タスク・ライティング
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===1 頭の中と外で行き来しやすい形にする
物事を扱うのに頭の中だけでいつも完結できるのであれば、それでもよいと思うのですが、その日の調子によっては頭のなかにうずまく感情があったりで、同じ物事を扱うのでも違った考え方や見方(たいていは一方的な見方)をしてしまうことがあります。
日を改めて考えたい、もしくは今ちょっとだけ脇においておきたい、頭の外に物事を出して扱いたいとき、そんなときには文字にしてみる、図に描いてみる、表にしてみるなどがあります。特に文字または文章にしてみることは、図や表に比べると素早く書き出せて、読んで頭の中に戻すことも容易です。また、後述するアウトラインとして扱うのにも適しています。
===2 Atomicなものとして書き出す
文字、テキスト、文章として書き出すときはAtomicに書き出すようにします。Atomicというのは、単語として「原子の」「きわめて小さい」という意味ですが、Evergreen notesの原理にある「Evergreen notes should be atomic」としての意味に着目したいと思います。ここでは、これ以上分割できないというよりは、むしろ化学元素の最小単位であり、なおかつ下部構造の陽子の数によって原子(元素)が変わるように、最小単位としての要素を切り出すことと、他にも変わり得るものを同時に持つのがAtomicなものと扱ってみたいと思います。
たとえば、「髪の毛を切る」といったタスクについてAtomicなものとして書き出すとき、それはタスクの分解とはちょっと異なったものになります。
分解
髪の毛を切る
いつ床屋・美容院に行くのか決める
床屋・美容院を予約する
予約した日時に床屋・美容院に行く
床屋・美容院で髪を切ってもらう
床屋・美容院から帰ってくる
Atomicなもの
髪の毛を切る
いつ床屋・美容院に行くのか決める
行くのが面倒くさいので、なにかのついでに行ってこようかなと思う
そういえば、近くに気になってたケーキ屋さんに寄ってみたい
ケーキをごほうびにして床屋・美容院を予約する
どうでしょうか、分解には、足して元の形にもどるという制約が盛り込まれてしまいます。しかし、Atomicなものは「面倒くさい」
「気になっていた」「ごほうび」などの要素がでています。
最後のほうではケーキ屋さんに行くついでに、床屋・美容院に行っているようなところさえあります。「急がば回れ」と言ったところでしょう。
===3 自分なりのアウトラインを作る
Atomicに書き出したものをどのように扱うか、文字情報を扱っていることを生かしてアウトラインとして操作することができます。アウトラインの基本的な操作としては、アウトラインプロセッシング入門を参照してみてください。頭の中と外で行き来しやすい形にするのには、人のアウトラインにならうより、自分なりのアウトラインを作ることが重要になります。
Atomicなものとして書き出すに挙げた髪の毛を切るアウトラインを見てみましょう。前者は、頭の外から中へのアウトラインにあたり、主体がタスクにあり、タスクに関する理解は進みます。後者は頭の中から外へのアウトラインとなり、主体が書き手に移っています。前者は誰が作ってもよく似通ったアウトラインになり、客観性があります。後者は人それぞれ自分なりのアウトラインになりやすく、主観性を多く含めたものとなります。
===4 リストにあるタスクからの選択とリストにないタスクからの選択を並走させる
Atomicに書き出して、自分なりのアウトラインにしたものは、ノートやリストとして書いて残してみます。そうしたノートやリストの使い所として挙げるならば、日々を過ごす中でやること(またはやらないこと)について使ってみるのはどうでしょうか。
ノートやリストを使ってみるときに気をつけたいのは、ノートやリストにしたものからだけやることを決めるものではないということです。せっかく、やることについてノートやリストを使ってみることにしたのに、と思いたくなりますが、やってみるとわかりますが、すべてのやることに対してリストから選択するのは、「言うは易く行うは難し」で意外とハードルが高いです。
