9926_前橋市役所の細長い窓から、前橋市街を眺める
「よい建物と悪い建物の見分け方」の話をしていいですか。道路から見た外観や、玄関、リビングなど、ひとの目に付く部分を、ていねいにデザインするのは当然のことです。その建物が「よい建物」か見極めたかったら、その建物の廊下やトイレ、階段に行き、その空間や細部を観察してみてください。
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「 窓は大きいほどいいのではない」とつぶやきながら、この細長い窓から前橋市街を眺めます。群馬県前橋市の前橋市役所です。仕事柄たくさんの市役所を訪問していますが、私の一番のお気に入りです、建もの探訪( 2017.09.02) hr.icon
というも、廊下やトイレ、階段などの細部まで、ていねいにデザインされている建物は、間違いなく、建物全体も、ていねいにデザインされているからです。
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久しぶりにこの細長い、水平連続窓から外の景色を眺めました。この窓のガラスの高さは、40cmしかありません。床から窓下枠までの高さは140cmなので、窓の中心までは160cm、私の目の高さと同じくらいです。
高さを最低限に抑えることが、景色をより一層美しく見せています。しかし、高さ40cmほどのこの窓の、長さは10m以上ありそうです。視線を右側を移動していくと、見えたのは群馬県庁です。
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私が眺めていたのはこの建物、前橋市役所からでした。左側のスリットのようにしか見えない窓からでした。
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窓ではなくスリットのように見せるために、この窓にはたくさんの工夫がありました。
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建物は出隅部に大きな力がかかるので、ほとんどの建物では柱が立っています。しかし、この建物は出隅部の柱がなく、ガラスの突き合わせになっていました。出隅部にあるべく柱を抜くために、建物全体に構造的な工夫があるはずです。
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窓周囲の窓枠にも工夫がありました。窓枠はぴったりと壁面に合わせてあり、さらに斜めに面取りがしてあります。壁と一体になるような塗装も施されています。この工夫によって窓枠の存在を消し、「外の風景」を引き立たせます。
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見える「線」が少ない、シンプルできれいな階段です。デザインだけでなく、階段を降りてくるときに、外の景色が見えるように配置されています。「訪問者がそこでどんな体験するか」も、デザインされています。
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窓の上には大きな壁が建物いっぱいに広がっています。この壁は耐震壁で、建物のデザインの高めるためだけでなく、構造的な役割も持ち、建物全体の柱を減らせたとのことでした。
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1階や2階のホールに光が差し込むように、ここでは縦にスリットがありました。
正確に言うなら「逆Tの字型」のスリットです。このスリットによって、大きな建物が、緑の上に浮いているようにも見えました。
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建物の中でも、住まいづくりが私の仕事の中心です。住まいと市役所とは、建物の性質が大きく異なりますが、何か、住まいづくりに活かせるアイディアが、あるのではないのか。建物を訪問した際に、こんな感じに「解読」していくのは私の性質のようです。