9483_注文の多い料理店・序(8)2019年の桜
小さな神社へと続く農道の脇の桜。ここを通る様になって何年も経つのに、この2本の老木が、桜なのだと気にしたことはなく、満開の桜の姿を前にして、初めてそのことに気づきました。どんな情報でも、すぐに知ることができる時代でも、自分の目と足で見つけた時の嬉しさ。私はこの年齢になり、だんだん桜が好きになりました。
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『イギリス風の身なりで、猟銃を構えた2人の青年紳士が、山奥に狩猟にやってきたが、獲物を一つも得られない。迷った先で一軒のレストラン「山猫軒」を見つけ、入っていくと... 』。この『注文の多い料理店』の『序』で賢治は、創作姿勢と生き方について言及しているのです( 2019.04.06) hr.icon
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わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、
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きれいにすきとおった風をたべ、
桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
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またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、
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いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、
宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
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わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
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これらのわたくしのおはなしは、
みんな林や野はらや鉄道線路やらで、
虹や月あかりからもらってきたのです。
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ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、
十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、
もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。
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ほんとうにもう、
どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、
わたくしはそのとおり書いたまでです。
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ですから、これらのなかには、
あなたのためになるところもあるでしょうし、
ただそれっきりのところもあるでしょうが、
わたくしには、そのみわけがよくつきません。
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なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、
そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
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けれども、わたくしは、
これらのちいさなものがたりの幾(いく)きれかが、
おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、
どんなにねがうかわかりません。
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