最初は、リストにないものから選択することを優先して、適宜ノートやリストに書いて残しておくほうが慣れるまでは破綻しにくいと思われます。リストに「休む」というタスクはなくても休みたいと思えば、休む選択をする。リストにないやることでも必要だと判断したらやる選択をする。リストがあるからリストにないタスクをやっていても大丈夫なときが生まれてきたりします。そのようにして、慣れたら、リストにあるものとリストにないものとを並走させながらハイブリッドのように選ぶようにします。
===5 既存のシステムと自分のやり方をシェイクする
ノートやリストがただ点在していても、まとまりがありません。まとめるためのやり方にはどんなものがあるのでしょうか。時間が潤沢にあり、車輪の再発明もいとわないのであれば、ゼロから自分のやり方を作ることも可能です。また,そこに楽しみがあったりもします。ですが、もしかしたらそうしてせっかく作り上げた自分のやり方も過去の先人たちに遠く及ばないものかもしれません。もし、過去の先人たちの編み出した既存のシステムにどんなものがあるのか調べてみたくなったときには、うってつけの本として「やるおわ」がありますので参考にしてみて下さい。
既存のシステム
GTD
自分←イマココ
マニャーナの法則
GTDからのトップダウンでGTDのシステム内に自分が入ることで、これまでの自分のやり方になかった部分を学び、吸収する格好になります。ただ、残念ながら既存のシステムを知っただけで、自分のやり方として使うことは窮屈で困難なことだと思います。そこで以下のとおり、アウトラインをシェイクしてみます。
トップダウンでの成果とボトムアップでの成果を相互にフィードバックすることで、書きながら浮かんでくるランダムな発想を活かし、有機的に連結していく
自分のやり方
GTD的←イマココ
マニャーナ的
自分(のやり方)をボトムアップさせて、GTDにトップダウンの形をとります。これだと自分のやり方のトップダウンでGTD的なシステムを扱うイメージができそうでしょうか。
これだけではまだ十分にGTDを学んだといい難い部分があります。そうしたときにふたたびGTDからのトップダウンで自分を位置づけます。こうしたシェイクを繰り返すことで、だんだんと自分のやり方としてGTD的な要素をAtomicに取り入れていくようにします。
===6 自分のやり方の崩れに気づく
「既存のシステムと自分のやり方をシェイクする」ことで曲がりなりにも自分のやり方でやって、みてうまくいくかどうか試してみましょう。最初はうまくいっていても、次第に無理をしているところ、またはあとで無理がたたってくるようなことはないかどうかを確認してみます。しばらく自分のやり方を使っていると、どこかで崩れてくることがあります。
物事は変化していくので、崩れてあたりまえです。これを崩さまいとするよりも、崩れたものを元に戻すことと、崩れたやり方のほうこそ本来の使い方とするのかを考えてます。うまくいかなかった(崩れた)ことを「Atomicなものとして書き出す」こと、そしてそれを「自分なりのアウトラインを作る」ようにしてみます。必要であれば「既存のシステムと自分のやり方をシェイクする」こともよいでしょう。
気をつけたいのが、「既存のシステム」と「自分のやり方」と比較して崩れている(合致していない)ことよりも、「うまくいっている(ときの)自分のやり方」と「うまくいっていない(ときの)自分のやり方」とを比較して崩れている、崩れてしまった部分に着目するようにします。なぜ崩してしまったのか、崩れないようにするにはどうすればいいのかを自分のやり方に含める(または取り除く)ことを考えます。
===7 ここに書いたことでさえ
これまで書いたことをタスク管理に限定して使うことを考えてタスクをライティングする行為として、「タスク・ライティング」と呼んでみましょう。では、このタスク・ライティングをそのままやればいいのでしょうか。話はそう簡単には行きません。それはタスク・ライティングは私にとっては「自分のやり方」でも、人からみれば「既存のシステム」になってしまっているからです。
既存のシステム
GTD
マニャーナの法則
…
タスク・ライティング
自分←イマココ
そこで「既存のシステムと自分のやり方をシェイクする」です。
自分のやり方
GTD的
マニャーナ的
…
タスク・ライティング的←イマココ
