9499_家でしかできないことってなんだろう(2018年度版)
『みなさん、家でしかできないことって何だと思います?』1987年4月22日。場所は新潟県民会館の大ホール。壇上から住宅作家・宮脇檀(まゆみ)は、私たちにこんな質問を投げかけました。その4ヶ月前に、設計事務所を開設したばかりの、21才の私は考えます。寝るためなら、ホテルでもできる。食べるためなら、レストランがある。物をしまうためなら、倉庫がある... 。ひとつひとつ考えていくと、家でしかできないことって、あるのかな...?
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それはですね!
家族が、デレデレすることですよ!
大ホールの客席の私たちは、「なんだ」と笑いだします。
みなさん笑いますけど、だって、道路の脇で、どこかの家族が、
デレデレってしてたら、気持ち悪いでしょ!
大ホールの客席が、さらに大きくわきました。
ですが、私は真剣でした。
自宅でのお茶の間の光景を、幼い頃まで遡(さかのぼ)って、
思い返していたからです。例の「走馬灯」の様にです。
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動物は明らかに子供のために巣をつくるという。
人間はそれ程単純ではないから、
見栄や財産保持のためにも家をつくる。
けれど家というのが何のためにあるのか考えてみれば、
疑いも無く、基本的には家族が家族らしく
デレデレし合う場所としての、最終的な意味を持つ。
それ以外の大部分の行為は、家以外の場所で可能である。
宮脇檀建築研究室『宮脇檀の住宅設計ノウハウ』丸善 1987
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その後の私の姿勢に、大きな示唆を与えてくれた、宮脇檀の講演会。
この講演会から、24年後の2011年に、時間を進めてみましょうか。
私は家庭を持ち、幼稚園に通う娘と家内の3人で暮らしていました。
2011年3月16日、第2グループの我が家は、18時20分からの停電です。
まるで、我が家だけ取り残されたような、
ろうそくを灯しての夕食となりました。
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東日本大震災から数日後、関東地方では一日に3時間ほど、
計画的に停電させることになりました。この「計画停電」は、
関東地方を5グループに分け、計画的に順番に停電させていくものでした。
ろうそくの灯の中、私は「住まいの役割」をひとつ、再発見しました。
『「安らぎ」という、日常生活そのものを共有できること』
何十枚も設計図を書き進める中で、私がチェックしていたのは、
なによりも、この「安らぎ」なのでした。
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私は住まいを「船」に、たとえるのが好きです。
その理由は、住まいも船も、そこに乗り合わせた人たちは、
運命共同体なのだと思うからです。
例えば、家族ひとりだけが、幸せだったり、
悲しかったりするのではなくて、
それらは、家族全員で共有するものだと思うのです。
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すみません。時間切れです。
大晦日なのですが、これから打ち合わせに向かいます。
2019年も、住まいについて考えていきます。
みなさま、本年はありがとうございました。
来年も、オオタキラジオにお付き合いください。
よい、お年を!