いきなり「内製比率100%」を目指さない
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上のデータは、
当店で brother PR1050X を導入していただいた会社から依頼されて、当店で作成したもの。
慣れてる方にはどうってことない刺しゅうデータですが、
はじめての方でそれなりの形にしようとしてもけっこうむずかしいと思います、こういうの。
でも、当店はこういうサポート大好きなんです(笑)。
大隅ブラザーとしては最初はなにより「刺しゅう機の操作・縫製」に慣れてほしい。
なので導入後しばらくのあいだ、データ作成は当店でおこなっています。
企業では、刺しゅう担当者はほかの業務と兼任している方も多い。
刺しゅうデータ作成は時間をかけて慣れてくれれば、と思っています。
「これまで外注していた刺しゅうを内製化したい」
企業から、そういうご相談を受ける時期になりました。
年明け、新年度がはじまるまで刺しゅう業界は繁忙期をむかえます。
制服やユニフォームの名入れなどたくさん刺しゅうする必要があるのですね。
すでに刺しゅう機を使っている方は、
納期に遅れないか、機械の調子が悪くならないかぴりぴりしている時期ですし、
刺しゅう専門店に外注する側も、
希望する納期や価格でなかなか依頼できない状況に気を揉んだりしている。
「自分たちで刺しゅうしちゃうほうが安上がりなんじゃないか」
ミシン・刺しゅう機メーカーや販売店もそれを見越してキャンペーンをおこなったり。
まあ、いそがしい時期なのです。
当店も「刺しゅうの内製化ってできるものなのでしょうか」と相談をたくさん受けます。
お客さまとのやりとりで感じること、思い浮かぶのは、
「専門知識がなくてもだいじょうぶ」なんて、
メーカーさんはカタログなどであまりうたわないほうがいいんじゃないか、ということ。
趣味や遊びで、ならともかく、
仕事として刺しゅう機を使おうとするなら、やはりあるていどの専門知識は必要です。
刺しゅう機の使い方は、まあ、おぼえてもらえる。
ミシンのメンテナンスも、なんとかなる。
でも「刺しゅうソフトで最低限商業ベースにのせられるオリジナルデータを作成する」というのは、
そう簡単にはいかない。
がんばって時間を作って刺しゅうの世界に挑戦してもらうしかない。
ただ、最初はがんばりようがないと思うのです。
取扱説明書を読めば刺しゅうソフトの操作の手順は書いてある。
けれど、たとえば上のような鶴、ラインアートとはいえ複雑な意匠を原画として渡されたら、
初心者の方は途方にくれるんじゃないでしょうか。
結果「刺しゅうはむずかしいものだ」ということになり、
刺しゅう機は使われずにほこりをかぶったままになるか中古品として売却されてしまうことになる。
実際、そういう例も多いと聞きます。
刺しゅう経験のない企業が刺しゅうの内製化を計画するなら、
最初からいきなり「内製比率100%」は目指さないのがコツです。
第一段階:刺しゅうデータは外注し、まずは縫製に慣れることに集中する(内製比率50%)。
第二段階:出来合いの刺しゅうデータの修正ができるようになる(内製比率80パーセント)
第三段階:オリジナルの刺しゅうデータを作成・縫製できるようになる(内製比率100パーセント)。
こんなふうに、できることを徐々に増やしていく。
刺しゅうソフトもずいぶん便利になってきているので「慣れる」にはそんなに時間はかからない。
けれど「慣れる」と「自在にデータを作れる」というのはまったくべつの話。
簡単な刺しゅうデータを作るのに何日もかかる、なんてのは内製化の代償としてあまりに大きすぎる。
それなりにコストはかかりますが、
初期は、刺しゅうデータを専門に作成する「パンチ屋さん」を利用するのも手です。
でも、刺しゅう機を販売している専門店に「自社専属のパンチ屋さん」になってもらうのが、
いちばん手っ取り早いと思います。
刺しゅう機本体、ソフト、使い方講習からアフターメンテナンス、
そしてデータ作成までまるごとめんどうみてもらう形です。
これがすべてできる専門店はまだまだすくない。
というわけで、当店を利用してもらうのがいちばんいいと思うのですが(笑)、
そうでなくても、導入から当面のデータ作成まで依頼できる専門店と出会えると、
それはとってもしあわせなことだと思います。
「専門知識がなくても使えます」
なんて甘いことばをささやいてくれる店ではなく、
「刺しゅうはむずかしいよ。でも、まかしとき。使いこなせるように育てたる!」
くらい、請け負ってくれる専門店を探すといいですよ。
貴重な投資をムダにしないためにも。