9395_51年の間、お疲れさまでした、関東唯一の屋上観覧車(丸広川越店)
関東唯一の屋上観覧車のある、丸広百貨店川越店の屋上遊園地が今夏で閉園すると知り、最終日となる日曜日、嫌がる娘と一緒に出かけました。老若男女、たくさんの人たちで賑やかな屋上遊園地「わんぱくランド」、みなさん別れを惜しむというよりは、この最後の日を、この最良の日を、楽しみながら心に刻んでいる様でした。
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私は3年間、丸広川越店の店内を南北に通り抜けるように、近くの高校に通学していました。ことあることに寄り道していた屋上の、観覧車の勇姿を、ぜひとも見ておきたかったのです。
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私たちが到着したのは15時前は、すでにどの遊具のチケットも販売を終了してしまい、何にも乗ることができなかったのですが、そのことを残念に思うのでなく、とても嬉しく感じたのはなぜだろう。
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それはきっと、屋上遊園地「わんぱくランド」の最後の日を、この最良の日を、この先もずっと、私の思い出とすることができるからだと思うのです。
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その思うのは私だけでなく、老若男女、どの人もその様に感じていたのでしょう。みなさんの楽しさが私まで伝わってきます。楽しさは伝染する様です。「ambiance(アンビアンス)」とは、こういうものなのでしょう。
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アンビアンス。われわれ建築家は、いわゆる〈まち〉の雰囲気をあらわすのに、よくこの表現を使う。
アンビアンスは、人びとがある一定の領域の中に、おたがいに類似した情熱をもち合った時に発生する。
槇 文彦 『記憶の形象―都市と建築との間で』筑摩書房 1992
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屋上の北側のフェンスに顔を寄せると、懐かしい景色がありました。駐車場の手前の建物の地下のレンタルスタジオで、バンドの練習をしたこと。駐車場の奥の建物こそ、私が3年間通った川越工業高校です。
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高校時代の頃は、その頃なりの期待や不安があったように思います。その多くは思い出せませんが、父が現場で大きな事故に遭い、進学を諦めたときも、私はこのベンチに座っていました。
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私の時代の川越工業高校は男子校で、近くには女子校もありましたが、このベンチに「誰か」と座ってみたいとの願いがあったのですが、その願いは叶うことはありませんでした。
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36年後の自分が娘を連れて訪れること、何よりもあまり関心のなかった建築の仕事を、高校卒業と同時に始め、今になっても続けているなどとは、高校時代の私には想像できませんでした。
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ですが一方、36年経っても、ヒトっていうのは変わらないものだなとも思うのでした。
そんな感傷を娘に伝えるすべもなく、丸広川越店を後にして、本屋さん、甘いものがおいしい店に向いました。
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