タスク管理のおさえどころ(210824)
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「今日も終わらなかった、これ間に合うかな」「あの作業やりわすれた、締切いつだっけ」
「なんで日々の仕事がなかなか進まないんだろう。」
社会人になってすぐにこんな壁にぶつかりました。
比較的忙しい部署に配属されたこともあり、配属されて間も無く仕事は徐々に増えていったのです。
いや、作業が増えたというより単発で終わるような作業が減り、複数の仕事を同時並行にこなしていくことが増え仕掛かりが増えていったのです。
上司の判断待ちとなり作業を中断したもの、関係部署からの返事待ちのもの、様々な要因で仕掛かりとなったものが増え、余裕のない状態になっていました。
これではいけないと思い、様々な情報を探している中でタスク管理を知り自分でも実践してみました。
タスク管理を仕事に取り入れてすぐに効果は現れ、前よりも効率的に進められるようになりましたし納期遅れも少なくなりました。
この頃はタスク管理を扱うデジタルツールも次々とリリースされ、いかに使いこなすかどう工夫するかと楽しんでいた時期でもありました。
それから数年経ち仕事にも慣れ、求められる結果もより質の高いものとなりました。
タスク管理をして仕事をこなし、さらにどうすればもっとスキマ時間を有効に活用できるかを考え日々改善に取り組むことで仕事の速さと安定した質を追求していました。
短時間でスムーズに仕事をこなす。そのために、いかにムダを省き割り込みタスクを減らせるかを考えタスク管理ツールにフィードバックする。そしてどんどん仕事をこなしていったのです。
ところがある日ふと「前よりなんだか忙しい気がする」「なんだか息苦しい時間の過ごし方をしている」と思ったのです。
ムダを省き自動化も取り込んだおかげで作業スピードは最大限まで上げていました。
処理能力が上がっているにもかかわらず、何故か気持ちの余裕がなくなっているのです。
色々考えてみると、この作業スピードを全速力にしたことが余裕をなくす原因でした。
作業スピードを最大限に上げるということは、細かな変化などはある程度無視しゴールまでまっすぐに作業を進ませるということでもあります。
同じような仕事でも毎回微妙に違う点はありますし、状況も異なります。そんな中でもゴールまでまっすぐに進め成果を上げていったのです。そして生み出した時間使ってさらに成果を上げるために作業をこなしていたのです。結果として前よりも大量のタスクを消化することになり忙しくなってしまっていました。
しかも作業をすることで得られる小さな気づきや経験も消化しないままに進んできたおかげで、その時点では最速であった作業が、少しづつではありますがちょっとしたつまづきも出るようになりました。
最速というのはその時点の中での最適解であり、状況や仕組みの変化が起きれば最速ではなくなるということでもあります。変化の気づきを得られなかったことで知らない間に対応できなくなっていたのです。
そしてもう一つ、作業スピードを全速力にすることで、予定したスケジュールに割り込むようなタスクに対して苛立ちを覚えるようになっていました。
最大限スピードを出すためには、割り込みタスクは邪魔でしかありません。
それに対応するためには『いかに割り込みを減らすか』『どうやって割り込みを予測しておくか』が重要になります。
しかしながら複数人で仕事をしているとどうやっても自分が思っていたスケジュール通りに進むわけではありません。実際に別のタスクが割り込むということもありますが、それ以外にも仕事の内容で相談を受けることや調整により打ち合わせがリスケとなるなどもあります。
そういった予定したスケジュールから逸脱するようなことに対して苛立ちを覚えるほどに余裕をなくしていたのです。もちろん大人ですから表立ってイライラを出すことはありませんが、やはり周りの人はなんとなく雰囲気を感じ取るものです。本来であればコミュニケーションにもなるような相談を受けることが減り、様々な意見や考え方を聞く機会を失っていったのです。
当初は溢れかえった仕事を上手くこなし余裕を作り出すために取り入れたはずのタスク管理だったのですが、効果の一つである効率化や生産性に目を奪われ、結果的に以前のように余裕を無くしてしまったのです。
そこで思い切ってこれまでのタスク管理を見直すことにしました。
効率化に重きをおいたタスク管理を行っていた時には、
・頭の中にあるやることを具体的なタスクとして書き出す
・実行順に整理する
・スケジュールとして決まっているものはスケジューラーに入れる
・各タスクの作業時間を見積もる
・決まっているスケジュールの間に、見積りしたタスクを入れる
・作業ログをとり次回の見積りに生かす
・定型業務化できるものは作業手順をテンプレートにしたり自動化(マクロやプログラム化)する
というようなことをしていました。
やっていたこと自体は良かったのですが、自分の場合、どうしても作業スピードを上げていく方向に進みがちでした。数字があるとどうしても追ってしまうし、隙間があれば埋めてしまいたくなる感覚があったからかもしれません。
そこでもっと本質的に何が自分には何が必要なのかを考えてみました。
自分にとってタスク管理で必要なことは
・「やることを忘れないようにすること」
・「やることを把握すること」
の2つでした。
効率化を振り回されずにタスク管理を行うかを考えてみました。
以前の経験からも「やることを忘れないようにすること」はタスク管理の基本である「頭の中にあるやることをタスクとして書き出す」ことが有効であることは間違いなさそうです。
