現代の外来語としてその表記を考える
漢字で音を伝える曖昧さ
南至邪馬壹國 女王之所都 『三国志』東夷伝(魏志倭人伝)
邪馬壹国(ヤマイ?) 邪馬臺國(ヤマドゥ?)
日本側「このあたりは『やまい(やまと)』という国です」
陳寿側「邪馬壹(邪馬壹國)」とメモして帰国後に「三国志」に編纂
〜数百年後〜
日本側「清の国から届いた古文書によると昔、邪馬壹國 "ヤマタイコク"という国があったらしい」
中国使者「倭の国の名前は"ヤマト"じゃなくて”ヤマタイ"の間違いなので"邪馬堆"に直そう」
日中間で漢字を共有するというメリットは大事にしながらも、漢字は意味を共有しても、「オト(音声や発音)」は必ずしも共有しない。今の日本語(中国語も)グローバル化や他言語社会に対応できる表示体系が必要では?
従来の外来語の対応:漢字で造語、カタカナ・ひらがなで表記、原文綴りのまま(必要に応じてルビ等を追記)
文字コードはユニコードになっているので、入力された漢字の多言語読みや発音をOSレベルでサポートできないか?
表音文字としてのひらがな・カタカナ50音だけでは表記の限界があるのでアップデートできないか?
■ 国際化が求める現地読み
では、今後も将来にわたって「日本語 読み」 のままでいいのであろうか。筆者は、日本人(あるいは日本語のわかる人) の間でしか通用しない「日本語読み」だ けでは、時代のニーズに応えられない、 と考える。
〜略〜
1. 片仮名表記をどう行うか。現状では、 それが必要な場合、中国問題担当記者の 判断で表記を決めるケースが多い。だが、 これでは不統一は避けがたい。また、各 メディアが勝手にルールを定めれば、こ れも間違いなく混乱を招く。インター ネットでの検索にも支障が出る。
2.現在、同一メディア内においても日本語読み、現地読みの不統一が生じてい る。新聞の国際面などで日本語読みして いる一方、文化・芸能面では「張芸謀(チャ ン・イーモウ)」「鞏俐(コン・リー)」という ように著名人の現地読みが一般化してい る。
〜略〜
3.読者の間には、現地読みへのニーズ がある反面、これまで通りの日本語読み にこだわる声も根強い。難漢字を用いて いる人名について、まず日本式にどう読 むのかを知りたいと思うのは当然であり (日本式にきちんと読めるというのが日本人の教養であろう)、活字メディアであれば、 ルビを付してその要望に応えなければな らない。だが、双方のニーズを満たすと すれば、二種類のルビを付けることになり、正直煩わしい。
〜略〜
京都大学 准教授の池田巧氏が発表された「現代中国語カタカナ発音表記法試案」に基づくガイドラインは、建設的で実践的な提案 として大いに参考になる。
〜略〜
最後に、ピンインを知らない素人でも 信頼感をもって使えるような一般社会向けの規範的スタイルブック(例えば「中国人名・地名 現地音カタカナ表記辞典」)が、 専門家によって一日も早く編纂されることを望みたい。
中国語音節表記ガイドライン[平凡社版]
ガイドラインの趣旨について
近年、新聞、映画、アート、出版、音楽その他多くの領域で、中国の人名・地名のカタカナ表記がなされるようになってきました。「フー・チンタオ(胡錦濤)」や「チャン・イーモウ(張芸謀)」といった表記も、今や私たちにとって馴染み深いものになりつつあります。
しかし、カタカナ表記の方法それ自体は必ずしも統一されていません。たとえば、今言った「張」姓ひとつとっても、メディア上には「チャン」と「ジャン」という二つの表記が並列しています。人名検索の際の不便を考えれば、こうした事態は決して望ましいものではありません。また、翻訳書においても、中国音のルビの単純なミスが散見されます。これもやはり望ましくありません。
とはいえ、この種の表記のバラつきやケアレスミスは、信頼に足る表記ガイドラインが誰にでもアクセスできる形で存在していれば、ほとんど未然に防げるものです。そこで今回、中国語研究者の池田巧氏(京都大学人文科学研究所准教授)の監修の下、平凡社のご厚意をいただき、新しいガイドラインを同社サイト上で公開する運びとなりました。現場の出版・メディア・教育関係者の方に、広く利用していただければ幸いです。
参考