GPLのしくみ
特記していない場合、「GPL」はGPLv3のことを指す。
GPLは何をしたいのか?
→(2021/7/18時点での自分の理解)一度OSSとして公開されたプログラムが事後的に再ライセンスされることで、ソースコードにアクセス不能になってしまうことを防ぐ。また、営利企業がOSSの改良版によって利益を得ながら、その改良をOSSに還元することを拒む、いわゆるフリーライドを阻止する。
GPLはなぜ効力があるのか?
→(2021/7/18時点での自分の理解)プログラムを著作物として扱うことにより、意に沿わない利用方法に対して著作権法を根拠に罰を与えることができる。
GPLはなぜ伝搬する必要があるのか?
→(2021/7/18時点での自分の理解)GPLのプログラムを改変したプログラムにも強制的に伝搬される仕組みでないと、冒頭に挙げた目的を達成できないため。
GPLはどのように伝搬するのか?
→(2021/7/18時点での自分の理解)著作権者以外による著作物の改変および頒布に対し、著作権法が強い制限を掛けていることを利用している。すなわち、GPLでライセンスされた著作物を改変して頒布するにあたり、それを許可する条件としてGPLライセンスを採用することを求めている。
逆に、GPLの伝搬を強制させるためには、対象物が以下の条件を満たす必要がある。
著作権法上、対象物がGPLライセンスされた著作物の改変物であるとみなされること。
対象物が頒布されること。つまり、家庭内やごく小さい組織など、頒布を伴わない範囲での使用では必ずしもGPLに従う必要はない。
GPLライセンス下でもやらなくていいこと
→(2021/7/18時点での自分の理解)GPLライセンスの元でプログラムを頒布したからといって、そのソースコードへ無制限のアクセスを許可する必要はない。あくまで頒布物を正当に受領した人に対してのみソースコードが公開されればよい。もちろん、ソースコードを受領した人がそれをGPLライセンスで再頒布することは自由である。
論文とか
Licenses (gnu.org)
コピーレフトの理念と仕組みを解説した公式文書。
仕組みについて:
To copyleft a program, we first state that it is copyrighted; then we add distribution terms, which are a legal instrument that gives everyone the rights to use, modify, and redistribute the program's code or any program derived from it but only if the distribution terms are unchanged. Thus, the code and the freedoms become legally inseparable.
プログラムが著作物であることを宣言し、そこに頒布に関する条件を加える。明言していないが、これは著作権を利用しているため、裁定が行われる国で然るべき形で著作権法が規定されている必要がある。
OSSライセンスとは~著作権を権原とした解釈(姉崎章博, 2013)
OSS作者がライセンスを指定できることの根拠と、特にGPLv2の対象となる著作物の範囲を日本の著作権法の下で論じている。
ライセンスは契約と同一視されがちだが、もともとGPL等が成立した米国では契約の成立には原則的に書面が必要であるとされるため、少なくともGPL策定時の意図として契約を根拠にしていたと考えるのは無理がある。
しかし、山本隆司, 2008, ページ: 188は、 「日本では、契約は原則として合意のみによって成立し、契約書の作成を必要としない」ため、契約と捉えることも可能であるが、「これに対して、米国では、コモン・ローの詐欺防止法(statute of frauds)として、原則として契約の成立には書面の作成を必要とする。」と述べている。OSSライセンスは、多くが米国で作成されたにも関わらず、サインを求めるような契約書の体裁を取っていないことから、契約を意図していなかったと捉えるのが妥当であろう。 ただし、契約がなくても使用許諾を与えることは可能である。論文中でも指摘されているように、著作物の利用の許諾は契約によらずとも与えることができるとされている。
第63条第1項の「許諾」は,契約の他に単独行為によっても可能であると解されている。
(参考)著作権法第63条は以下の通り。
著作権者は,他人に対し,その著作物の利用を許諾することができ(第63条第1項),許諾を得た者は,その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において,その許諾に係る著作物を利用することができる(第63条第2項)。
適用範囲について、GPLv3における「派生物 (a work based on the Program)」の定義は次のようになっている。
To “modify” a work means to copy from or adapt all or part of the work in a fashion requiring copyright permission, other than the making of an exact copy. The resulting work is called a “modified version” of the earlier work or a work “based on” the earlier work.
論文によれば、これは日本の著作権法では「結合著作物」を指しているものとして解釈される。結合著作物の条文上の定義は存在しないようだが、一例として次のような説明がされている。
ちなみに、「共同著作物」に似た概念で、「結合著作物」というものがあります。
たとえば、ある楽曲の作詞はAさん、作曲はBさんという場合、その楽曲は「共同著作物」ではありません。「歌詞は詩集にする」「曲はオルゴールにする」というように、歌詞と曲は分離して利用できるので、「共同著作物」にはあたらないわけです。
ただ、一緒に利用されることが想定されているので、この場合の「歌詞」と「曲」を「結合著作物」と呼びます。
ライブラリを静的リンクした場合の生成物に対しては、この解釈は妥当に思われる。GPLなライブラリを静的リンクしたプログラムは、結合著作物としての二次的著作物であるか、もしくはライブラリの完全な複製を含む頒布物のどちらかとして理解できるが、どちらにせよプログラムはGPLとしてライセンスされる必要がある。
逆に言えば、GPLの効力は対象がGPLなプログラムの二次的著作物であるかどうかの解釈に依存することになる。よく言われる微妙なケースが動的リンクで、これは未だに結論が出ていない(おそらく国によっても解釈が異なりうる)。Wikipediaの記事ではあり得る解釈が複数紹介されている。
未調査
アメリカではどうなってる?
プログラムが二次的著作物であると見なされるための条件に関する判例