問題はこの書き出したタスクをどのように把握するかにあります。
あるプロジェクトに対してのタスクであれば、前後関係や親子関係などはある程度分かりますし、なんとなく覚えているものです。
一方で今日やるタスクというのは、複数のプロジェクトのそれぞれのタスクでできているため決まりきった前後関係はありません。
人は前後関係のない個別のものは把握しづらいものです。一方で例えば語呂合わせのようにどんなに無理やりであっても前後関係を作ると途端に把握しやすくなります。
同じく今日やるタスクを把握するためには、それぞれのタスクを今日という時間軸の中に並べてストーリー化します。
ストーリー化するには、「どのタイミングで何をやるのか?」、「必要なものは何か?」、「どこに移動するのか?」、「どのようなやり方で行うのか?」、「どんなふうに過ごしたい」というイメージを詳細に至るまで持つことが必要になります。
そのためにカードに書き出したタスクを並び替えたり、メモを追記したりして整理します。
これは今日を演じるための「台本」作りのようなものです。
台本があるからどのように進めていくのかがわかりますし、用意すべきものや想定しておいた方が良いことなどもわかります。
それに想定することで「もし」という状況での選択肢を考えることができるかもしれません。
細かく想定することはムダなように思われますが、逆に行き当たりばったりでは準備がないために選択できる行動が少なくなることもあります。たとえば急に暑くなり飲み物を用意することになった場合、クレジットカードしかなければ自販機では飲み物を買えないのでお店を探す必要があります。今日は外出だから少額の現金を持っておいた方が良いなと想定できるのも事前に何をするのかしたいのかを明らかにしているからといえます。
台本を作るというのは、全体を把握して動くために必要なガイドラインであり選択肢を増やすための準備でもあります。
演技や舞台では、本番では台本を見ることはありません。
同じように自分はタスクを実行する本番では台本である先ほどのタスクカードの束をみないようにしています。
いちいち見ていたらリズムが崩れてしまうからです。
事前に想定した通りに行ったからといって成果が出るとは限りません。さらに想定外の出来事などたくさんあります。電話やメールの他にも、誰かに話しかけられ相談を持ちかけられたり、以前提出した報告書について上司から質問があったりなどなど…。それだけではなく、タスクを行なっていて想定外の結果となった時というものもあります。
以前のように厳格なルールのように流れを守り、外乱となるようなノイズは極力排除し、想定外の結果は再検討課題として新たなタスクとして新規登録し、粛々と当初描いた成果を残していくというやり方もあります。
しかしあえてそうはせず、タスク管理ツールを「台本」という位置付けで扱い、想定外のことにはアドリブを入れつつ対応していくことで緩やかなルールの中で方向性を見失わずに進めることができます。
また、しっかりと作った「台本」があるのですから、あれっ次どうするのだっけと思った時は見れば良いのです。
複数人が関わる組織で仕事をしている以上は、突然の問い合わせなどは避けられません。また、環境や状況の変化というのは一人で仕事している人でも当てはまります。これらの変化に対してどう対応するかはどんな時でも課題になります。
「突発の電話の対応で時間とられてしまって間に合わない」「上司の無駄話のせいで会議資料ができなかった」など想定外のことで迷惑を被ったことはあると思います。
一方で、「当初描いた結果ではないことから新たな発見をする」「相談受けたことから思いも寄らない縁ができた」なども想定外から起きた面白さです。
ただ、何も準備しないために起きる「想定外」と綿密に準備した上で起きる「想定外」は全く違います。想定外は、事前に準備し想定を行なったからこそ生まれるもので、何も準備せずに起きたことは想定外ではなく準備不足です。準備不足の場合、せっかくのチャンスを逃すことさえあります。
「想定外」はどちらに転ぶか分かりません。無駄にも面白くもなります。だからこそそれを受け入れる「余白」を作りたいと思っていますし、「余白」はしっかりした台本があるからこそ作り出せるものだとも思っています。
以前の自分は、この余白を目先の効率化に埋めてしまったがためにせっかく導入したタスク管理を活かせずにいました。余白があることで効率は多少落ちたかもしれませんが、全体ではスムーズに進めることができるようになった感覚です。
タスク管理は効率化や生産性といったことと結びついて語られがちです。
実際に、タスク管理を導入することで効率化することはできます。
一方で過剰な効率化の弊害についてはあまり話が出ていないように思います。
自分は仕事にしてもプライベートにしてもこの1回に全てをかける野球でいえば夏の甲子園のようなものでは無く、年間何試合もあるプロ野球のリーグ戦のようなものにしたいと思っています。
パフォーマンスを出し続けるために、リズムよく休息をいれ区切りをつけて臨んでいきたいです。
だから自分のようにどうしても行動しがちであればタスク管理のポイントをざっくり捉えた上で逆にどのように休息を取るか(レスト管理)を考えてみてもいいかと思います。逆に何かしないと休みがちであればどのように行動するか(タスク管理)をもっと突き詰めてみても良いかもしれません。
タスク管理は仕事や生活をサポートするものであり、何が必要かは人それぞれ違います。
ちょっとしたサポートがあることで、自分のように見え方や捉え方がまるっきり変わるということもあります。