が認められます。免疫組織学検査上、慢性子宮内膜炎を示唆する所見を認めません。
nananana.icon 陽性細胞が多いところ(hot spot)を弱拡大4視野で数えて1/100したもので判定している。カットオフ値は1~5個(施設により異なる)。
Fertility and Sterility VOLUME 115, ISSUE 6, P1549-1556, JUNE 01, 2021
Impact of antibiotic therapy on the rate of negative test results for chronic endometritis: a prospective randomized control trial
nananana.icon 北京より報告
第109回日本病理学会総会 ポスター
P1-206 CD138の免疫染色は不妊症患者の子宮内膜組織診の検討に有用である
不妊症患者の子宮内膜組織294例、CD138陽性の形質細胞数が10個/20hpf以上で慢性子宮内膜炎とした
不妊症患者の子宮内膜においてCD138の免疫染色は、
慢性子宮内膜炎の頻度は不妊症の33.8%、反復着床不全の29.4%、反復流産の27%であった
増殖期で子宮内膜間質細胞に、分泌中期には内膜腺上皮に強く発現するという月経周期性がある
syncytiotrophoblastにも強陽性を示し微量の妊娠産物遺残が確認できる
CD138の免疫染色は不妊症患者の子宮内膜組織診において、慢性子宮内膜炎の診断、内膜日付診、そして微量なsyncytiotrophoblast遺残の確認において有用。
第112回日本病理学会総会 病理診断講習会
* 機能性出血の病理診断
2021年の論文において2023年現在専門家内でコンセンサスは得られていない
数的な形質細胞浸潤
CD138を行うべきか
基底層まで採取および評価すべきか
形質細胞は、リンパ球浸潤、形質細胞様内膜間質細胞、間質の有糸分裂、脱落膜様変化、月経期、外因性プロゲステロン治療による二次的変化などにより不明瞭になる場合がある
診断に必要な形質細胞数は研究により一定しない
1切片中に1個以上
10高倍率視野に1個以上
20高倍率視野に5個以上
30高倍率視野中の1高倍率視野に5個以上
分泌期では基底層にのみ形質細胞浸潤がみられるため、分泌期の機能層のみで評価をおこなってはいけない
月経周期と採取された深さの評価必要