9630_「私も障害を持っている」と気づくこと
「心のバリアフリー」を理解しようとする私は、自分自身を「障害者ではなく健常者」の側にあると、考えていることに気づきました。私自身はほんとうに「健常者」なのでしょうか。ユニバーサルデザイン の提唱者である、ロナルド・メイス。メイスが亡くなる直前の最後のスピーチに、その答えが見つかりました。「ユニバーサルデザインの展望」と題されたスピーチで、「ユニバーサルデザイン」について定義する場面です。
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2018年の夏休み旅行は、長野県の野尻湖を訪ねました。早朝、野尻湖の湖畔を散策しました。今回の旅行で、常に頭から離れなかったのは、「心のバリアフリー」ってなんだろうということでした( 2018.08.28) hr.icon
ユニバーサルデザインは、広くユーザーを定義します。
特に障害を持つ人々ではなく、すべての人々に焦点を当てています。
「誰もが障害を持っている」という考えを前提としています。
私たちは、それを認めたいかどうかに関わらず、
年齢を重ねて能力を失うにつれて、
私たちは皆、障害を持つようになります。
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一般的に、「障害者」と「健常者」という言葉は、対比する様に使われています。いわば、この世間の常識を、「障害を持っている人」と、それ以外の人を分けようとする、世間の常識を、メイスは打ち破りたかったのではないでしょうか。
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なぜならば、年齢を重ねて能力を失うにつれて、私たちは皆、障害を持つようになるからだというのです。
50代となった、私自身で考えてみましょう。
日々現場に通っていると、以前より疲れやすくなりました。何よりも困るのは、スケールの1mmの目盛りが読めないことです。今までメガネを掛けなかった私は、老眼鏡が手放せなくなりました。老視です。いわば「視力に障害」ができたのです。
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「私自身は健常者なのだろうか」という自問に対しての答えは、私もまた、「障害を持っている人」だということなのですね。
ですが、老視という「視力障害」を持つ身となりましたが、「メガネ」により、今までと同じ様に私は生活することが可能です。
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「メガネ」。私はメガネから、「車いす」を連想しました。「メガネ」が、老視という視力障害を補ってくれる様に、「車いす」が、下肢の機能障害を補ってくれる。なるほど「メガネ」は、車いすユーザーにとっての、「車いす」と同じなのかもしれないと。
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「メガネ」を必要とする人を「障害者」とは、あまり言わないのに、「車いす」を必要とする人を「障害者」と、言うのでしょうか。
それは下肢の機能障害を持つ人は、「車いす」を利用するだけでは、まだ、自由に移動できないからではないでしょうか。建物や歩道、交通機関など、段差を始めとした様々な「バリア」が、その人の周りに、まだまだ残っているからです。
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「障害者」と「健常者」とを分かつもの、つまり、私はこう考えました。
「障害」の定義は、その人にあるのではなく、
その人の周りの環境によって、決定されるものでしかない。
そして、それは『変えられる』ものである。
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だとすると、私の生業である「住まいづくり」によって、視力障害を持つ人を、「メガネ」が障害者と言わせない様に、下肢障害を持ち車いすを必要とする人を、「住まいづくり」によって、「障害者と言わせない様にできる」と、私は信じています。
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「住まいづくり」の仕事では、私は「障害の有無」に関わらず、いつも誰でも、ひとりの住まいてさんとして、お迎えしています。それ以下でも、それ以上でもありません。私はこの態度を、私にとっての、「心のバリアフリー」だと考えています。
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けれども、優しさを持ちたいです。すべての人が「障害を持っている人」なのだということが根底にある、「ユニバーサルデザイン」の様な、メイスの様な優しさをです。
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