「タスク・ライティング」のすべてを取り入れるのではなく、「Atomicなものとして書き出す」ことによって、「自分なりのアウトラインを作る」この繰り返しで、ぜひ自分のやり方を作り上げてみてください。そこまで含めてこそ「タスク・ライティング」なのです。
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2021/6/28rashita.icon
全体的な論旨は良いと思います。
構成的についての指摘
タイトルが「タスク・ライティング」になっているのですが、その説明が最後まで出てこないので、読み手が「今自分は何を読もうとしているのか、自分の目に入ってくる情報をどのように位置づけていいのか」がわからないままに読み進めることになります。
伏線的に回収したい意図があるなら別ですが、そうでないならば冒頭に「これからタスク・ライティングについて紹介します。タスク・ライティングとは〜〜に役立つ手法です。これからその導入のための手順を1〜6に分けて解説していきます」(文章は適当です)みたいな段落を入れておくと、ぐっと読みやすくなると思います。
副線的に回収したい意図がある場合でも、これからどんな話がここで展開されるのかは早い段階で提示しておくのがよいと思います。全体がそれなりに長い文章の場合は特にそうです。
1. 「本稿ではこういう話をする」を冒頭に置く
2. 身近な具体例を置いて、それを解決するためにこういう方法があるのではないかと私は考えています、のような文章(文章は適当です)を置く
のような(実際は何でもいいのですが)、ワンクッションを冒頭においておくと良さそうです。
あと、全体的に一つの文章が長い傾向があります。短く区切るように書き換えると、読みやすさが向上し、それと共に「自分がこの文で何をいいたいのか」がよりはっきりすると思います。
たとえば
あと、全体的に一つの文章が長い傾向があってそれが読みにくさにつながっているので、できれば一文を短くしていくと読みやすくなりますし、自分が何を書こうとしているのかがはっきりします。
みたいなのが「長い文章」ということです。
以下それぞれのsectioncごと
===1 頭の中と外で行き来しやすい形にする
頭のなか
頭の中、と別表記の部分があります。
一つ目の段落と二つ目の段落の接続がよろしくないように感じます。
たとえば、一つ目の段落の最後に「しまうことがあります。」とあるので、「そんなときには、日を改めて考えてみるのがよいかもしれません」みたいなものがあると接続がよくなりそうです(文章は適当です)。
ようは一つ目の段落で示される状況と、二つ目の段落の説明がうまくつながっていない印象を受けた、ということです。
===2 Atomicなものとして書き出す
文字、テキスト、文章として書き出すときはAtomicに書き出すようにします
sec01の話を継いでいると思うのですが、その感触があまりありませんでした(結構突然出てきた感じがします)。
おそらく、sec01では「文字または文章にしてみることは」となっていて、sec2で「文字、テキスト、文章として書き出す」となっているからでしょう(表記が違っている)。表記を揃えるか、あるいは何かターム(用語)を仮に設定して統一的な表記ができるようにすると、sec01→sec02のつながりがスムーズだと思います。
Evergreen notesの原理
文の途中で急に出てくるので、これを知らない人はびっくりすると思います。
「Evergreen notes」を知っている人しか読まない文章である、という前提を置かれているならば構いませんが、そうでない場合は少し工夫が必要かと思います。
一番簡単なのは、「hogehogeさんが提唱されたEvergreen notesというノート術で用いられている」(文章は適当)のように文の中で解説を入れることです。
あるいは注を入れてもよいでしょう。
他にも先に「原始的」の意味を説明した後で、「この考え方は、hogehogeさんのEvergreen notesにでてくるhogeを参照したものです」と付け加える方法もあります。
それはタスクの分解とはちょっと異なったものになります。
ここも「タスクの分解」が一般用語のように扱われています。
まあ、マニアックな人たちが読むであろう雑誌なので構わないと言えば構わないですが、たぶんそんなに一般的な用語ではありません。
