Barton 脱炭酸
カルボキシル基は天然物に多く見られる構造です。
そこでこれを脱炭酸することができれば多くの構造に簡単にアクセスできるようになる。。。。はずです
そのような手段としてBarton脱炭酸を紹介します。
https://gyazo.com/f37507a5bb5b974c2f452fa1c88c2333
通常カルボン酸を酸クロリドへと誘導したのちにバートンエステルと呼ばれる硫黄を含んだ化合物へと変換され、このもののラジカル条件下の脱炭酸によって目的物を得ます。
https://gyazo.com/40616556a692059ecbd557e2712500a6
例えばラジカル開始剤としてAIBN、ラジカル担体としてスズヒドリドを用いた反応機構が上記です。
ピリジン誘導体と二酸化炭素を副生物としてアルキルラジカルを生じ、そのものとスズヒドリドとの反応で再びスズラジカルが再生します。
https://gyazo.com/69a0e46b011da116db3c720191e5e102
例えば上記の反応ではネオペンチル位にあるカルボン酸が脱炭酸された後、チオエーテルが形成されます。
その後mcpba酸化によってこれを酸化、その後の加熱でエクソオレフィンに変換されます。
https://gyazo.com/13a03de1adee8bf1856045973c9e640f
続いて上のようなジスルフィドを用いてもバートンエステルは合成できるという例です。
これはTMSHを用いてラジカル敵に脱炭酸されてフェニル基の付け根の立体を保持したまま目的のシクロプロパンへと変換されます。
https://gyazo.com/863f663459dd3b6718133569526b6ffb
ナフタレン環などの芳香環上のカルボキシル基も同じような手法で変換され、生じたラジカルを臭素で捕獲してブロモナフタレンを得ています。
足がかりとして使われることの多いカルボン酸ですが、このように簡便に除去できることがその魅力を増しています。
全合成に用いられる例があれば順次追記していきます。
A. Hassner, C. Stumer, Organic syntheses based on name reactions, Elsevier (2002).
J. J. Li, Name reactions, 4th edition, Springer (2013).
Z. Wang, Comprehensive Organic Name Reactions and Reagents, Wiley-Interscience (2009)