『トイレを、居室としてしつらえなさい』
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私が自信を持っていた間取り図を、ある建築家に見てもらったことがありました。しばらくすると建築家から一言、『トイレを、居室としてしつらえなさい』。玄関や居間などに比べ、トイレはデザインの必要がない空間なのだと考えていたことを、読み取られてしまったのです。
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このお住まいのトイレは、寝室と洗面室の近くにつくりました。
右奥の洗面台の脇には、ユニットバスをつくりました。
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コンパクトにまとめた水回りですが、拡がりを得たいと考えました。
内装は「白・グレー・木目」の3色にまとめ、住まい全体を統一し、
廊下や廊下と繋がる寝室と、一体として感じられるようにしました。
床材が連続すると、さらにそのことが強調される様です。
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このトイレには2方向から入れます。開けっ放しにできるトイレです。
寝室に面する手前の引き戸は、2枚連動にして開口幅を広く確保し、
もう一方の片開きドアは、洗面室側に面して、浴室への近道です。
普段、開けっ放しにしても、リビング側から便器が見えない様に、
引き戸の収納壁に厚みを持たせ、造り付けの本棚にしました。
この位置の本棚は、トイレに入る前に1冊手にとるのに便利です。
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一般的なトイレはドアの正面が、便器になる配置が多いのですが、
この様に便器が横を向いている方が、便器に腰をかける時に、
体を90度回転させるだけで済むので、使いやすいトイレになります。
『横向きトイレ』と名付けて、車いすからでも使いやすいです。
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最近の便器の座面の高さは、420mm程が多くなりましたが、
便器に腰をかけた時に、膝が90度曲がる高さです。
ですが、膝が90度曲がってしまうと、便器から立ち上がる時には、
膝に負担がかかってしまい、立ち上がりにくくなってしまいます。
そこで便器の下に、便器の輪郭に合わせた樹脂製の台を入れました。
厚さは25mm、便器に座った時、かかとが少し浮く位の高さです。
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私はこのトイレでも、『トイレを、居室としてしつらえなさい』
という教えに、できるだけ近づこうとしてきました。
建築家からそう教わったのは、25年ほど前のことです。
それ以降、トイレを大切に考えるようにしています。
バリアフリーの観点でも、トイレに最後まで自分で行けることが、
とても、重要なことなのだと考えています。
「よい建物と悪い建物の見分け方」の話をしていいですか。
道路から見た外観や、玄関、リビングなど、ひとの目に付く部分を、
ていねいにデザインするのは当然のことです。
その建物が「よい建物」か見極めたかったら、廊下やトイレ、
階段に行き、その空間や細部を観察してみてください。
というも、廊下やトイレ、階段などの細部まで、
ていねいにデザインされている建物は、間違いなく、
建物全体も、ていねいにデザインされているからです。
このトイレの教えだけでなく、たくさんの方々から教わったことが、
私の設計の基礎となっているようです。