ビッグデータの中に自分はいない
倉下忠憲『すべてはノートからはじまる:あなたの人生をひらく記録術』(星海社新書)
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第7章 未来のために書く ビジョンのノート
ビッグデータの中に「自分」はいない
ITがもたらすあらゆる「スマート」なものが、同種の傾向を持ちます。それらは大きな手間を削減すると共に、そうした手間をかけることでしか得られなかった自分自身についての知見を隠蔽し、過去の行動からの逸脱や冒険を抑制します。なにしろビッグデータは、「行動したこと」の結果は記録しますが、そこに立ち現れなかったさまざまな思惟の経路や感情、そしてそこに込められた意志は一つ残らず見落とすのです。「そうであろうとしたこと」や「そうであったかもしれないもの」は、何一つ記録に残りません。しかし、考えてみてください。何度もやろうとして、何度も失敗し、しかしそれでもやろうとする行動があるとするならば、それは自分について何かを明らかにするのではないでしょうか。食欲なビッグデータは、しかしそうしたものに興味を持ちません。彼らが視線を向け、必死にむさぼり続けるのは立ち現れた行動という結果だけであり、どれだけ情報が集まっても、ビッグデータが「あなたは誰なのか」を知ることはありません。総体としての「自分」はそこにはないのです。