洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割
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このお住まいは3層(地階・1階・2階)で、それぞれの階にトイレがあり、このトイレは1階の洗面室の中にあるトイレです。左右の引き戸は、リビングや寝室につながる、落ち着かないトイレなのですが、このトイレには、そのマイナス点を補う、大きなプラス点があるのです。
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たかがトイレ、されどトイレ。このお住まいのトイレについて、
住まいてさんとどのように考え、解決したのか、ご紹介します。
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地階には『便器の正面から、そのまままたがる』トイレがあります。
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車いすユーザーの住まいてが、便器へ安全に乗り移ることができ、
トイレでの動作にぴったりと合わせた、バリアフリーなトイレです。
メリットしかないようなこのトイレ、「隠れたデメリット」があり、
それはこの様なトイレは、まず外出先にはないということです。
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正面からまたがるトイレに慣れてしまうと、ユニバーサルトイレが、
使えなくなってしまうのではないか、と考え込んでしまいました。
つまり、泊りがけの旅行には、出かけられなくなるのです。
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住まいてさんと検討した結果、この洗面室の中に造るトイレは、
「ユニバーサルトイレ」のレイアウト同様にすることになりました。
普段は、快適な地階の「バリアフリーなトイレ」を使い、
体調のいい時や家族がいる時は、このトイレを使うようにする。
『両方の形式のトイレに慣れる』、ということになったのです。
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もし住まいてさんが、20代や30代と若い方だったのなら、
この様な選択には、ならなかったのかもしれません。
ですが、この住まいてさんのように、50代以降の方なのなら、
『トイレのためだけに、体力や腕力を使い切らない』という、
先を見据えた現実的な選択が、正しい様に思えたのでした。
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設計者の中には、
「バリアフリー住宅では、かえって体が弱くなる」
という自論を、お持ちの方がいらっしゃいます。
寝室を和室にして、布団での就寝を勧めたり、
寝室を2階につくり、階段での昇降はリハビリである、
と言うのです。しかし私は、それとは反対の立場をとります。
つまり、住まいは住まうひとに対して、
無条件にやさしくあるべきだと、考えているのです。
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日々の暮らしが、楽しいことばかりではない様に、
「体調や気持ち」もいい時もあれば、悪い時もあるでしょう。
そんな「今ひとつ」な時に、
『住まうひとを、いかに優しく包み込めるか』が、
住まいのもっとも大切な価値なのではと、考えているのです。
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日々の暮らしの全てに対して、全力で向かい合っていくことが、
はたして、「正解」なのでしょうか。
自分や家族の限られた時間、気力や体力に、上手に合わせながら、
日々そつなく暮らしていくことが、大切なことだと考えています。