9676_コンビニで学んだことを、住まいづくりの仕事につなげていくこと
高校3年生となった頃、私は無性に働きたかったし、また働かざるを得ない状況となってしまいました。ただ家から近いからとの理由で、コンビニでのアルバイトを始めたのですが、このコンビニ店長から、たくさんの事を学ぶことができたのでした。アルバイトは、工業高校を卒業し設計事務所に通い始めるまで続きましたが、その時の私は、それから3年も経たない内に、自ら設計事務所を開設することになるとは、思っていませんでした。いえ、この店長から学べたからこそ、私は設計事務所を、開設できたのかもしれません。
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このコンビニは、私の家から歩いてすぐの所にあります。この地域にお住まいの方だけでなく、道ゆく人たちや河原の運動場の来た人たちも支えています。このコンビニで私が一番助かったことは、「コイン電池」でした。車のリモコンキーの電池が切れ、エンジンがかからなくなった時、慌てて出向くと、そんな「コイン電池」でさえ、当たり前のように棚にあるのでした( 2018.05.16) hr.icon
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まず最初に、挨拶の仕方を教わりました。朝だけでなく、夕方だとしても、挨拶はいつでも、『おはようございます』なのです。また、『手はお客さまに見えるように、前に置きなさい』と、「手の場所」も教わりました。「いつでも、なんなりとお申し付けください」の姿勢です。『商い』は、いつでも、お客さんのために待機していることが、大切なことだと教わりました。
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父以外の人が働いているということを、目の当たりにしたのは、思えば、このコンビニの店長が初めてでした。いつでも『お待ちしていました』と、レジでお客さんを迎える店長も、一方、お客さんの目の届かない机に戻ると、目を閉じているのでした。
ずっと、こんな仕事を続けてきているのだと、レジに立つ私は思いました。私は、父の『大工』という仕事は大変な仕事だと思い、尊敬していました。同様に、『コンビニの仕事』も、大変な仕事だと思い、尊敬したのでした。
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父の『大工』という仕事、一方、店長の『コンビニの仕事』。父の仕事は『家を建てる』という、後にも残る「見えやすい」仕事です。対して店長の、『コンビニの仕事』は『何』をつくっているのだろう... 。
高校3年生の素朴な疑問の答えは、今となっては『自明』なものです。それは、私たち家族の毎日の暮らしの『安心感』です。『今、必要なもの』が、歩いて数分のこのコンビニには必ずあるのだ、という安心感は、我が家だけでなく地域の方、みな同様に持っているはず。
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大きな声で主張したり、他者を批判したり、問い詰めたりした方が、今は、大勢の人から注目されるようですね。
一方、「いつでも当たり前のように、静かにそこにある」ということ、私たちの日々の暮らしに欠かせない、そんな『安心感』は、とても、気づきにくいものになってしまいました。
ですが、父の大工という仕事を引き継いた、私の住まいづくりの仕事、日々の暮らしに欠かせない、『安心感』を提供してくれるコンビニの仕事。その源流を遡っていくと、同じ源へと繋がっているようでした。
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さて、話は変わり、高校時代の話から先週末の話へと、時間を進めます。新規に仕事を依頼されると、まずは、住まいてさんのお宅を訪問します。
まだ、正式に依頼をされた訳ではなく、この先、仕事は進展するのか、流れてしまうのか見通せません。そんな初回の打ち合わせの後には、私は必ず、最寄りのコンビニに立ち寄ることにしているのです。
初めてのコンビニで、お菓子やドリンクを買い、車に戻ってきた時に、「また、このコンビニに来れますように」と、心の中で呟くのです。
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