9665_階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』 (copy)
階段の1段1段の高さを、「蹴上げ(けあげ)」といい、20cm程の高さが一般的です。意識をしなくて済む高さなのかもしれませんが、ある時には、目の前を立ちふさぐ、『壁』にように感じることもあるかもしれません。そんな時は、「たかが、『段』の付いた廊下なのだ」と、思うようにしたいのですが、なかなか、そう簡単には割り切れないのです。
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小学生の頃に私が住んでいた家は、平屋でしたので階段はありませんでしたが、従兄弟が引っ越した新居は、2階建ての戸建て住宅で、玄関の前に階段がありました。
従兄弟の家に行くと、なぜか私は階段に惹きつけられました。みんなが公園へと遊びに行く中、私だけが階段に座り込み、ひとり本を読むことに没頭し、さながら、図書室となりました。
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なぜ階段に惹きつけらるのか、小学生の私には、単に座りやすいとか、見通しがいいといった、物理的なことに過ぎなかったと思います。
ですが、私も中学生入学前に、2階建ての家に引っ越すことになり、中学生から高校生へと成長していく過程で、「本を読む」ようなことがなくなり階段との関わり方が、変わっていったようでした。
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2階建ての戸建て住宅なら、1階には「家族が集うリビング」があり、2階には「自分の個室」がある、空間構成になっています。当時の私の住まいも、そうでした。
家族が集う、1階の茶の間から離れ、自分と向かい合うために階段を登る。一人思想することに疲れた時、2階の個室から家族のいる茶の間へ下りる。当時の私に必要だった、ふたつの居場所を行き来する『道』でした。
なぜ階段に思いを寄せるのか、最近になりわかったことはこんなことです。
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実はオオタキラジオに、階段のことを書こうと思い、 書き始めてみたら、1週間もかかりました。思うことがたくさんあったからです。最後に、もう一つ付け加えておきましょう。
階段には『段』があり、急ぐことはできません。一段一段、足元をよく見なくては昇れません。
なので、私が造る階段は、家族ひとりひとりの、足元を明るく照らしてくれるような、優しい階段にしたいのです。