9820_注文の多い料理店・序(2)姥樫
姥樫(ウバッカシ)。「姥のような老樹」という意味から、そう呼ばれている巨木が、埼玉県ときがわ町にあります。和名はアカガシ(赤樫)。暖かい地方の山地に多い、ブナ科の常緑高木です。幹周りは、約6.6m。その幹が大きくねじれているのは、何百年もの間、斜面に立つ自身を支えるためなのでしょうか。
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ときがわ町は面積の約7割を山林が占め、古くから『木のくに』として、森や木々を大切に守り育ててきました。姥樫の周辺は、落石のおそれがあります。十分お気を付けください( 2017.12.17) hr.icon
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わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、
きれいにすきとおった風をたべ、
桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
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またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、
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いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、
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宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
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わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
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これらのわたくしのおはなしは、
みんな林や野はらや鉄道線路やらで、
虹や月あかりからもらってきたのです。
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ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、
十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、
もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。
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ほんとうにもう、
どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、
わたくしはそのとおり書いたまでです。
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ですから、これらのなかには、
あなたのためになるところもあるでしょうし、
ただそれっきりのところもあるでしょうが、
わたくしには、そのみわけがよくつきません。
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なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、
そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
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けれども、わたくしは、
これらのちいさなものがたりの幾(いく)きれかが、
おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、
どんなにねがうかわかりません。
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