どうでしょうか、分解には、足して元の形にもどるという制約が盛り込まれてしまいます。しかし、Atomicなものは「面倒くさい」「気になっていた」「ごほうび」などの要素がでています。
前の文では「足して元の形に戻る」が言及されていますが、対比される後ろの文では、「足して元の形に戻る」になっているのかどうかが言及されていません。「しかし」で文をつなぐ場合は、この対比がないと若干不自然です。
最後のほうではケーキ屋さんに行くついでに、床屋・美容院に行っているようなところさえあります。「急がば回れ」と言ったところでしょう。
これはよくわかるのですが、この説明が「atomic」とどう関係あるのかが見えてきません。このsecはatomicについて解説していると思うので、こうした記述がどうatomicであるのか、という説明があった方がよいと思います。
===03 自分なりのアウトラインを作る
Atomicに書き出したものをどのように扱うか、文字情報を扱っていることを生かしてアウトラインとして操作することができます。
「、」が「。」なのか、あるいは「Atomicに書き出したものをどのように扱うかというと」くらいがよさそうです。あるいは二文に切っても。
アウトラインの基本的な操作としては、アウトラインプロセッシング入門を参照してみてください
→『アウトライン・プロセッシング入門』
書名なので二重鍵括弧。
Atomicなものとして書き出すに挙げた
先ほど挙げた、くらいでも大丈夫だと思います。
前者は、頭の外から中へのアウトラインにあたり、
ここから続く部分が若干わかりにくかったです。
===4 リストにあるタスクからの選択とリストにないタスクからの選択を並走させる
一つ目の段落と二つ目の段落の接続がスムーズには感じませんでした。
日々を過ごす中でやること(またはやらないこと)について使ってみるのはどうでしょうか
とあるので、その使い方の実際例が出てくるのかと予想するのですが、「ノートやリストを使ってみるときに気をつけたいのは」と続くのでちぐはぐな印象を受けます。
リストがあるからリストにないタスクをやっていても大丈夫なときが生まれてきたりします。
それはどういうときなのかの説明、あるいは具体例があるとわかりやすいと思います。
ハイブリッドのように選ぶようにします。
「ように」が連続しているのが少しだけ気になりました。
うってつけの本として「やるおわ」がありますので参考にしてみて下さい。
一応固有名詞が最初に出てくるときはフルネームがよろしかろうと思います。
『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』(以下「やるおわ」)くらいの感じで。
===5 既存のシステムと自分のやり方をシェイクする
これだけではまだ十分にGTDを学んだといい難い部分があります。
なぜそうなのかの説明があると良いかも。
===6 自分のやり方の崩れに気づく
これは文章表現ではなく、本稿の論旨に関する指摘(というか疑問)です。
このsecで書かれている「あるやり方をしていてもうまく実践できない状況が出てくる。そのときに元々のやり方に沿わせるのではなく、そうじゃないやり方を考える、ということが、まさに「方法のシェイク」なのではないでしょうか。つまり、sec05で語られる「既存のシステムと自分のやり方をシェイクする」の内容がこのsec06の前半部分で語られることなのではないかと思った次第です。
シェイクはトップダウンでスタートしながらも、ボトムアップの「結果を受けて」トップを変換してしまう試みだと言えると思いますが、タスク管理システムにおける「結果を受けて」は、実践の結果でしょうし、それはつまり「あるシステムをやっていて、それがうまくいかなくなる」という結果も含むでしょう。
逆に言えば、sec05で語られる「既存のシステムと自分のやり方をシェイクする」がどういう行為を意味しているのかが、sec05の段階では不明瞭な感じがします。
上記はあくまで倉下の解釈ですので、ぜんぜんスルーしていただいて大丈夫です。
===7 ここに書いたことでさえ
たいへん良い内容だと思います。
以上ですrashita.icon
玄武.iconありがとうございます。指摘がいい刺激になります。
仕事の忙しさで、なかなか時間を避けないもどかしさがありますが、じっくりと考えたくなりました。